第十二話 スキルアップしてました
まずは防具から綺麗にしようといた時にまた不思議な声が聞こえた。
『強化補修を獲得。開始します』
強化補修?ってなんだろう…… ちょっと気にはなったが早くしないとお客さんが待っている……。
防具はタライに作った石鹸水にしばらく漬けておく。その間に剣のクリーニングだ。
初めに鞘から剣を抜き広げて置いた布の上に置いて、鞘を石鹸水を染み込ませた布で汚れを落としながら丁寧に磨いていく。細かい細工の所は堅めの刷毛で磨いていった。水拭きと乾拭きを終えた頃にはピカピカになり傷やくすみが綺麗に無くなっていた。
剣も所々刃こぼれをしていたが、砥ぎは無理なのでせめて錆落としくらいはと庭の土に水を加えて弛めの泥を作り、その泥を研磨剤代わりに使い磨いていった。柄の部分も同様に泥の研磨剤を使い刷毛で磨く。磨き終わったところで泥を水で洗い流しで乾いた布で拭き上げ、鞘に戻せば剣は出来上がり。タライに漬けてあった防具に移る。
防具は細かい網目もあり刷毛で丁寧に磨きながら汚れを落とし、水洗いをして乾かしたら完了。
あとは軽く磨いて光沢をだしてみる。
出来上がった防具と剣を冒険者に渡すと驚かれた。
「これがあの防具か……買った時と同じ状態じゃないか……」
剣も鞘から抜いて確認しているようで「これも……刃こぼれも直っている……。砥ぎもしてくれたのか?」と聞かれたので、「ザビ落としはしたけど砥いではいないよ」と説明したけど、信じてもらえなかったよ……。
「あれだけ有った刃こぼれが無くなってるんだぞ。錆落としだけとは信じられん。今すぐにでも使える状態にしてくれてありがとう」といって銀貨5枚をくれた。
2個で銅貨10枚なんだけど……っていっても感謝の気持ちだからと置いて行ってしまった。
一個一個を丁寧にやり過ぎたのか、なかなか進まず、余り待たせてもと思い、木札に番号を書いて預かり、翌朝に返すことにした。これでお客さんを待たせることもないし、うまいっ亭で食事もしてもらえたら良いかな。
預かったのは全部で50個。順番にクリーニンクをしていき、今日の分が終わったのは夜の9時位で、お店の手伝いが出来なかったから最後の皿洗いだけはさせて貰った。
「チョコラ君ゴメンね。1日にどれだけ出来るか分からなかったから予約を受付すぎちゃったわね。これからはもっと減らすわ」
「すいません。俺がトロいから早く出来なかったみたいで……」
「良いのよ。凄く丁寧に仕上げてくれたってみんな喜んでいたわよ」
「はい。それは嬉しいです」
「今日の調子で明日も頑張ってね」
夜のお手伝いが出来なかったのに怒られるどころか労う言葉を貰ってしまった。明日はちゃんと手伝えるように頑張ろうと心に誓った。