第百三十三話 なんとか乗り切った
あれから10日。休みも取れずにいるが、客足はまだまだ引く気配が無い。毎朝、かなりの量を引き受けている。正直、どんだけ人が居るんだとウンザリとしているのも事実だ。ほんと王城を引き受けた時に騎士団と近衛隊の契約を解除しておいて良かったよ。もし継続していたら今頃カルラさんの鬼のような監視に晒されて居ただろう。あれだけは2度とごめんだ。
そうそう。昨日の夜にミハルさんから受けたアドバイスをしておこう。そう思い新たな張り紙を用意した。
【式典の前後2日間はお休みとさせて頂きます。ご依頼は5日前には一旦終了致します】
そしてこれが裏目に出た。
この翌日から依頼が殺到し収拾がつかなくなった。整理券すら足りない程に……
みんなどれだけオシャレがしたいんだと愚痴りながらも受けた仕事はこなしていくしかない。
そしてやっと引受最終日を迎えた。
明日中に終わらせれば、明後日は引き渡しだけだ。先が見えて来た安堵感も少しだけだが湧いてきた。
さて、開店だ。今日はどれだけ来るのだろう……
結局、受付作業だけで1日が終わった。閉店一時間前に整理券を配ったがそれでも閉店時間に閉める事が出来なかった。預かった数を数えていないがこの騒ぎになって最高を記録しているだろう。
見るだけで疲れてくる。今日までに何度レーちゃんにお願いしようと思った事か……
そして、なんとかすべてを乗り切り、新王の戴冠式の日を迎える事が出来た。
正直に言おう。張り紙を出したが作業が間に合わず、昨日の夕方まで掛かってしまった。
新規の受付は断っていたのでそれだけが救いと言えば救いだった。
戴冠式には俺も招待をされたが何とか断り、一般席で見る事にした。
闘技場への入場券は予め地位に関係なく各家に2枚までずつ配られていた。一人暮らしのおれはもちろん一枚だけ。席は指定で割り振られている。行ってみないと分からない。
それなりの服を選び、タージさんミハルさんと共に闘技場に向かった。レーちゃんはなぜか俺の頭の上に止まっている。ルーバと親鳥さんは霊力で姿を消して付いて来るらしい。
そんな事も出来るのかと一瞬驚いたが、もっと早く教えてくれてたら……と複雑な思いをするのだった。




