第十七話 悩むチョコラ
そうか。進化の方向性。能力の使い方か……
神父さんは平和のために。人の役に立つように自分の能力を使いなさいと教えてくれたんだと思った。
俺の能力は再生と創造。新しい物を造ったり、直したりする能力って事だよな。クリーニングは再生の能力だって事は理解したけど、創造の能力ってどうやって使えば良いんだろう?
そう言えば創造とは新しい発想だって神父さんが言ってたよね……
「神父さま、創造の発想って新しい物じゃないとダメなんですか?」
「新しい発想とは何だと思いますか?」
「えっ? ……今まで誰も思いつかなかった発想? ですか?」
「少し違いますね。『誰も』ではなく、『自分自身が』です。今まで自分が思い付かなかった事。既に誰かが思いついていても良いのです。人の進化とは自分自身の進化なのです。先ほども言いましたが、発想の方向性です。同じ発想でも方向性が違えばそれは別物なのです」
「でも、それは応用とか言いませんか?」
「そうですね。そう思われる方がほとんどでしょう。しかし、応用とは知っている知識を本来の使い方でなく、別の形で使う事を応用と言うのです。知らない知識は応用どころかその発想すら浮かびませんよ。だから新しい発想が浮かぶと言う事はそれこそが自分自身の進化になるのです」
「……難しいです」
「そうですね。難しいですね。では簡単に言いましょう。何も考えずに今思った事や感じた事をそのまま表現するだけです。どんな些細な事でも。新しい発想でなくても。誰かから授かった知識でも何でも良いのです。思った事を表現する。これを繰り返している内に今の話も理解できるでしょう」
「わかりました。難しく考えないようにします」
「そうですね。それが良いですよ。ところで、教会の再生はいつしてもらえますか?」
「えぇ~~~~~~」
「フフフ…… 冗談ですよ……」
まずは孤児院からという事で神父さんを説得したけど、なぜか神父さんは笑ったままだった。
揶揄われたのかな? でも教会の掃除もする予定だったので別に構わなかった。
今日はうまいっ亭には行かないので夕飯は自分で作るか、どこかで外食するしかない。
クリーニングの仕事を始めてから余分に代金をくれるお客さんが多いから思った以上に収入も有り、貯金も出来るようになっていた。だけど、いつまでも庭先を借りるわけにいかないのでもっと貯金をしてお店が出せるように倹約をしなければと思い直し、食材を買って家で作ることに決め市場に向かった。