第百十八話 王城は思った以上に広かった
王城から戻った俺は何度目かになる張り紙を用意した。今回は午前中と夕方だけの時限営業をする予定だ。とにかく日ごろお店を支えてくれている地域の人は大事にしたいからね。
あれから一週間。いよいよ今日から王城での仕事。ルーバとレーちゃんを連れて約束の12時には業者専用の門にやって来た。あえて言う事は無いかと思うがレーちゃんの親鳥も付いてきている。
そう言えば、先日は月一の約束だからとレーちゃんが神界に行っていた気がする。
門の受付に向かうと窓口で「上位の貴族方と同格の称号をお持ちなので貴族用の門を利用して下さい」と言われたが、平民の俺には敷居が高い処か近寄りたく無いのが本音。しかも俺は仕事で来ているのだから業者用の門を使うのは当然のことだと思っている。
門兵に案内されて殿下の待つ部屋に通された。これから殿下に案内されたところから作業を進めていくのだ。
「お待ちしていました。本日からよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「では早速ですが今日は城の敷地内を案内します。王城を含め8つの離宮がこの中にありますので外からだけでも一度見て置かれると良いでしょう」
「わかりました」
「では参りましょう。多分、敷地内を回るだけで今日の時間は終わってしまうと思います」
それぞれの陛下の王居以外は馬車で移動した。歩いても行けるけど時間が掛かるらしい。離宮のプライベートを守るためにもそれなりの空間は必要とかでそれぞれがかなり離れて建てられていた。
この離宮は王族の方が住まわれているが、王城で仕事をしていない人ほど離れた離宮に住んで居るそうだ。その中に一つだけ使われていない離宮があった。そこは歴代の王太子殿下が幼少期から実務補佐に就かれるまで住まわれる場所だそうで、どことなく殿下の顔が懐かしさを感じていたように見えた。
全ての離宮を見てきたが移動に時間が掛かり過ぎて本当に終業時間になってしまった。
「明日から作業をお願いしますが、すべての離宮には復元作業が入ることは伝えてあるので安心してください」
「ありがとうございます」
「今日はすべての離宮を外からだが見てもらいましたが、期限内にできそうですか?」
「はい。大丈夫です」
「それは心強い」
「しかし、城内での移動の方が心配です」
「それも私が案内しますので安心ください」
「あの……馬車よりルーバに乗せてもらった方が早いのですが……」
「それは良いですね。ルーバ殿。私も乗せてもらえませんは」
『ふん。吾輩は馬車ではないわ』
「そうですか……人二人乗せるのは重くて無理なんですね」
『誰が無理だ言った。馬車ではないと言ったまでだ』
「では、私も乗って走ることが出来るのですね」
『ふん。朝飯前だ!』
「ではよろしくお願いしますね」
はっきり断らなかったルーバが悪いね。ちゃっかり殿下の口車……じゃない話術に嵌ったようだ




