第百七十話 チョコラ嵌められる
「おぉ~ チョコ坊。元気そうで何より。待っておったぞ」
村長は俺を見つけると獲物を追い込んだ猟師のような目で逃がす者かと言わんばかりに肩を掴まれた。
「早速だが今年の分のリストだ。順番は任せるからよろしく頼む」
渡されたリストには約束通り15軒が書かれていた。上から一軒一軒見て行くと俺の実家から近い順に書かれていた事に気が付いた。これも村長の心使いからも知れないと思った。
「ところでチョコ坊よ。お前さんも聞いていたと思うが王家の別荘が完成してな、近々お披露目の会が開かれることになっておる。ワシだけでなく村中の者が招待されておる、もちろんお前さんも村民じゃから出てもらうからそのつもりでいてくれよ。まぁ、ワシが言わんでも王家の友人様じゃから既に招待されているじゃろうけどな。ハハハ……」
そんな話は聞いてない。もし聞いていたら時期をずらして来ていたさ。
もしかして……
「村長、まさかそれに合わせて俺に早く来いと急かしたんじゃないでしょうね?」
「さぁ~て、どうじゃったかな??」
何がどうじゃったかなだ。惚けやがって! どうせクラムの差し金だろうが
「まぁ、ワシは陛下にチョコ坊が来る日が決まったら知らせるように言われてただけじゃよ」
やっぱりか!
「陛下の命じゃからな、断れんじゃろ。諦めろ」
……もうため息すら出ないよ。とにかくリストに上がっている家のクリーニングは終わらせないと帰れないからさっさと済ませて逃げるしかないな。
「そうそう。言い忘れておったわ。お披露目が終わるまでチョコ坊は村から出られんからのう。勘弁してくれよ。これ領主様でもある陛下の命令じゃからな」
おのれぇクラムめ…… 王太子の時から人をオモチャのように扱いやがってたが国のトップになっても俺で遊ぶつもりか! まったく!!
「そんじゃワシはこれで帰るとするわい」
言いたいことは言い終わったとばかりに村長は帰って行った。
クラムからの包囲網は既に出来上がっていて逃げられないと悟った俺は翌日から仕事を始める事にした。
今回もレーちゃんが羽をくれたが極力手作業で行う事にしている。このところアントンに任せているのでほとんどスキルを発動していないのもあり、鈍ってはいないと思うけど確認もしたかったからだ。
まずは屋根からだな。屋根の上で空間収納から桶を出し、そこに石鹸水を作りデッキで磨きあがて行く。最後は水で流し屋根は終了。
ただ、作業をしていてどことなく違和感があったがまだこの時は気が付かなかった。
屋根が終わり外壁も同じように石鹸水で磨いていく。外が終われば家の中だ。ここでも丁寧に作業を進め短時間で終える事が出来た。
?? 短時間??
一つ一つの作業をゆっくり丁寧にして行ったつもりだが終了時刻を見たら去年とは作業時間が大幅に短くなっていた事実に違和感の正体がこれだったのかと気が付いた。
アントンに指導をしたことによって自然と俺自身もレベルアップしたのだろうとそう感じ取っていた。




