第百十四話 レーちゃんの親鳥
宰相様に断りにくい雰囲気を作られ思案に耽っていた時だった。「失礼するぞ」といって王太子殿下が入って来た。
「チョコラ殿が来ておられるときいて会いに来たが、話はもう終わったか?」
「はい。あとは王家のご友人殿のお返事待ちではありますが、王家の繁栄と王太子殿下の国王ご即位と言う門出に水を差すようなお返事を王家のご友人殿は致すまいと信じている所でございます」
「そうか。王家の友人だからな。王家の祝儀に力を貸してくれるはずだ。宰相も安心だろう」
「左様でございます」
うわっ……二人して凄いプレッシャーを掛けてくる……
もう断れないじゃん……
「わかりました。お受けいたします」
「そうか。さすがは王家の親友だ。心強いぞ。王家の親友」
「真でございます」
「…………」
「ところで、王家の親友殿」
「殿下……それ、わざと言ってますね……」
「ハハハ…… バレておったか。ところでチョコラ殿。その大きな鳥は新たな従魔か?」
さすが殿下だ。宰相様はチラッチラッと何度か見ていたのは知ってはいたけど、こうはっきりとは聞いてこなかった。
「いえ、レーちゃんの親鳥です。従魔ではありません」
「従魔でも無いのに良くここまでは入れたな」
「申し訳ありません。陛下よりご友人殿がお連れになるのは神獣様。非礼をしてはならぬと申し受けておりまして……」
えっ、陛下よりそんな通達が……だから聞くのを遠慮していたのか……でもいくら俺だからと言ってノーチェックで良いのか……??
「構わん、レーちゃんの親という事は、この鳥は不死鳥。神獣だ」
「えっ、不死鳥…… はじめて目にしました」
「私も成鳥を見るのは初めてだ。良く馬車に乗せる事が出来たな」
「いえ……飛んで付いてきました」
「そうか。そうだろうな。ルーバだけでも大きいからな。名は有るのか?」
「従魔契約はしておりませんから名は付けていません」
「なら私が付けよう」
『我はそのような者からの名は受けん』
「さすがは神獣様。言葉を発せられた」
『我も話せるぞ』
『ピー(レーちゃんもなの)』
「これは驚きです。神獣様は我々と会話が出来るんですね。これでは陛下が非礼をするなと言われるのも分かりました」
宰相さんは宰相さんで別の事で驚いているようだった。
「とにかく殿下。強引に名前を付けても無理ですよ」
ほんと、油断も隙もない。こまった殿下だ。
『おい。話は済んだか。我は腹が減って来たぞ』
ルーバさんや。時と場所を考えて言ってくれ……
「誰か。神獣殿達に食事の用意を。好き嫌い無く何でも食すからなそれなりの量を」
『不味い物は食わんぞ』
「味には気を付けろと厨房に伝えろ」
ほら殿下に余計な気を使わせた……
「いえ、もうお暇しますのでお気にならせずに」
「そうはいかん。せっかく会えたんだ。ゆっくりして行ってくれ。友人殿」
あぁ~ まだ帰れないのか…… また仕事が進まない。もうカルラさんの監視だけは避けたい……




