第百四十三話 チョコラ、園長先生に諭される
『そろそろ良かろう。もう終わりだ』
「えぇ~~ もっと走ってよ~」
「次は俺だぞ。お前は一度降りろ」
「そうだそうだ」
『小童たちよ。我でどれだけ遊ぶつもりだ』
「晩御飯の時間まで」
神父さんとの話も終わり孤児院に戻って来るとそこには心身ともズタボロになったルーバがいたように見えたけど、放置しよう。レーちゃんは楽しそうに子供たちと遊んでいた。親鳥さんは……
孤児院の屋根で高みの見物??
『チョコラ、やっと戻ったか。いい加減に帰るぞ』
『えぇ~ レーちゃんはもっと遊びたいのなの~』
「ルーバは人気者だな。もっと遊んでやったらどうだ。たまにしか来ないんだしさ」
『これだから来たくは無いんだ』
「明日のおやつ……」
『約束は違えるなよ』
「わかってるよ」
「俺は園長先生と話してくるからもう少しだけ子供たちの相手をお願いな」
『まだ用があるのか……』
「みんな~ おやつの時間よ~」
シスターの声が聞こえた途端に子供たちは部屋の中へと戻って行く。
『フゥ~ 助かった……。 やはりあ奴らは悪魔だ』
「ガンバレ子供たちのアイドルさん」
『アイドルはタージの店だけで十分だ』
「子供たちが戻って来るまでゆっくり休憩でもしてろよ」
『なに? まだ我に相手をさせるつもりか!』
「そうだけど……」
『シュークリームだけでは割に合わん。今夜はステーキを食わせろ! ステーキだぞ』
「そんな約束はしてないぞ」
『だから今するんだ!』
「やだよ。じゃ~ 俺は園長先生に会ってくるからな」
うん。ルーバを揶揄のは面白い。園長先生にはいつものように寄付金を渡して、退院する3人がうちに来て貰う日を相談したらすべての用事が終わる。それまでルーバには頑張ってもらおう。
俺が部屋の中に入ると子供たちは俺が持って来たスイートポテトを楽しそうに食べていた。
あちらこちらから感想が聞こえてくる。どうやら気に入って貰えたようだ。こんどシスターに作り方を教えようかな??
園長先生の部屋のドアを叩くと入室の許可が下りた。
「美味しい差し入れをありがとう」
「いえ、喜んで貰えたらそれでいいです。神父様から話は聞きました。3人は俺が引き受けます。何時ごろ退院するのですか?」
「来月末には退院の日が来るわ。そう。チョコラさんが引き受けてくれるのね。ありがとう。助かるわ」
「いえ、俺も人手が欲しいと考えていたので、来て貰えたら助かります」
「チョコラさんの所なら子供たちも喜ぶし、私たちも安心が出来ます」
「ありがとうございます。それと、少ないですがこれをお使いください」
お金の入った袋を机の上に置いた。
「いつもありがとう。助かるわ。でも来るたびに持ってこなくても良いのよ」
「俺は……」
何と言って良いのか分からなくなった。気が付けばいつも大金を貰って使い道が無いからここで使って貰おうと思っていただけだ。毎回持ってくるのは逆に迷惑なんだろうか……
そんな思いが顔に出ていたのだろうか、園長先生が言った。
「あなたがこの園に恩返しと言って持って来てくれるのは分かっているわ。だけどね、私は純粋に何も用事が無くても顔を見せてくれるだけで嬉しいのよ。それに今度はうちの卒業生を3人も引き受けて貰えるし。十分に恩返しはしてもらったわ。ほんとうにありがとう。でもね、3人を引き受けると言う事はお給料も出さなきゃいけないし、他にも出費が増えていくのよ。1人の時とは違ってくるわ。その辺りも考えながらお金は使いなさい。それでも寄付をしてもらえる余裕がある時には遠慮なく受け取ります」
「わかりました。逆に気を使わせてすいません」
「いいのよ。あなたのお蔭で助かっているのは事実なのですから。これからも子供たちのことを助けてあげて。お願いしますね」
「はい」
園長先生との話も終わり、ルーバには『遅い』と叱られながら帰宅したのだった。




