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第百三十話 神話を創ろう (後編)

宰相の提案を受け、急ぎ閣僚会議が開かれた。と言っても今回は既に決定したことを申し合わせるだけの会議だ。一通りの説明とこれからの予定を各部署に伝えたところで国王陛下よりのお言葉が有った。


「では、今申し合わせたことをこの後、正午にわしが直々に国民に向け発表する事にする」


全ての閣僚が頭を下げた。



閣僚会議の間、陛下の執務室で留守番をしていたチョコラの元に陛下と王太子殿下。そして宰相様が戻って来て言われたことは……


「チョコラ殿。正午に陛下直々に発表されることが決まりました。これより王都にいる貴族が集まって参ります。王家ご友人であるチョコラ殿にも同席頂きますのでそのおつもりでお願いを致しますよ」

「えっ……でもこの格好じゃ………」

「心配は要りません。チョコラ殿の正装は殿下が用意して頂いております」

「なんで殿下が?」

「ふふふ…… 叙勲の時に言いましたよね。私が差し上げると。その中の一着を予備として私が持っているのです。こういう時が有ると思いましたから。さて着替えに参りましょう」



正午を知らせる鐘が鳴る前には大勢の人の声が城の外から聞こえて来た。これは騎士団や近衛隊が王都中にお触れを流したからだ。


そしていよいよ。正午の鐘がなった。俺はなぜか公爵様と同格の位置に控えさせられ、それだけでも生きた心地がしなかった。


ファンファーレと共に国民の歓声が高まる中、国王陛下が民の前に姿を現した。いよいよ陛下のお言葉である。陛下はマイクの前に立つと淡々と話し始めた。


宰相様が書いた筋書き通りに……。



「多くの国民が今この時、余の前に集まってくれたこと嬉しく思う。今日は国民に向け重大な話をする故、しかと受け止めて欲しい。その前に多くの民が目撃した今朝の王城が光輝いた一件が関わっていることを申して置こう。余は今朝方に夢を見た。その中で、神様からのご宣託があった。その宣託とは速やかに王位を王太子であるクラムに禅譲せよとの事であった」


この時、王城前に集まった民衆からどよめきが起こり収まるまでにしばし時間がかかったが、陛下は話の続きを始めると民衆も落ち着いてきた。


「いきなりの話で驚かれるのは最もだ。神はこの宣託が夢ではない事を証明するため、日の出とともに王城を輝かせ、新たな国の船出にと汚れを無くし、輝く王城を目に入れよう。そう言い残し夢から消えた。その後は民の者も見た通りだ。余も目が覚め、報告を受けるまでは単なる夢と思い捨てさる思いだった。されど報告を受け、急ぎ宮殿から出て城を見てみると一切の汚れが無くなっておった。夢の内容が実現されていたのだ。正に神託その物であった。故に、神に指名された王太子ならこれから先も神のご加護を受けるである言う事だ。言って返せばそれはこの国への加護。国民への加護である。それならば余は何も拒む理由は無い。先ほど重職を任せた閣僚たちにも理解を得る事が出来た。あとは国民の同意を得るだけだが、全国民の同意は無理がある。そこでここに集まってくれた民達の賛同を頂きたい」


ここで割れんばかりの拍手と歓声が沸き上がった。これに安心してか陛下が続ける。


「この民達の歓声をもって王太子であるクラムに一月後、王位の禅譲を決定する」


そして陛下の横にクラム殿下が並んだ所で


新王バンザーイ! 

王国バンザーイ!

新王バンザーイ! 

アウロス王国バンザーイ!

新王バンザーイ! 

王国バンザーイ!


観衆のボルテージは最高潮となり、のちに神国アウロスと呼ばれる神話の始まりでもあった。


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