第十話 ミリアさんが復帰します
俺がうまいっ亭で働かせて貰ってからもう直ぐ3か月になろうとした時、昼休みの時間にミリアさんがやって来た。
当然俺は初めての顔合わせだったけど、ミハルさんにとても似ていたので直ぐに分かった。
「あら、あなたがチョコラ君ね。ミハルからは話は聞いているけど私の代わりに頑張ってくれてありがとう」
「いえ……こちらこそお役に立てたかどうか分からなくて……」
「ほんと謙虚な方ね。こんなにお店が綺麗になってるんだもん。あなたのお蔭よ。自信持ちなさい」
「……はい。ありがとうございます」
俺にも挨拶をしてくれた後、ミリアさんがタージさんとミハルさんに本題を話し始めた。
「もうそろそろ約束の3か月で復帰したいんだけど、ちょっと困った事が出来て、昼だけの復帰にして欲しいのよ」
「それは構わないけど、どうしたんだ?」
「旦那のお母さんが怪我しちゃってね、この子を見てもらえ無くなったちゃったのよ」
「それは大変だな。昼間は良いのか?」
「えぇ~ 昼間はベビーシッターを頼めたのよ。けど、夜は無理みたいなの」
「分かったわ。昼だけでも助かるわ。夜はチョコラ君にお願いするから気にしないで。良いわよね」
突然俺に振られて思わず「はい」と返事をしてしまったけど、クリーニングの作業場を貸してもらえるからお礼の為にも夜のお手伝いが出来たら少しはお返しが出来るかなって思った。
そしてミリアさんの復帰の日が1週間後と決めたからミハルさんは帰って行った。
「姉さんの復帰が決まったからチョコラ君の準備も急がないとね」
「そうだな。何がいるか分からないけど、店にあるのは何でも使って良いからな。遠慮はするな」
と、ミハルさんもタージさんも優しいことを言ってくれた。
取り敢えず、バケツとタライと雑巾と石鹸が有れば大丈夫かな。あとは乾かす場所。
予約は多く入っていると聞いてるけど、何を持ってくるのかまでは聞いていないらしく、俺にも想像がつかないから準備と言っても普通に掃除道具しか浮かんでこなかった。
いよいよ明日からミリアさんが戻って来る。昼の営業だけだけど俺もその間にクリーニングの営業が始まる。不安と期待が入交落ち着かない。
「そんなに明日が待ち遠しいのかしら?」
「そりゃそうだろう。俺たちも開店前はそわそわしてただろ」
「そうね。昔を思い出すわ」
って、二人にからかわれちゃったから、ちゃんと店の仕事をしないと迷惑をかけてしまうからと気を引きし締めて仕事したけど、どうしても明日からの事を考えてしまうのだった。




