第百六十五話 チョコラ、店から追い出される
キッカをメインに店番を任せている事から俺となかなか話が出来なくて寂しいと言う声が初めは有ったが最近は孫のように3人を可愛がってくれるお客が増えて来て、これならしばらく店を開けても大丈夫じゃないかと思えて来た。と言うのもキャサル村から催促の手紙が来ているのだ。
俺の自出であるキャサル村の村長と一年に一度、村の修復作業をする約束をしていたが3人の教育を優先していたせいで今年はまだ行っていないのだ。と言ってもほんの2か月遅くなっているだけだが村長から早くしてくれと催促の手紙が届いているのだ。
キャサル村に行くと最低でも半月は留守にすることになる。3人の仕事振りを見ていても心配する事は無いように見える。と言うか、俺が居なくても回していくだろう。それだけ3人の成長が早かった。
だけど心のどこかで不安なのだ。
「店長、このところ暗いですよ。そんなので店先に出られたらお客も逃げますよ」
「そうですよ。何か心配事でもあるのですか?」
「俺たちが原因ですか?」
「あっ、いや…… そんなことないよ」
どうやら3人に心配を掛けさせたようだ。
ついでと言っては何だがちょうど3人も揃っているから村の話をすることにした。
「そんな事で悩んで居たんですか! さっさと行って来て下さい!!」
このところ俺がキッカに怒られることが多いような気がしている。商人のスキルがメキメキと伸びている証拠なのだろうが、傍から見るとどちらが店主か分からないだろう……
「そうですよ。仕事上の約束が大事だと言っていたのは店長です」
「俺も最近店長の手直しが無くても良いようになってきました」
「と言う事ですから、安心して行って来てください」
「いや… だけど……」
「言い訳は聞きません。これは、お・し・ご・と。ですから」
「……はい」
「ブハハハハ…… しっかり育ってるじゃねぇか」
「心配しなくてもいいわよ。私たちもちゃんと見ててあげるから」
「そうだぞ。ほら親は無くても子は育つって言うだろう」
「それはちょっと違う気がするけど?」
俺の留守中の事を頼もうとうまいっ亭に来たことは良いが、経緯を話したらこの調子で大笑いされた。
「では、半月ほど留守にしますが…」
「半月で帰れるものか」
「そうそう。一月は帰れないと思うわね」
「そんなには……」
「ははは…… お前だけの意志じゃ帰れないだろう」
「そうよ。一年に一度の親孝行をしてらっしゃい」
「……ありがとうございます」
「しかし、あの3人に追い出されるとはな……」
「子供の成長は早いわね」
「では、3人の事をお願いします」
店に戻ると出発の準備をする。ルーバとレーちゃん。今回は親鳥さんもついて来るから神獣組には念話でキャサル村に出かける事を伝えた。
『やっと我輩の出番か。準備が出来たら直ぐに出発だ』
『レーちゃん楽しみなの~』
『レーが行く所はどこでも参るぞ』
こんな感じで俺たちは再びキャサル村に向けて出発をした。




