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おふださがし

作者: M川

 御札。御札の話。

 たまに、ホテルの部屋なんかに、貼ってあることがあるらしいですね。

 私の学生の頃からの友人、K君の話。

 K君が就職した年の夏休み、始めて一人旅をしたとき、彼が泊まる予定の宿について、事前にネットで調べておいたらしいのですけど、どうも「出るらしい」という噂が少なからずあったみたいで。

 K君は良い歳してそういう、心霊というか、呪いというか、まあそういったオカルト的なものに弱いので、結構本気でビビっていたようですね。

 ほんと、情けなくなるほどの小心者で、ホラーものの映画なんかみた日は、怖いからトイレにもいけないしシャワーも浴びられないといった体たらくで。

 しかしながらすでに予約は済んでいる。経済的に余裕があるわけでもない彼にとっては、キャンセル料だって安くない。結局、その宿に泊まることにしたらしいです。

 それでもやっぱり怖いものは怖いので、女将さんに訊きました。

 「そんなのただの噂ですよね」と。

 もちろん、噂を否定してもらいたい一心からの質問でした。

 さて、果たして女将さんは、その質問に対して頷いたそうです。つまり、そんなものは根も葉もない噂に過ぎないですよ、ということ。

 でも、K君が言うには、その頷き方に微妙な躊躇いがあったようにも感じられたらしくて。

 だから、彼は寝る前に部屋中を探し回ったそうなのです。

 御札を。

 御札を探したのです。

 まあ、つまりこういうことです。

 御札が有るなら、過去にその部屋で「出た」ことがある。

 御札が一枚もみつからなければ、大丈夫。「出た」ことはない。

 そのように考えたそうです。

 だから、ひたすらに、ソレが見つからないことを願いながら祈りながら探し続けたそうで。

 正直なところ、私なんかは、そんなに見つけたくないものなら探さなきゃ良いのに、と思うのですが、どうもそういうものでもないらしいですね。

 一度気になってしまうと、徹底して探さないと気が済まないそうです。

 押入れ、トイレ、風呂場、洗面所、洗面所の鏡の裏、テレビや冷蔵庫の裏。

 なんやかんやで10分ほど探してみたものの、結局のところ、御札は一枚も見つからなかったのです。

 K君としてはホッと一安心といったところです。

 さあてこれでゆっくり眠れるぞ、と、K君が布団の上に仰向けに寝転がると、

 視界に入る彼の真上の天井には無数の御札御札御札御札御札御札御札御札が貼られていて貼られていて貼られていて御札御札御札御札御札御札御札御札で埋め尽くされて埋め尽くされて埋め尽くされていて。

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[一言] 最後がよかったです。やられました。
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