3 スーパー・バッド・ガール
「おお、これはこれは暴君どの。やつれていますなあ」
しろひげの老人に、「そうかな?」とこたえる。
「そうですな。身体とココロとでは勝手が違うものですじゃ。身体は元気なようで、なにより……ところで、如何様でワシの家に? これから、どこかに行かれるのですかな?」
返事に困る。
なにがしたくて、城を出てきたのかわからない。
何を目的として、今後歩く方向を決めていけばいいのかさえも、わからない。
返事に困っていると、おもむろに、ヴァルタとしろひげの老人との間に、家主の男が割りこんできた。
「おやじ、ボケたこと言わないでくれよ。暴君は死んだんだぞ? なんでこんな所にいるとおもうんだ」
「ふぁ? いや、しかし。たしかにこの方は暴君どのじゃわい」
「馬鹿だなあ。暴君は立派な青年だっただろ? たしかに雰囲気はそっくりだけど、このコはどうみても少年だ。それに、ほら、笑顔がまったくない」
「青年……? いや、わしが知っておるのとはちと違うようじゃのう」
「はあ。痴呆がはじまったよ」
ふたりの間で口論がはじまった。
いくら話しかけても、ふたりの押し問答が返ってくるのみ。
呆れて距離をとると、あたりをキョロキョロしてみた。
近くの男の子に話しかけてみる。
やあ、少年。キミの家族はにぎやかだね!
「ああ? オレは♀だぞ、ぶっころされたいのか」
いや、どうみても♂だろう?
「しつれいだな、お前。これを見てもまだ♂だとおもうのか?」
男の子は服をまくった。
はだけた胸元に、わずかにだが、ふくらみをみつける。
「なんだよ、マボロシでも見たような目をしやがって」
気まずい空気になった。
彼女の視線から逃げるように、別の方向を向いて歩き出す。
しかし、彼女はついてきた。
しばらくグルグル室内を歩き回ったが、ずっと彼女はついてくる。
このままでは埒が明かないので、試しに話しかけてみた。
「♀にとってもっとも大切なところを見せたんだ。お前を婿にして墓場まで持っていってやる」
いやです
「なあにが、イヤです、だ。もう、すでに、お前はオレの婿なんだよ。以上だ」
キャミスターが仲間に加わった。