第百二十三話 俺ってクリーニング師だよね?
奥の宮に入るとほとんど何もなくて、正に空き家って感じだった。
殿下の話では例の事件のあと王妃は王居殿に移り、奥の宮は閉鎖をされたが、新王妃が誕生したら復活させることがもっぱらの有力説だけど、新陛下の御子様の居住にしようと言う話もあり正式には決まっていないが、いつでも使えるように建物だけは復元しておこうとなったらしい。
ってか、殿下はまだ独身だったよな……王妃だとか御子様だとか結婚話が持ち上がってるのかな??
どちらにせよいつまでも独身では居られないよな……
余計な事を考えて無いで作業をしなければ……
準備を始めた俺の横で殿下が呟いて来た。
「なにも置いてない宮だ。不死鳥殿に飛んで貰っても良いのではないか?」
『チョコラ殿よ。吾輩はいつでも飛んでやるぞ』
『母様の雄姿を見れるのなの??』
『チョコラ殿の命が有ればだがな……』
いや、なんでそこで俺を見る??
『ご主人様~ 母様のカッコいい所が見たいのなの~』
あぁ~ レーちゃんまでも……
『飛ばせてやれ。どうせお前はレーには弱いんだ』
ルーバにも突っ込まれたよ……
「そうと決まればチョコラ殿。不死鳥殿にお願いをして頂きましょうか」
またしても殿下の腹黒が出たな。親鳥に話を振ればレーちゃんに良いところを見せたい親鳥は乗ってくると踏んでのネタ振りだ。
一番いけないのはレーちゃんに弱い俺だな……
「親鳥さん……おね…がい・・しま・・す……」
『チョコラ殿。語尾が良く聞こえんかったぞ』
『お主も男らしくないな。はっきり言わんか』
「…………お願いします」
『良かろう。レーよ。良く見ておれ』
『はいなの~』
親鳥は大きく翼を広げると、これぞとばかりに存在感を示したあと、奥の宮中を自由自在に飛んでいた。飛んだ後にはキラキラと輝きが起こり、収まった時にはすべてが修復されている。
奥の宮も数分で作業が終わった……。ってか、俺はまだ何一つ自力の作業をしていない。
床の拭き掃除すらしていないのだ。
「さすがです。今日だけでも二つの宮が終わりましたね」
『吾輩が飛べばこんなもの。今日中にでも城全部が出来るわ』
「いや俺は納得できないんだけど……」
「良いではないですか。早く終わるに越したことはないですよ。テイマー殿」
「俺はテイマ―ではない」
「神獣殿を連れて歩いていればテイマーです。従魔に仕事をさせるのもテイマーの役目ですよ」
「…………クリーニング師なんだけど」
「もう~ 素直に受け入れて神獣殿達に頼ればいいのです。さて、次に行きますよ」
なんだか殿下の思惑に上手く乗せられっぱなしって感じで、どこか面白くい。
俺はクリーニング師だもん……




