第百二十六話 準備は整った
教会でステータスの確認を終えたチョコラはもう一度、孤児院にやって来てきた。子供たちの遊び相手に置いておいたルーバとレーちゃん。それとなぜか従魔になっていた親鳥を呼び戻して帰るためだ。
「お兄ちゃん。シュークリームありがとう」
「美味しかったよ」
「また持って来てね」
チョコラを囲んで口々に喜ぶ子供たちの顔が嬉しかった。
そうだ。チョコラは有る事を思いつき、シスターに聞いてみた。
「この孤児院で新しいお菓子を作って売ることは出来ますか?」
「それは出来ますよ。今でもパンなどは少量ですが売っていますから」
「では、売る為だけに作ることは?」
「子供達でも出来る物でしたら良いかと思いますよ。そうでないのは人手が有りません」
「わかりました。また来ますね」
シュークリームが大ヒットしたんだ。今度子供達でも作れるお菓子を考えて教会で売り出そう。そうすれば少しは楽になるかも知れないと密かに思うのであった。
家に戻るとステータスに有った能力をどうやって使うか考えた。今までは主に風と火と土に空間魔法しか使っていなかったからな。今回、注目したのは光魔法と空間魔法だ。そこに創造を組み合わせたら王城全体を目隠しできないかという事だった。
イメージはこうだ。空間魔法で城壁から王城全体を包み込むように壁を作る。物を使っていないので見た目では何もない状態なのでいつものように城がみえるはず。また壁は親鳥さんが飛んだ時に現れる光の影響が王城以外に及ばない防波堤にもなってくれるだろう。また壁の周りに光魔法で朝日の光で親鳥さんの光を分かり難くしようという作戦だ。
早速、庭でテストだ。土魔法で大きな台を作り、そこの昨日預かった依頼の品を置く。その周りに空間魔法で壁を作り、光魔法を施せば実験台の完成だ。依頼の品を置いたのは実験でレーちゃんに飛んでもらうついでと言ってなんだが、作業効率を鑑みて……言い訳は良そう。
準備は整った。後はレーちゃんにこの壁のかなかを飛んでもらっている時に光魔法で疑似太陽を作るだけだ。ただ問題は俺が光魔法を初めて使うと言う事だ。
少し練習をしよう……
実験は成功した。レーちゃんが飛んだ時に出る光を疑似太陽はそれを打ち消した。しかし、台の上の依頼品はしっかりと復元されていた。あとは実際に王城で再現をするだけ。
善は急げとルーバに王城まで連れて行ってもらった。殿下と話をするために。
いつものように業者用の門で殿下に取り次いでもらった。
「殿下。急ですが明後日の日の出に合わせて作業をします。もし曇りなら翌日と延ばしますがそれで一気に王城全部を復元します」
「ほう~ それはまたどうしてですか」
「はい。親鳥さんにお願いをして一気に終わらせて、自分の店を普通に開くことにしたからです」
「なるほど。それも一理ありますね。わかりました。私も立ち会いましょう」
「その時は作業が終わるまで王城内には入りません。終わった後に確認で入ら得て頂くつもりですが、殿下は中で待っていてください」
「私に見られては不味い事でもあるのですか?」
「……はい。集中が出来ないと作業が出来ません」
「分かりました。私が居ては気を使わせますからね。良いでしょう。終わるまで城からは出ませんよ」
「では、明後日の朝。勝手にやらせて頂きます」
それだけを確認して王城を後にした。




