第十八話 犬を拾いました
うまいっ亭の庭先でクリーニング屋を初めて一月が経ち、お客さんの列も落ち着き始めた。
特に冒険者の方が少なくなった代わりに、鎧と得物の手入れをして欲しいと週一で持ってくることが増え、常連さん化してきた感じになっていた。
それに相変わらず「代金は銅貨5枚だ」と毎日っていう位に言っているのにみんな銀貨を適当に置いていくからホトホト困っている。
タージさんは「それだけの価値があるから置いていくんだ。貰っとけ」と笑っているし、ミハルさんは「この調子だとお店も早く持てそうね」と楽しそうだ。おまけにミリアさんは「そうなると夜のお願が出来なくなるわね」としみじみと言われ、さらに「来月には夜も入って完全復帰できそうだからもう少しだけお店の開店は我慢してね」って、俺は何も我慢なんてしてないんだけど…… もう少ししかお店のお手伝いが出来ないのか思うと少し寂しい感じがした。
今日も仕事を頑張るかと家から出たとたん何かに躓いてこけてしまった。良く見ると銀色した尻尾のようなものだった。
視線を左に向けるとそこには大きな犬が寝ていた? ってか、所々が赤く染まっていたので怪我でココに倒れていたようだ。急いで部屋に戻ると濡れタオルと傷用ポーションを持ってきた。人間用だから犬に効くが分からないけど無いよりマシかな。
濡れタオルで赤く染まったところを丁寧に拭いていくけど、毛が多くてどこを怪我しているのかが分かり難く、一番濃く染まっていた辺りにポーションをたらして行った。
赤く染まったところが何か所かあったけど、一つ一つ丁寧に手当てをしていたら犬が目覚めたようで起き上がろうとした。俺は頭を撫でながら「ココでは邪魔になるから、うちの中で休んで居ていいよ」と家の中に連れ込んで、水と昨日の残りご飯を出したらなんとか食べたので安心し、夜には戻って来るからと改めてうまいっ亭に向かった。
「あら、今日は遅かったのね」とミハルさんに言われたので。今あった事を説明し、夜ごはんに何か持ち帰れるのを作って欲しいと頼んでおいた。
この日は今朝の犬の事が気になり、何処か心ここに在らずって感じだったけど、夜の営業までには終わらすことが出来て、うまいっ亭を手伝っていた。
そろそろお店も終わりって頃にタージさんが「今日は上がっていいぞ。これ犬に持って行ってやれ」と朝に頼んだのとは別に肉を持たせてくれた。
急いで家に帰ると犬はまだ寝ていた。何か所も怪我をしていたら体力も落ちていたんだろうと起こさないようにエサの準備をしていたら何やら声が聞こえて来た。