第百六十二話 盗賊団包囲網
親鳥さんが無事に戻って来たことでアジトの場所や内部の事など詳しい報告を聞くことになった。
もちろん親鳥さんの声は俺にしか聞けないからカルラさんに通訳をする。
「親鳥さんお疲れさまでした。早速だけど教えて貰えるかな」
『人数は先ほど教えた通りだ。場所は後から案内するからついて来ると言い』
「わかった。他に気が付いた事は有った?」
『ふむ。裏の建物に地下でつながっていた。捕まえるなら2軒同時でないと逃げられるぞ』
「それは凄いことを見つけて来てくれたね。ありがとう」
さっそくカルラさんに聞いたままを伝えた。
「ではアジトの場所を確認することと配備の検討をしないとですね……」
「親鳥さんが案内をしてくれるのでまずは場所の確認ですね」
「さっそく行くか」
「お気を付けて」
「なにを言ってるんです? チョコラ殿が来なければ神獣殿の通訳は誰がしてくれるんですか?」
そうだった……
親鳥さんに案内をして貰う前に近衛隊の詰所に向かい、カルラさんが私服に着替えて来ていた。
盗賊団のアジトは王都の外れとか貧民街かと予想をしていたがそこは商業区と住宅区の境目で、過去に宿屋でもしていたのだろうと思わせる建物だった。これなら親鳥さんが言うように宿主の私邸と繋がっていても怪しまれる事は無いだろう。
カルラさんは裏に在る建物も確認すると一旦詰所に戻ると言った。これから数日は近衛隊で監視しながら窃盗団の動向を探る為らしい。俺の役目はここまで。親鳥さんと家に戻った。
親鳥さんには約束したレーちゃんとのお出かけ日を明日にすると言うからレーちゃんにも伝えた。
数日後、カルラさんが再びやって来た。内偵の結果、賞金が掛かった窃盗団アンデットという事が分かり、王都だけでなく国中を荒し回っていて、急に窃盗被害の届出が多くなった半年前に王都に来たのだろうと教えてくれた。
正直、カルラさんの話は俺には関係ないし捜査内容を簡単に教えても良いのだろうか思いながら聞いていたがその後にとんでもないことを言い出した。
「それで、チョコラ殿には神獣殿をお貸し頂きたい。ルーバ殿には捕獲部隊に、親鳥さんとレーちゃん殿には捕獲中に棄損した周囲の回復。そして英雄チョコラ殿には以前に夜盗を捕らえた時と同様に収監用の牢を用意して頂きたい。
なにせ、22人を一気に現場で収監し詰所まで移動出来る物は王都には有りませんからね」
「それって俺にも一緒に来いと……」
「そうですね。結果として一緒に来て頂かないとこちらの依頼は出来ないですよね」
「…………」
「英雄復活ですね」
ここまで言えば断れないだろうと言いたげにニヤッと笑うカルラさんは決行日を告げると帰って行った
「そう言う事でルーバもレーちゃんも親鳥さんも協力をお願いします」
『久々に暴れても良いんだな』
「お手柔らかにお願いします」
『レーちゃんも頑張るなの』
「いや、レーちゃんは暴れなくても良いからね……」
『残念なの』
『では我は逃げ出す者が居らぬか上空から監視をしていよう』
「それは助かる。よろしくお願いする」
『レ―ちゃんも一緒にする』
『そうか。では母様と一緒にやろうぞ』
神獣組の妙なやる気の中、決行日となり早朝から窃盗団のアジトを囲むように作戦通りにそれぞれが配置に着いた。




