第百十話 ロメーロ様の過失
気分が落ち着いた時にはどこか別の場所に居た。
「ここってどこ……」
『神界だ。安心しろ』
ルーバが教えてくれた。
『チョコラ殿。ここまで来て頂いて申し訳なく思う』
「いえ、お気になされず」
『其方に願いと言うのはそこに控えている不死鳥の子のこと』
「レーちゃんがどうかしましたか?」
『実は……』
ロメーロ様の話ではこのご神木の本体は神界の木と繋がっていて、この木の特性を使い現世と神界を行き来している。またこの木は同じ命を共有していて現世側の木が傷付くと神界側の木もその力が弱くなる。
そして先日、現世側の木を回復してくれたことで神界側の木も本来の力を取り戻すことができたお礼に神界側の木に巣を作っていたロメーロ様の従属である不死鳥の子を親に黙って俺に渡したらしい。
子供がいなくなったことに気が付いた親鳥があちこち探している様子を見ていたが、さずがに勝手に人間に使わせたとは言いにくく黙ったままにしていたらしく、とうとうそれがバレてしまったらしい。
どうしてバレたかと言うと事情を知らないルーバが神界に戻った時に偶然にも親鳥から聞かれたことで我と共に現世に居る事とその経緯を話したようで事情を知った親鳥に詰め寄られたという事だった。
『それで、いちど不死鳥の子を神界に戻して欲しいと言うのが妾の願いじゃ』
まさか、レーちゃんを返してほしいとの願いとは思っていなかったせいか返事に窮してしまった。
『そこに控えているのが親鳥だ。不死鳥の子よ。そなたの親じゃ。どうじゃ戻って来ぬか』
『レーちゃんは戻らないなの。ご主人様と一緒に居るのなの』
『レーと名付けられたのね。可愛い名を付けて貰って良かったわね』
『そうなの。可愛いのなの』
『ロメーロ様。神獣が人間に名を与えられたと言う事はすでに従魔の契約が成立していると言うこと。そしてその契約が消滅するときはどちらかが死んだときだけ。今ここでこの人間を殺しても良いか』
『それはダメなの! ご主人様を殺したら二度と神界には来ないなの!!』
『それでは我も現世の参り我が子の傍に居る事にする』
「あっ……それはちょっと……」
『なに? 我が居ては迷惑と申すか!』
困った……これ以上神獣がいたら騒ぎが大きくなる。それだけは避けたい。
かと言ってレーちゃんを返すのも寂しくなるし……
俺はロメーロ様に何とかして欲しいと言う視線を送ってみたが、何気に逸らされた。
まさか、自分だけ蚊帳の外に逃げるつもりか?? そうはさせるか。
「ロメーロ様。聞いたところ不死鳥はロメーロ様の従属なのでしょ。主人としてここはその指導力を発揮して頂きたいと思いますが……」
『我は勝手に我が子を取り上げるような人でなし……神でなしの従属になった覚えはないそ』
『このようにかなりのご立腹じゃ。今の妾には無理じゃ』
ロメーロ様……そんな簡単にサジを投げ出さないでくださいよ……




