第百二十四話 冷静なルーバ
レーちゃんの親鳥の活躍で俺は見守るだけで、何一つ手を出すことなく王位殿と奥の宮の作業が予想以上の仕上がりで終わった。殿下はこの勢いで他の離宮へと進もうとしたが、俺が今日はここまでと断った。このまま行けば殿下の思うつぼ。ここは仕切り直しだ。
殿下に今日の作業は終わりと告げ、家に帰って来た。
これから神獣達と話合いだ。
「親鳥さん。レーちゃんにカッコいい所を見せたいのは分かるけど、俺がお願いをした時だけという約束を守ってくれないと明日からは連れては行けないよ」
『すまなかった。レーが喜ぶから調子にのってしまった』
『ご主人さま。母様は悪くないのなの。レーちゃんがお願いしたのがいけないのなの……』
『レーは悪くない。ダメなものはダメと言い聞かすことは親の役目だ。それが出来なかった吾輩が悪い』
『悪いのはレーちゃんなの』
『いや、母様だ』
『いつまで続ける。チョコラが困っておるぞ』
『ご主人様……ごめんなさいなの』
『すまん』
「とにかく、殿下は誘導するのが上手いから気を付けて」
『で、これからどうやって行くつもりだ。あれだけ広くて沢山の物が有るんだぞ。一つ一つ手作業では時間が足りんだろう。素直に不死鳥に頼んだらどうだ』
ルーバが言っていることはたぶん正しい。離宮ですから天井が高かった。だからそこだけは頼むつもりでいたが、親鳥だけでなくレーちゃんにお願いをしても同じ効果があり、俺が直接やろうがやらないが同じ結果になる。さすれば親鳥とレーちゃんに頼んで王城からの依頼を終わらせ、店を普通に開けていた方が得策かもしれない。それと、王城への出入りが長く続くとそれだけ目立つ事にもなる。
ここは俺のクリーニング師としての意地を守るより得る物が大きそうだ。
「親鳥さん。王城の上空を飛ぶだけで、王城の中も復元できるのか?」
『造作もない事。残りの離宮とやらもだ。王城の上空から一度で中も外も庭すら終わらせてやるわ』
『レーちゃんも母様と一緒に飛ぶのなの~』
俺は決断をした。この親子にお願いをして王城の依頼を明日一日で終わらせる。あとは二度と王家や貴族の依頼は断る。ついでだから王家から頂いた称号も返上しよう。さすれば俺は普通の庶民に戻れるはずだ。
『お主は情に流される。思惑通りに行かんぞ……』
「ルーバ……水を差すのは止めてくれ」
だが、このルーバの言葉が正しかったことは後々思い知る事になるのだが今の俺には予想だにしなかった。冷静に考えれば王族や貴族の依頼は断るとの決意を王妃様の件の時に既に決めていた事を思い出すだろう。しかしその決意を反故にして公爵家の依頼を受け、そして三度。王城の依頼をいま受けているのだ。同じことをまた決意してもどうせまた情に流され反故にするのがオチだとルーバは思っていた。




