第百四十一話 おやつ攻防戦
このところ頭を痛ませていた件も片付き穏やかな朝を迎えていた。こんな時は孤児院にでも行って子供たちと遊んで来るか……。そうとなれば何かお菓子を作って持って行ってやるかな。
そう思い俺はキッチンに向かった。
材料は何が在るか確認してみると、お菓子に使えるのがサツマイモ位しか無かったのでスイートポテトを作ることにした。
イモの皮を剥き1センチ程の暑さに切って10分程水にさらしてアク抜きをしてから15分~20分蒸す。湯でるより蒸す方が美味しいからだ。蒸さずに焼き芋にして使っても美味しいよ。
蒸し上がったら潰す。滑らかな口当りが好きな俺は更に裏ごしをする。
イモが潰れたらそこに牛乳と砂糖。少量のバターを入れ滑らかになるまで混ぜて行くが、イモの硬さが耳たぶ程の硬さかそれよりやや硬めで抑えておく事でこの後の形成につながるので注意が必要だけど、この固さは牛乳の量で調整するので一気に入れずに少しずつ入れていく。
好みの固さになったら2口~3口位で食べられる量を目安で俵型に形造って天板に並べ、卵黄の水溶きを表面に塗る。これは艶出しだから塗らなくても問題は無いけど、焼き上がりは塗った方が綺麗だ。
これをオーブンで10分程かな。焼き色が付いてきたら出来上がり。
『いい匂いがしてきたが何を作っておる?』
『美味しいのならレーちゃんも食べたいなの』
ルーバとレーちゃんだ。
お前たち…… 確か隣でアイドル犬とアイドル鳥をしていたのではないのか??
匂いに釣られてくるとは目聡い奴だ。あっ、この場合は鼻聡いと言うのか……
「スイートポテトだよ」
『もう出来たのか?』
「出来たけど、これは孤児院に持ってくんだからね」
『ご主人様~ レーちゃん食べてみたいのなの……ダメなの?』
あぁ~ レーちゃんが可愛い……
『レーよ。スイートポテトは目の前だ。その調子でこ奴を篭絡しろ。』
「ルーバ、聞こえているからな」
『ご主人様~~ お願なの。今食べてみたいのなの』
「教会に着いてからな」
『今日はご主人様が意地悪なの~~~~~』
『いい調子だぞレーよ』
「だから聞こえてるって」
「おっ、うまそうだな。うん。美味いな」
「ちょっとタージさんなに摘んでるんですか!」
「良い匂いがしてきたからな。丁度暇だったし来てみたのさ」
……油断してた。まさかタージさんまで来るとは思いもしなかった。
「で、これは何と言う物だ」
「スイートポテト。サツマイモから作った物です」
「サツマイモか…… こんな食べ方あるんだな。後で作り方を教えてくれ」
やっぱりこうなるか……
「分かりました。でもこれから孤児院に行くので今日は無理ですよ」
「かまわん。じゃ~ ミハルとミリアの分も貰っていくぞ」
そう言うと勝手に2個だけ持って帰って行った。
いつもお世話になっているから良いんだけどね……
『おい。タージは良くて我たちは食えんのか!』
『ご主人様~~~』
しょうがないな……
結局レーちゃんの可愛さに負けて二人?……じゃない、親鳥さんもだから3人?にあげたのであった。




