第百五十七話 パンケーキであん巻き
当初、小豆と寒天で羊羹を作るつもりだったが両方とも市場に無かったので、手に入った素材で白あんを作ったのは良いがその先を考えていなかったからまた行き詰まってしまった。
一旦考える事を止めて仕事に戻ろうと思ったところでお腹を空かしていることに気が付いた。思い返せば市場で神獣トリオに付き合って屋台で串焼きを一本食べただけだったのだ。
キッチンに行って食材を確認していたらふとパンケーキが食べたくなり作ることにした。小麦粉と砂糖、牛乳に卵が有れば簡単に作ることが出来るし小腹を満たすには持って来いだしね。
思い立ったが何とかでそうそうに生地作りを焼いた。
久しぶりに食べるパンケーキは仄かに甘くフワッとして美味しく出来たと思う。欲を言えばハチミツや生クリームが有れば文句なしだけど生憎とハチミツすら切らしていたのにはガックリと来た。
ない物ねだりをしてもしょうがないから軽く砂糖を掛けようと思った時に冷ましていた白あんが目に入った。
そうだ。これを乗せて食べよう。結果は美味かった。
「あっ、店長何を食べているの?」
キッカに見つかった。俺の呼び方はいつしか店長で定着している。
「パンケーキだよ。キッカも食べるか?」
「もちろんよ。上に乗っているのはなに?」
「これは白あんだよ。ただこれと一緒に食べると甘すぎてな……」
「だったらパンケーキの甘さを無くせば良いんじゃない?」
そうか! そうだよ。なんでそんな単純な事に気が付かなかったのか……
「キッカありがとう。ちょっと思いついたのが有るから待っててくれ」
新しく作ったパンケーキの生地は砂糖を入れずに作ってみたが、これは失敗。俺好みに出来たのはほんのり甘みを感じる程度に砂糖を加えたものだった。忘れないうちに分量を書き出す。
小麦粉100g、牛乳60ml、卵2個、砂糖20g。そして塩2g
これを合わせて弛めの生地を作り。薄く伸ばして焼いていく。片面はキツネ色が付くまで、もう片面は軽く焼き色が付くほどに。
初めは上に乗せたけど今回は餡を包むことにした。そうする事で持って食べられるからだ。
単純に餡を巻いただけなので取り敢えずあん巻きと呼ぶことにして、10個のあん巻きを作った。
「店長、遅いわよ。待ちかねたわ」
「ゴメンゴメン。誰か隣にいるルーバとレーちゃんを呼んで来てくれるかな」
そう言うとマルサ―ルが表に出てルーバ達を呼んでくれた。
『チョコラよ、何かあったか?』
「いや、みんなでおやつを食べようと思っただけだよ。ルーバは要らない?」
『食うにきまってるわ。早く出せ』
「試食だから一人一個だからね。あと感想もお願い」
『一個か…… 美味かったらもっと作れよ』
みんなに一つずつ配ると……
『ご主人様~ これ甘くて美味しいなの~』
『チョコラよ。一個では足りんぞ。もっと作るのだ』
「外の皮が少し固い気がするけど食べごたえを感じます」
「うんうん。でも中に包んであるのは美味しいわね」
「中に入ってるのは白あんって言うんだよ」
「店長…… 白あん美味しい」
みんなの感想は概ね好評だ。
残っている3本はうまいっ亭に持って行こう。タージさんの意見を聞くために。




