第百六十三話 閃きの一網打尽
間もなく盗賊団の殲滅作戦が開始される。ルーバは正面に俺は裏の家にと別れていた。
作戦開始の時間が迫る中、詰所で作戦の説明をしていたカルラさんの言葉を思い出していた。
「いいか。今回の作戦は一人でも多くを捕らえる事だ。向うの抵抗も激しい物になるだろう。第一に考える事はお前たちの安全だ。危険は状況になればその場で始末することも仕方がないだろう。今回の作戦に参加する全員が怪我なく任務を完遂する事を期待する」
どうしてもその場で始末という言葉が引っ掛かっていたのだ。
はやり誰かが死ぬところは見たくない。そう思いカルラさんの元へと向かい俺が出来る作戦を伝える事にした。
「カルラさん。時間が無いので端的に説明します。誰も殺さないで捕まえる作戦が有るのですが聞いてもらえますか」
「誰も殺さない……ですか? 良いでしょう。聞かせてください」
「はい。まず、俺が泥団子を大量に作ります。それを作戦開始と同時にアジトに投げ込みます。投げ込みが終わったら全ての窓が開かないようにして爆発をさせます。これをルーバの神力で同時に行って貰います。たぶん中に居る人のほとんどは気絶している事でしょう。また。それと同時に両方の建物の入り口に土魔法で檻を作りますので運よく逃げれた人もそこに入るしかないと言う訳です。
あとはゆっくり盗賊団を回収したら誰も殺さずに捕まえられます」
「……本当にそんな事が出来るのか?」
「出来ます。実は……」
夜盗を捕まえ時の経緯を話し、それと爆発の規模は小さいがそれを応用した作戦だと付け加えておいた。
「分かりました。それで行きましょう。伝令こちらに」
カルラさんは伝令の人を呼ぶと裏の家側を指揮する人に変更を伝えるべく行かせた。
俺は表に檻を作ると創造魔法で隠ぺいを掛けた。すると檻は見えなくなりドアから出て来ても逃げられることは無いだろう。
因みに今回の檻は一旦入ると中からは出られないようになっている。
「ルーバ。あとは頼んだよ」
『任せて置け』
急いで裏の家側に戻ると同じ檻を作ったらルーバに念話で作戦開始の合図を出すように伝えて貰った。
俺の作戦は上手く行き泥爆弾から逃れて来た盗賊達が続々と檻に入って行く。隠ぺいで見えないから先に進めない状況にあたふたしている所は滑稽だが逃げ出す者が居なくなったところで家の中に突入する。
表のアジト側でも同じことが起きていてカルラさんがあ然としているぞとルーバが教えてくれた。
俺の作戦が上手く行った事で全員を無傷で捕らえる事が出来た。その後、騎士団所属の魔法師が檻ごと詰所まで移動させ、カルラさん達はアジトの検証をするらしく残ると言うので親鳥さんにお願いをして原状回復をして貰うと俺たちは家に帰してもらう事が出来たのだった。
捕物シーンを期待していた方には期待外れの展開で申し訳ありません。
例え悪人でも殺したり傷つける事は避けたい主人公の思いを尊重した展開になっていますのでご理解を下さい。これで盗賊団は終わりです。




