第百五十六話 餡を提案
タージさんに半強制的に約束されられた月一のレシピを何にしようかそろそろ考えないといけない。
なにせ急に出来る物では無い。今までは思い付きでというか、匂いに釣られてやって来たタージさんに見つかり教えていたのが殆どで、意識したことが無かったから良かったが、これからは3人の食事代の一部として教えるから何でも良いとは思えない。
困った。
あぁ~ こんな事なら神獣組と同じように俺が作れば良かったと少し後悔をしている。
取り敢えず市場に行こう。
「ちょっと市場に行って来るから店番を頼むね」
3人にそう言って店を出ると、隣でアイドル犬とアイドル鳥をしていたルーバとレーちゃんがやって来た。
『どこかに行くのか?』
「ちょっと市場に」
『そうか。我輩も行くぞ』
『レーちゃんも行くのなの~』
「アイドルはしなくて良いのか?」
『もう直ぐ昼休憩だ』
「そうなのね…… 今日は買い食い無しだよ」
『なに~~~~~~~~~~~~~~~』
『レーちゃん… 美味しいの食べないの……なの』
か弱い声で我慢します風にねだってくるレーちゃんに陥落。
「一軒だけだぞ」
『ふむ』
『やった~~ 嬉しいのなの。ご主人様ありがとうなの~』
レーちゃんが喜んで来るだけで俺は満足だよと思わずレーちゃんを抱きしめるといつの間にか親鳥さんが俺の頭に止まって来た。
親鳥さん…… 重いです。
神獣トリオを連れて市場にやって来た。目当ての物は豆と寒天だ。出来たら小豆が良いけど無ければ違う豆でも良い。
色々と探してみたが小豆も寒天も無かったが、白いんげんに似た豆が有ったのでそれを買って帰ることにした。寒天に関しては聞いた事も無いと言われたよ。
『おい。買い物は終わったか?』
「あぁ。終わったよ」
『よし、屋台に行くぞ』
『やたい・やたい・やたいなの~~』
あまりにも嬉しそうなレーちゃんを見ていたら結局3軒の屋台をはしごしてしまった。一軒のはずだったのに……。
『ふふっ。本当にレーに甘いな』
「うるさい! さっさと帰るぞ」
『はいはい』
ルーバめ、なに勝ち誇っているんだ! あぁ~ムカつく。
さっさと帰って試作しよう。
「「おかえりなさい」」
キッカとマルサ―ルだ。アントンは庭に作った作業場で仕事をしているとか。
うんうん。しっかり仕事してしっかりスキルを磨いてくれよ。
俺はキッチンに行くと買って来た白いんげんを洗ってミズに漬け込んだ。本来ならこのまま一晩放置だが俺には時間が無い。ここは創造魔法ですでにふやけた状態にし、ついでとばかりに面倒な薄皮取も終わらせた。一応、薄皮が残っていないか確認してから茹でて行く。
指で豆が潰れるくらいになったら茹で上がり。これを熱い内にすり鉢で潰していく。裏ごしをしても良いけど適度に豆の食感が残っている方が俺は好きだからね。
そここまで出来たら鍋に移し、砂糖を加えて煮詰めていく。砂糖は豆の量の8割が目安だが好みの甘さに調整しながら入れて行くと良いだろう。最後に隠し味で塩を少量入れ馴染ませる。甘さが引き立ち味も締まるんだよ。これで出来上がり。
後はパットに広げて冷ますだけ。表面が乾燥しないように濡れ布巾は必須だね。
そう言えば…… これを使ったお菓子は何にしようかまだ決めていなかったよ。




