第百八十六話 チョコラの決断
ジュグレさんの話を受け入れたキッカが出した要望はこうだ。
「私に店を一軒任せてください。成功させるか潰してしまうか、常に極限の緊張の中に居たいのです。それが無理なら露店の屋台でも良いです。時間をかけて教えてもらうより私にはその方が早く結果を示めせます」
突拍子もない願いにジュグレさんは大笑いをしだした。
「さすが、チョコラ殿の秘蔵っ子ですね」
「なんで俺が出てくるの」
「悪い意味では無いですよ。ただ、神獣様が集まっているだけでも凄いのに集う人も凄いなって関心をしたのです。良いでしょう。お店は無理ですが屋台を任せましょう。屋台を1軒の店にまで出来たら卒業としましょう。それで良いですね」
「はい。ありがとうござます」
「ジュグレさん良いんですか?」
「構いません。むしろ私も考えていたことです。屋台を訪れる客層は子供からご老人とさまざまです。得意な客層など作れません。また屋台ではお客様の反応や評判はすぐにはね返ってきます。いかに大衆の心を引き付けるのか答えはありません。ですから絶えずその時その時の知恵と工夫が必要になってきます」
「そうなんですか」
「チョコラ殿も初めはタージの店の軒先を借りて始めたのでは有りませんか?」
確かにそうだけど、俺の時はミハルさんが勝手に仕事を受けて言われるがままにしただけだったから何とも言い難いけど確かにジュグレさんの言う通りかも知れないと思った。
「わかりました。よろしくお願います」
「はい。ただし、屋台で扱う商品ですがこちらで指定をしても良いですか」
「はい。構いません」
「では、チョコラ殿の店で売っている古物。リサイクル品をキッカちゃんが仕入れて売るので」
「えっ、それで良いんですか?」
「良いのではなく、こちらからの指定です。それしか扱えないと言うことです。リサイクル品は食べ物を扱うより難しいですよ。わかりますか?」
「はい。お店に来る人は目的を持ってきますが屋台では目的を持っていない人も来ますから」
「そうです。冷やかしで立ち寄る人にも買ってもらえるように仕向ける。これが難しいのです」
「あの……ジュグレさん」
「何でしょうかチョコラ殿」
「それって俺が考えていたことですよね」
「そうですよ。チョコラ殿からお話を伺った時から考えていました。将来キッカちゃんに店を任せて独立させる。時期を早めたと考えてください」
ジュグレさんは俺の計画までも考慮に入れていてくれた。でもこれはジュグレさんに頼んだことでは無い。キッカの独立が早くなったと思えということなら当然その資金は俺が出すべきだ。
そうでなければ俺の計画は俺のものでは無くなりジュグレさんのものになってしまう。
だから俺も決めた。
「ありがとうございます。でしたら初めのお金は俺が出します。これは俺が決めてたことなのでここだけはジュグレさんに頼りたくは無いです」
「ははは…… そう言うと思っていました。良いですよ」
「ありがとうござます」
「では、準備が出来しだい屋台は出しますが、その前に出店する場所選びに使用許可とやることがあります。こちらも実際に経験をしてもらいますので遊んでは居られませんよ」
こうして思いもしないキッカの独立に向けたプロジェクトが始まったのだった。




