第百六十一話 発覚、アントンの隠れスキル
親鳥さんが盗賊のアジトを探索から戻って来るのと待っている時、カルラさんから意外な指摘が在った。
「そう言えばチョコラ殿。ここ半月ほど前から手入れの方法が変わりましたか?」
「はい。一月ほど前から助手を付けて作業をしています」
そう言えばカルラさんにはまだアントンと言うか、3人とも紹介をしていなかったことに気が付いた。マルサ―ルにアントンを呼んで来てもらい改めて3人をカルラさんに紹介をした。
「不用品の買取りを担当させているマルサ―ル。接客担当のキッカ。そしてクリーニングで俺の助手をしているアントンです。そして、こちらが近衛隊の副隊長でカルラさんね」
それぞれが軽く挨拶を交わしていた。
「ところで、先ほどの話だが手入れの方法は変えてないのですか?」
俺はカルラさんが何を感じているのかが理解できていなくて、作業内容を説明する事にした。
「今やっている工程はアントンが主になって作業を進めています。最後の仕上げだけを確認も兼ねて俺がやってますが、アントンの作業は俺が教えた通りにしているから変わったと言う事は特にないと思います」
「そうですか……」
「なにかあるんですか」
「実は、ここ半月ほど前から武具が変なんだよ。っていうか、変わった?」
「詳しく教えてください」
カルラさんが教えてくれた内容はトンデモナイものだった。
「まずは鎧だが、稽古中に傷が付きにくくなった。というかほとんど付かないんだ。それに剣もだがその剣を持つものが不注意で怪我をしても直ぐに治ってしまう。変だろう?」
「本当ですか??」
聞いた俺も信じれなかった。でもカルラさんが嘘を言う必要性は無い。という事は考えられるのはアントンだ。なにせ回復のスキル持ちだ。そう思うと作業工程に秘密が有るのかも知れないと思いアントンを連れて作業場にやってきた。
アントンに本格的な作業をさせたのはカルラさんが指摘した半月ほど前。出来を見ながら俺が最後の仕上げをしてきたが特に見た目にも大きな問題が無かった事から鑑定まではしてなかった。
「アントン。今から作業をしている所を見せてくれるかな。俺が見てるからと言って緊張せずにいつものように回復スキルを発動しているイメージでやってよ」
「わかりました」
そう言うとアントンが一本の剣を取り俺が教えた方法と手順で作業を始めた。
やはり特段おかしな所作はない。そこで鑑定をしながら作業を見ていると在る所で違和感を覚えたのだ。
それは最後の工程、乾いた布で磨き上げる仕上げの時だった。
肉眼では気が付かなかったが一瞬だけ剣がうっすらと輝いた気がした。
改めて鑑定をするとそこには所持者自動修復(軽微)とあった。
まさかの付与スキル。
アントンに初めて会った時には付与スキルは鑑定にも出ていなかった。急いでアントン自身を鑑定すると出ていた。
【スキル】 回復・回復系付与
どうも回復だけに限定された付与スキルのようだがどうして新たにスキルが発現したのか理解が追い付かない。
「アントン。作業中に何を考えながらしている?」
思わず本人に聞いていた。いや、聞かずにいられなかった。
「えっと…… せっかく手入れしたのがまた傷つくのは嫌だなって…… だから自分で回復出来たら良いねって話しながらしていました」
「それだ!」
アントンの物に対する愛情と優しい気持ちが新しいスキルを生み出しのだと俺は思えた。
「そうか…… ありがとうな。その気持ち忘れないで作業してくれ」
付与スキルの件をアントンに伝えようかと思ったが、目標を回復の開花としている。波及効果だとしても今は伝える時期じゃないと思い直し褒めるだけに留めた。
さて、カルラさんにはなんと説明しようか……
そんな時、親鳥さんが戻って来た。




