第百五十三話 3人への課題(マルサ―ル)
アントンが落ち着いたところで次はマルサ―ルだ。マルサ―ルも次は自分だと言わんばかりに期待した目で身を乗り出してきた。ますはこいつを落ち着かせないと話し難くてしたがない。
「マルサ―ルよ、落ち着け」
「俺は落ち着てます」
「じゃ~ 少し俺から離れろ。話し難いわ」
「もう~ 離れなさいよ」
「……すいません」
キッカに押し戻されて落ち着いたところで話を進める。
「君には新しく始める古道具の方を任せる。と言うのもマルアールには真贋というスキルがある」
「真贋ですか?」
「このスキルは本物と偽物。嘘か真を見分ける事が出来るスキルだ」
「そんな事が分かるんですか?」
「出来るぞ。しかも磨き方次第では鑑定に進化させることが出来る」
「えっ、鑑定ですか!」
「凄いじゃない。鑑定が出来たら王宮にでも仕事が出来るわよ」
「うん。マルはすごいね」
「古道具屋で大事なのは買取りだ。そこでマルサ―ルには持ち込まれた物の判定をしてもらう。つまり鑑定の力を付けてもらう事に重点を置きたいんだ」
「俺がんばります」
「だけどな、一つ心配なことがある。それはお前が少し横着というか雑と言うか……」
「そうなのよ。マルは雑なのよ」
「うるせぇキッカだって人のこと言えないだろ」
「私はそんな事ないもん」
「はい。そこまで!」
2人を止めて話を続ける。
「真贋も鑑定も共通して言えるところは落ち着いて丁寧に見ないと正確な判断が出来ないと言うところだ。いい加減に見てしまうと中途半端な結果しか出ないと言う事だ」
「落ち着いて丁寧に。ですか……」
「そうだ」
「マルの一番苦手な部分ね」
「キッカもチャチャを入れない」
「へへっ。叱られた~」
「ふん」
「二人とも止めなよ。チョコラさんがお話しできないよ」
「そうだった……」
「ごめんなさい」
まったく仲が良いのか悪いのか……
軽口を言い合う二人を見ていると子供の頃に兄たちとよく喧嘩をしていた時の事を思い出し微笑ましくも思えた。
「話を続けるよ」
「「「はい」」」
「それで、しばらく買取りはしないから今ここに在る物をマルサ―ルの真贋で見定めをしてもらう」
「良いか悪いかはどうやって確認するの?」
「それは事前に俺の鑑定スキルで調べてあるから安心していいよ」
「えっ、チョコラさんって鑑定スキルも持っているんですか?」
「実はね。だからマルサ―ルには鑑定が出来るようにスキル進化をさせる事が課題になる」
「はい。がんばります」
「判定の正確度が上がってきたら買取りを任せるから焦る必要は無いけど頑張ってスキルを磨いてほしい」
「ご指導よろしくお願いします」
マルサ―ルもやる気を出してくれたことに安心したので最後のキッカへと話を移す。




