第百八十五話 二人の面談
翌日、キッカを連れてジュグレさんを訪ねた。来る途中もまだ納得がいかないという顔をしていたが、最終的に自分が受け入れたからなのだろうか何も言わず付いては来ていた。
「ようこそキッカちゃん。久しぶりですね」
「お久しぶりです。今回は私のためにありがとうございます」
「いえいえ、将来性が有る若い人を育てるのも大人の仕事です。それにチョコラ殿のお役に立てられるのなら尚更です。これで少しは借りを返せると言うものです」
「えっ? 俺何かジュグレさんに貸してましたか?」
「チョコラ殿は気にしなくても良いですよ。こちらの事ですから」
なんか腑に落ちないけど今日はキッカの話だから深く聞くのはやめておこう。
「ところでキッカちゃん、顔が少し怖いですよ」
「当然です。今回の話は店長から業務命令として来ただけです。こちらに移る気はありませんから最初に言っておきます」
「ははは…… 自分の気持ちをはっきり言えるのは良いことです。ではこちらからの条件を言いましょう」
「お聞きします。私からも要望はありますので後で聞いてもらいます」
あぁ~ なんか雰囲気が悪いな……
「私がチョコラ殿に頼まれたのはキッカちゃんのスキルアップです。それには同じスキルを持った先輩に指導を受けるのが早道です」
「はい。それは店長からも聞きました」
「そこで、キッカちゃんに私が認めるまでここで修業をしてもらいます。早く戻りたければ早く私に認めさせれば良いだけの話です」
「わかりました。一日も早く認めさせれば良いのですね」
「そうです。ただそれだけです。だが、いくら商人のスキルが有るからと言ってそれに胡坐をかいていてはスキルアップは出来ません。それは肝に銘じてください」
「わかっています。あなたに認めさせるのですから気を抜くわけにいきませんから」
「その意気でお願いします。期待していますよ。それとチョコラ殿の為にという気持ちが少しでも有るのならそれを今は捨ててください。邪魔になります」
「どうしてですか! 私は店長の為にも早く一人前にならないといけないんです」
「キッカ。俺もジュグレさんの意見に賛成だよ。誰かのためにという思いはどこかで重荷になるから。それだけは止めて欲しい」
「チョコラ殿言う通りです。それに誰かの為という思いでは私の指導に付いては来れなくなります。そうなるとそれだけ私から卒業するのが遅くなると言うことです」
「わかりました。今だけで良いんですよね」
「はい。すべてを身に着けてた後ならその能力を誰のために使おうとそれはキッカちゃんの自由です。そこまで制限する権利は私にはありませんしね。それでは待遇面の話をしましょう。私の下で修業をするといってもキッカちゃんはチョコラ殿の店の従業員です。これは変わりません。ですから私のもとには13時に来てください。
「13時? 朝からじゃないんですか?」
「朝は好きに使いなさい。お店を手伝いもよし、私のもとに早く来るもよし自由です」
「わかりました。13時来ます。午前中はお店の仕事をしてきます」
「そう言うと思ってましたよ。それから休日はいつにしましょうかね……」
「あなたと同じ日で良いです。別に休みが欲しいわけじゃありません。一日も早く認めさせるためなら休みなんか無くても良いんです」
「元気が良いのは結構だけど、自分の身体を労われないのは良いとは言えませんね。まあ、それはおいおい学んでもらいましょう」
「そちらからのお話は以上でしょうか?」
「そうだね。給金の事はチョコラ殿と相談してから決めるから後から伝えることにして、そう言えばキッカちゃんからも要望があると言っていましたね。それを聞かせてください」
そしてキッカの口から出た言葉に俺は絶句する羽目になった。




