第百四十四話 チョコラ、新事業を提案される
教会から退院が決まっている3人を引き取ることを約束したが、せんたく屋で必要なのは一人だけ。あとの二人をどう活かしてあげるか思案のしどころだ。
タージさんに相談しても孤児院上がりを受け入れてくれる所は少ないだろうといわれ、うまいっ亭も店の規模から言っても今は人手が足りているという。
ジュグレさんにも相談しようとコミュレットにやって来たのは良いが、何も考え無しで引き受けた俺が自力で解決しないといけない事に気が付き帰ろうとした時に声を掛けられた。
「チョコラ殿ではないですか。お時間が有るならお寄りいただけませんか」
声を掛けて来たのはコミュレットの業者用門番をしている人だった。
「おひさしぶりです。俺に何か用でも?」
「いえ、オーナーがお会いしたい様でしたので……」
「ジュグレさんが?」
「はい。ちょっとお待ちください。オーナーに確認を取ってみますね」
そう言うと別の門番さんが受付に向かい、しばらくして戻って来た。
「どうぞ。オーナーがお待ちです」
なかば強制的にジュグレさんの執務室に案内された。
「チョコラ殿、お久しぶりです。新店オープンの時はお話しする時間も取れませんでしたからね。残念でした」
「いえ…… お忙しいのは良い事です」
「ところで、教会から3人を引き受けるらしいですね」
「えっ、もうご存知なのですか?」
「タージ先輩からお聞きしました」
「あぁ~ そうでしたか」
「実はその事でお話が有りましてね。参考にして頂ければ幸いです」
そこで提案されたのは俺に古道具屋をはじめたらどうだと言う事だった。
前回の古着の活用もあり、要らなくなった物を引き取って修理・改修して安く売り出せば需要は見込めると言う物だった。特に俺がクリーニングをすると新品同様になることから古道具でも商品価値が上がる。それを利用しない手は無いのでないかと言われた。
「だけど、そうすると新しいのは売れなくなって困る人が出るのではないですか?」
「大丈夫ですよ。そんな心配には及びません。それより教会から出なければいけなる子は今年だけでは無いのでしょう。上手くいけばこれからも人が要るようになります。そうすればもっと教会の子を引き受けられるようになります。私も心なしかの協力は出来ますよ」
ジュグレさんの話を聞いて単純ではあるがやってみる事にした。
商品集めは今の店で買取りもしますと告知して、お客に選んで貰えば良いだけだ。
「わかりました、やってみます」
「ほう~ 良い決断ですね。悩んでも時間だけが勿体無いだけですからね。それでは商業ギルドでリフォームと古物商の事業追加の登録をして置くと良いでしょう。あとあとの揉め事を防ぐことが出来ますからね」
「ご助言頂きありがとうございます」
「いえいえ、私もチョコラ殿には色々と助けられておりますからね。これ位は……。でもどうしてもお礼をしたいと言うのなら、教会の子に差し入れたスイートポテトでしたか? その作り方を伝授してくれるだけで結構ですよ」
やはりジュグレさんは食えない人だと改めて感じたのだった。




