第十四話 孤児院に来ています
クリーニング屋を初めて5日が経ち、ミハルさんから明日は休業するように言われた。タージさんからもちゃんと休日を入れるのも大事だと言われた。
翌日、俺は孤児院のある教会に来ていた。初めて王都に来た頃にお世話になった教会だ。
ギリギリの所持金を持って村を出たのは良いが、王都に着いた時には所持金もほとんどなくなり、あと1~2食分位しか残っていなかった。
もちろん宿などに泊まれるはずも無く、野宿も止む無しと思った時に目にしたのが教会だった。
とにかく、夜露さえ凌げればと神父さんにお願いをして泊めてもらう事が出来た。
それからしばらくは、孤児院のお手伝いをしながら日雇いの仕事をこなし、ささやかであるけど食費分ほどしかないけど神父さんに渡していた。
それから定職を見つけることが出来た時に、神父さんの紹介で今の部屋を借りることが出来たのだ。
だから恩返しと言うと大げさだけど、今でも時々孤児院のお手伝いに来ている。
「こんにちは、チョコラです。今日もお手伝いに来ました」
「チョコラか。お前さんクリーニング屋さんを始めたと聞いたけど、ここに来て大丈夫なのか?」
神父さんが心配して聞いて来たから、「今日はお休みなんです」とだけ答えた。本当は強制的にって言おうと思ったけど、そこは止めておいた。
「じゃ~また孤児院の方でも手伝ってもうかな」と教会の裏にある孤児院に向かった。
今日はここで子供たちの服を洗濯するつもりだ。この5日間で悟った事は、俺が洗えば汚れだけだけでなく、服の傷みも直ると言う事だ。空耳と思い気にしていなかったあの言葉が俺の職業チートが発動する声だとタージさんに教えて貰ったからだ。
適正職業に就くと、まれに特殊能力が開眼することが有るそうで、俺が聞いていたのはそれじゃないかと言う事だった。
孤児院の副院長さんにお願いをして洗濯場で子供たちの服を洗い始めた。
子供たちの服はボロボロで、新しく買う事も出来ないので、着きれなくなった服や、要らなくなった服などを街の人から貰った物を着ていた。
『クリーニングを開始します。強化補修を発動します』
次々に服を洗っていると、子供たちが「チョコラ兄ちゃんのお手伝いをする~」と言って来てくれたので、洗い終わったのを干し場に持って行ってもらう事にした。「重いから気を付けて運んでね」と声を掛けると「わかった~」と元気のいい返事を返してくれた。
全ての洗濯を終え、干し場に行くと子供たちが干していてくれた。
ここは子供たちでも干せれるように低く作ってある。もちろんシーツなのど大きな物を干すのは高い位置に干すけど、基本は子供達でも出来るようにしてあった。