第百二十七話 王城。朝日に輝く
殿下に報告した翌日、庭での練習を2度行った。ただ、もう一度やろうとしたところでルーバに止められた。
『それくらいにしておけ。疲れが残ったら明日困ることになるぞ』
「そうなんだけど……」
『日ごろのノー天気はどうした』
「えっ、俺ってそうなの??」
『フン。いつも思い付きで暴走しておるだろうが』
「暴走は言い過ぎじゃないか?」
『我から見たらノー天気だ。とにかく今日はもう休んで明日に備えろ』
たしかに本番は規模が大きすぎる。疲れでイメージが乱れたりしたら大変だ。不安は多少残るがイメージ通りに仕上がっている今、この感覚を忘れないようにしよう。
その日は日が沈むと同時に床に付き、日の出の2時間前には起きて王城に行く準備をした。
準備と言っても朝食用の弁当を持って行くだけだ。さすがにこんな早起きはしたことが無い。まだ食べ物を胃が受け付けない感じだったから持って行くことにしたのだ。
打ち合わせの時に殿下は城から出ないようにお願いをしておいたけど殿下の事だ。なんら言い訳を作って外に出てくるだろう。どこか目立たない場所は無いかルーバに探してもらった。
とにかく誰にも見られたくない。もし見られたらまた厄介なことになりそうだからさ。
ルーバが選んだ場所は王城の正門だった。ここは王族や他国の用人が主に使う門で、凱旋パレードもこの門が使われる。そう言えば俺もこの門を使った事が有る事を思い出してしまった。
『ここが一番適した場所だろう』
「でもここじゃ殿下に見つからない?」
『お主は本当にバカじゃな』
「なにバカって……」
『そうだろうが、自分をどう隠すか良く考えてみろ』
『あっ! レーちゃんわかったなの~』
『フフ…。レーに分かった事がお主はわかんのか?だからバカなのだ』
「……」
『まぁ時間も無い。レーよ教えてやれ』
『あのね、ご主人様を光魔法で見えなくするのなの』
「あっそうか!」
『レーは賢いな。どこかの誰かさんとは大違いだ』
「ルーバ……うるさい」
『もう直ぐ夜明けだ。準備しなくて良いのか』
ルーバに言われ白み掛かった東の空を見るとうっすらと赤みが差してきた。間もなく日の出だ。
親鳥さんに俺が合図をしたら王城を囲んだ光の障壁内を飛んでもらう事を確認した。
『吾輩に任せておけば良いぞ』
『レーちゃんも一緒に飛ぶのなの』
『おぉ~ そうか。では母様と一緒に飛ぼうぞ』
『はい。なの~』
俺は自分とルーバを光の障壁で身を隠してから王城全体にも光の障壁を張った。
やがて朝日が光の障壁に反射して輝き出した。
「いまだ!」
俺の合図とともにレーちゃん親子が王城の上を縦横無尽に飛び回り、キラキラした光が全体を包んでいく。光の障壁は朝日が上に昇るごとに輝きも増した。まるで神の光輪に包まれたが如く王城が輝いていた。




