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八文字科学技術製作所   作者: ゲーカー
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第六章

六章


 特に目覚ましを掛けていた訳ではなかったのだが、自然と目が覚めた時刻は朝の十時だった。しばらく柔軟体操をしながらテレビを見て、着替えを済ませジョギングに出掛けた。

 目標時間を徐々に伸ばして行き、今日の目標二時間のジョギングを終え、シャワーを浴びた賢治は、凍らせていたご飯をレンジで温め納豆と卵と醤油をかけた質素な食事を済ませ、床に後ろ手をつきまどろんでいた。

「まだ一三時か……しかし暇だなぁ。今までと同じ生活をしているはずなのに、なんでこうも気持ちが違うんだろ。環境の変化って奴なのかな……」

窓の外の曇り空を眺めながら、取りとめのない思考を巡らせていた時に、ベッドの上に置いてあった携帯電話が鳴り出した。

「誰だろ? 佐々木かな……だったらなんか気分良いな!」

手に取って表示を見ると、番号だけで名前が出ていない。しばらく考えてみたが、なかなか鳴り止まないので通話ボタンを押して耳に近付けようとした。

「こん、にち、は――――――――――!」

近付けようとしていた携帯電話を耳から遠ざけて、眉間にしわを寄せた賢治は、「誰だこれ?」と思考を巡らせて見た物の、これと言った思い当たる節がなく仕方なくもう一度耳に近付け、「……もしもし?」と猜疑的な声を出した。

「モモで――す! ケンちゃん何してるんですか?」

「あ、モモちゃんか。別に何もしてないよ」

「何もしてないなら、遊びに行っても良いですか?」

「え、ま、まあ、別に構わないけど……」

「わ――い! じゃあ、すぐに行きま――す!」

すぐに通話は途切れた。

「別に散らかってないし、モモちゃんだし、このままで――」

「ケンちゃん、モモ来ました――!」

窓の外に、ふわふわと浮かぶ桃子がいた。

「は、はやっ!」

「お邪魔してもいいですか?」

言っている事は礼儀正しいのだが、言っている場所に問題がある。

「ど、どうぞ……」

ふわりと窓から入って来た桃子は、すぐに私服に戻ったが足には靴を履いていなかった。どうやら、最初から侵入場所は決めていたようだ。

 大きな瞳を輝かせながら、借りてきた猫のように部屋中を嗅ぎまわっている。特に教育上悪い物は置いていないので何も言わずに放っておく事にした。

どうやら家宅捜査は終わりを告げたようで、興味は賢治との遊びに向けられたようだ。

「ケンちゃん、何して遊びましょうか?」

「遊ぶって言っても、ゲームとか何もないんだよね……」

「じゃあ、ケンちゃんの昔話しを聞かせて下さい!」

好奇心に充ち溢れた瞳を輝かせて賢治を見ているが、取り立てて誇れる話しや面白い話し等ありはしない。何を話そうかと思案していると、桃子からの質問が始まった。

「ケンちゃんは何処の出身ですか?」

その首を傾げる仕草に、若いながらも父性本能をくすぐられてしまう。賢治は、もう三年も里帰りしていない実家を思い浮かべた。

「俺は福岡県の生まれだよ。有名なのは、豚骨ラーメンと明太子かな」

「モモ、知ってますよ! 『やさまか』と言うお祭りがあるんですよね!」

「いや、『やまかさ』だね……」

「でしたぁ――――――!」

「俺は人混みがあんまり好きじゃないから、一度だけしか行った事ないんだけどね。あと学問の神様で有名な大宰府天満宮があるね」

「へぇ、楽しそうですね。モモも行って見たいです! ケンちゃん、好きな人はいるんですか?」

時速六十キロで走行中に、サイドブレーキを思いきり引かれた気分だった。

「す、好きな人?」

 ――ま、まぁ、強いて言うならば愛霧ちゃんだけど、向こうの気持ちありきな気もしないでもないしな……そうだ、ちょっとジャブでも出してみるか。

「ねぇ、モモちゃん、部署のみんなは好きな人とかいるのかな?」

「えっとぉ、マヤちゃんと波紋ちゃんはいないと思います。愛霧ちゃんも、ずっといなかったと思うんですけど、最近いるような感じがするんですよね。女の感ってやつです。あ、モモはケンちゃんが大好きですよ!」

とてもラブには聞こえないライク的な言い方だったので、賢治はその言葉に笑みを返す。いよいよ賢治は、あれだけ自重してきたパンドラの箱を開けようとしていた。

「愛霧ちゃんの好きな人ってどんな男性なんだろうね?」

「あの……ここだけの話しですよ。約束出来ますか?」

賢治は大きく頷き、ごくりと息を飲んだ。

ここで自分の名前が出た時に、果たしてどう言う行動をとるのが正解なのだろうか、やはり聞いてしまったからには自分から告白するのが男の役目なのではないか、などと先の展開を考えていた。

「愛霧ちゃんは、昔から綺麗な女の子が好きなんですよ。だから多分……波紋ちゃんだと思います。女の感は当たりますからね」

 ……は、はぁあああ? 桂木チーフ? 

もう一度聞き直そうかとも思ったが、耳も思考も正常だと言う事は認識している。桃子の表情を見る限り、とても嘘を言っているとは思えないし、嘘をつくような子でもない。まるで死ぬ間際のように、賢治の脳裏に愛霧との今までのやり取りが走馬灯のように浮かぶ。

二人切りでの特訓中の会話を思い出す。

『本当の自分を知られたら嫌われるだろうし、とても理解なんてしてくれるはずがない』

賢治が波紋に誘われた時の表情と態度。

昨日、帰宅した時に賢治から内容を聞いて、疑念が晴れたような表情を浮かべた愛霧、そして賢治の誘いに迷うことなく走り去って行った後姿。

その全てが桃子から聞いた話と見事に合致する。

「へ、へぇ――! そ、そうなんだ。桂木チーフ綺麗だもんね!」

「ケンちゃん、なんか顔が青いですけど大丈夫ですか?」

心配そうに賢治の顔を覗く桃子が、なんだかとても愛おしくて抱き締めてしまいたくなった。が、当然止めておいた。

 別に振られた訳ではない、と無理やり自分に言い聞かせ、それから二時間ほど色々な事を語り合い、とても満足そうな表情を浮かべ桃子は窓から帰って行った。

「いやぁ――! あぶなっ! マジでやばかった。勘違いしたまま俺から告白なんてしてたら、そのショックは計り知れないものになってたはずだ……」

桃子に対し心の中で手を合わせ感謝して日課のジョギングに出掛け、戻るとシャワーを浴びて食事をし、目覚まし時計をセットして傷心な賢治は就寝についたのであった。


「おはよう、ケンジ君!」

賢治の気持ちをまるで分かっていない愛霧の笑顔が、今日はやけに残酷に映る。

「お、おはよ――!」

上ずった奇妙な声を出してしまい、愛霧は心配そうに近づいてきて左手を自分の額に当てて右手を賢治の額に当てた。

「……熱はないみたいね。あんまり無理しちゃ駄目だよ」

――その優しい笑顔が、その心遣いが、その全てが、今の俺には毒なのです。はい……。

 笑顔に見えるのか不安だったが、なんとか笑顔を浮かべた賢治はこくりと頷いた。愛霧が席に着くと同時に、空いたドアから波紋が顔を出した。

「おはよう、斎藤ちゃん土曜日ありがとうね。またデートしようね」

と、賢治にウインクを投げかけ席についた。その瞬間、愛霧の表情が硬くなったのに気付いた賢治は、わざと面倒臭そうな表情を作る。

「単なる荷物持ちでしょ。別にデートじゃないじゃないですか」

「ま、そう言う解釈も出来なくはないわね」

バッグから資料を取り出しながら賢治に顔を向け口角を上げて微笑んだ時に、桃子が入り口から顔を出した。

「おはようございま――す! あ、ケンちゃん、昨日は――」

桃子が話し出した時に、赤いライトが室内を照らし警報が鳴り響き、中央の機械が動き出して上部に映像を映し出した。

「な、なに、この生物は……次元は一次元で、名称の部分が『???』になってる」

愛霧は、映し出されている生物を凝視して、急いでキィボードを叩き出した。

一次元でも、出現した事がない生物もまだいるんだな、体はデス・ワームだけど顔が違うし、何より進化もしていないのに羽が生えてる。この生物は強いのかな、と賢治が何気に映像を見ていると、ふと発生現場に目が止まった。

賢治の顔から血の気が一気に引いた。急に部署の入り口が開き、表情を硬くした舞夜が入ってきて動きを止めたまま映し出された映像を凝視している。

「な、なんなのこの生物は……」

「あ、あの、早く行きましょう。早く行って処断しないと……」

賢治はあまりの動揺に、言葉を続ける事さえままならなかった。

「ケンジ、この発生現場って……」

舞夜の視線が賢治に向けられた。それにより、みんなの視線が一斉に集まる。今までの戦いで予想しなかった訳ではないのだが、なにか対岸の火事のような心境だったのかも知れない。だが、現実に起こってしまった。

「お、俺の実家のすぐ近所です……早く、早く出動しましょう!」

「愛霧、この生物のデータはないの!」

「ないわ……どれだけ調べても出てこないの……」

「仕方ないわ、取り敢えず現地に向かうわよ!」

舞夜の掛け声と共に、賢治達は現地に向かい飛び立った。五分ほどで現地に着くと、その生物は見上げるほどの大木上部の枝に尾の部分を巻き付けて、大きな羽で体を覆うようにぶら下がっていた。その顔はコウモリのように見えるが、人間のようにも見える。こちらの姿を認識した生物は何事かを喋ったように見えた。

「波紋、なんて言ってるの……」

舞夜の言葉に、波紋の口元に視線が集まる。

「はっきりとは認識出来ないけど、我らは新しい力を授かった。この次元も終焉を迎える……」

「どう言う事なの……波紋、詳しく聞けそう?」

舞夜の声に、波紋は頷き交信を始めたようだ。その数秒後、波紋の表情から感情がそげ落ちたように見えた。舞夜は、放心状態の波紋の肩を掴み、「波紋、あいつはなんて言ってるの!」と、声を荒げる。

「……一次元とゼロ次元の隔たりが消滅し、一次元はゼロ次元の支配下に置かれた。全ての隔たりが消滅し、この地球はゼロ次元の支配下に置かれる事になる……攻撃が来るわ! みんな一気に上昇して!」

波紋の声と同時に五人は上昇を始め、街並みが見えなくなるほどの上空に到達した。それを追うように敵が上昇してくる。そのスピードは、この前見た進化したデス・ワームの比ではなく、羽ばたいていると言うよりも羽を水平にしたまま上昇気流に乗っているように見える。

「マヤ、敵のゼロパーツは両翼の付け根だわ! 同時に破壊しないと再生してしまう。データがないから武器が分からないけど、ゼロ次元の力を授かったって言ってたから、新しく開発されたゼロ次元用の武器を使ってみるしかないわ。サスケちゃん、マヤとケンジ君に十字の刃を送って!」

二人の右手の柄の先に、煌く水滴の付いた刀身が送られてきた。一見なんの変哲もない日本刀に見えたのだが、良く見ると刀の表面に小さな十字架が隙間なく彫られている。

「ケンジ、データがないから、しっかり敵の動きを見て攻撃を避けなさいよ!」

「了解です!」

二人は刀を構えて敵に向かい急下降を開始。直後に、敵の口から紫色の液体が噴射された。避けようと体を反転させかけた時に気付いた。その液体は二人に向けて噴射されたのではなく、上空にいる三人に向けられた物だった。賢治は、振り向きざまに叫び声を上げたのだが、すでに液体は三人の目前に迫っていた。

しかし、一メートルほどの手前で、その紫色の液体は『ジュワ』っと音を立て霧散した。良く見ると、三人の周りに煌く水滴で覆われた透明な壁のような物が見えた。横にいる舞夜が、目前に迫って来ている敵を見据えながら、

「三人に被害が行かないように防御壁も開発してたのよ。どうやら効力があったようね。最悪は、モモの移動の粉で避けるように愛霧に指示は出してたんだけどね。ケンジ、早い事処断するわよ! あんたは右手に飛んで!」

その声に頷き、賢治は垂直に右へ飛んだ。舞夜は、逆方向の左手に飛んでいる。敵は一度左右を確認して、賢治に照準を絞り向きを変えて向かってきた。

「クソ、俺の方が弱いと思ってるのか? まぁ、外れちゃいないけど……」

賢治は十字刀を構え迎撃態勢を整えた。その時に、『ケンジ君、敵の尾の部分が変色してる! 何か攻撃してくる可能性があるわ!』と愛霧の声が脳に響いた。

 こちらからでは、羽ばたく大きな両翼に視界が遮断されていて、尾の部分までは見る事が出来なかったが、「了解です!」と力強く答え、見えないその部分に照準を合わせた。

 ちょうど敵が目前に迫った時、鋭く尖った牙を剥き出し攻撃を仕掛けてきた。上空に交わそうかと考えたが、愛霧の言葉を思い出し後方に飛び攻撃を交わそうとした刹那、敵の羽ばたく両翼の隙間から、サソリの尾のような鉤爪が胴体と共に飛んできた。

「あ、あぶな、上に飛んでたらヤバかったぞ……」

と、声を発した時に敵が顔を歪め絶叫を上げた。

良く見ると、敵の胴体の下部に十字架の形をした一本の槍が突き刺さっている。その敵のやや下にあった白い雲の中から人影が現れた。

「それは、挨拶みたいなもんや。大した敵でもなさそうやし、今日はあんたらに任すわ。亀裂は塞いだったさかい、あんじょう頑張ってや!」

「フン、余計な事しやがって。ケンジ、さっさと終わらすわよ! 私が敵を引き付けて上昇するから、あんたは下から右翼を狙いなさい!」

そう告げると、舞夜は敵の周りで旋回を始めた。そのスピードは残像を残しながら上がり続け、何十人もいる舞夜に敵はぐるりと囲まれているように見える。

突如舞夜は上昇を開始した。数秒遅れで、それに気付いた敵は上昇を始める。少し早いかとも思ったが、それに合わせ賢治も上昇。舞夜の姿が視界から消失した直後、一筋の光が振り降りてきた。

「ケンジ! 遅れるんじゃないわよ!」

敵は攻撃の態勢を取り、紫色の液体と共に尾の部分を変色させ上空の舞夜を狙ったのだが、下降スピードを落とすどころか更に速度を増して、その攻撃を旋回するように避けながら十字刀を振りかぶった。賢治は念の為に早めに上昇を開始していたので、その刀の振り上げになんとか間に合わせる事が出来た。

同時に振り下ろされた十字刀は両翼の根元を切断。いつもとは違う叫び声を上げながら、敵は消失した。

「ごくろうさんでした。あんたらが心配やったから――」

その、シンディの言葉を遮り波紋が声を荒げた。

「くっ、すぐに東京に戻らないと大変な事が起きてしまうわ!」

その表情が、一時の猶予さえもない事を現している。すぐに頭の中で警報が鳴り響いた。

『ゼロ次元の亀裂発生、場所は渋谷駅周辺!』

「みんな、急ぐわよ!」

舞夜に続いて賢治を含めた四人が飛び立った直後、「クリス、なんや今回はめっちゃ楽しめそうやん!」と、後方で声が聞こえた。


渋谷駅周辺には体長五十センチほどの、おびただしい数の奇妙な形をしたハエが群れをなして飛行していた。

地上には、ゆうに百は超えるであろう人々が倒れている。そこら中で、救急隊員が防護服のようなものを被り救助にあたっている姿が見えたが、その周りには無数のハエが群がり手で払っている物の、数分後には救急隊員までもが倒れ込んでいる。

次々と救急車が現れるのだが、車から降りてしばらくすると同じように倒れ込んでしまう。至る所に設置されているスピーカーからは、緊急避難警報が発令されていて、事の不気味さに輪をかけて得体の知れない不安が空気を染めていた。

その光景を見た舞夜は凍り付いたような表情を浮かべ口を開いた。

「な、なんなの……これは……」

「旧約聖書に登場する、ベルゼブブの操るハエの大群ですわ……」

クリスが静かにそう告げた。続けて、シンディが賢治達五人に向けて人差し指を突き出し、反論を許さない空気を作り出した。

「あんたら、さっきは任したったんやし、今度はうちらの番やで!」

「任すのは構わないけど、予断が許されない状況なのは理解してるんでしょうね?」

舞夜は硬い口調でそう告げ、シンディをじっと見つめた。

「そんなん、この状況みたらわかるがな。クリス、取り敢えずこのハエの大群処断しよか?」

祈りを捧げながら、閉じていた瞼をゆっくりと開いたクリスは、

「……処断は出来ません」と、静かに告げた。

「ワット? どういうこちゃ?」

「あのハエ達にはゼロパーツがないのです。処断してもすぐに再生してしまう……」

その声に、一番に反応したのは愛霧だった。

「確かに……ゼロパーツが見当たらないわ……」

「ほな、どうやって……やばっ、きよったで! なんやようわからんけど、あんたらは手を出したらあかんで!」

地上近くにいたハエの大群が、上空に向かって飛翔を始めていた。その羽音は耳を塞ぎたくなるほどの大音量で、体に見合わない大きな眼球がぎょろぎょろと動いていて気味が悪い。

「フン、ヤバくなったら助けてあげるわ。みんな、上空で文字通り高みの見物と行きましょうか?」

舞夜は不満げに鼻を鳴らしたが、結果的にハエの群れが地上から姿を消す事になったので、シンディの言葉に応じたようだ。

「シンディ、主は、ベルゼブブが現れるまでは、このハエ達のお相手をして差し上げなさいと申しておられます」

「なんやけったいな話やなぁ、はよ現れてくれる事をねごて、このうるさいハエちゃん達のお相手しましょか!」

シンディの左手に、十字架の形をした槍が現れた。その槍にも、十字刀や防御壁と同じように、透明で煌く水滴が滴っている。頭上でその長い槍を振り回して脇に挟み、攻撃の態勢を取ったのだが、目前に迫る圧倒的なその数にやる気を削がれたような表情を見せた。

「う~ん……やっぱクリス頼むわ。数が多すぎる……」

「わかりました、宿命を背負いし異次元の住人よ、イエスの名のもとに、その罪と罰をあたえん。レイン・オブ・グリーフ!」

十字架を天にかざすと、晴れ渡っている上空の一部の雲から、ハエの大群に向かって煌く水滴が激しい豪雨のように流れ落ち出した。

「ピギ、ピ、ギ、ギギ、グギ」と声を発して、水滴に当たったハエ達は溶けて形をなくして行った。その一度の攻撃で全てのハエは姿を消失。シンディは、笑みを浮かべて指を鳴らした。

「もしかして、ボス登場ちゃうか!」

「いいえ、まだです」

クリスの声と同時に、地上から小さな羽音が聞こえて来た。その羽音は次第に大きなざわめきのように変化していき、地上に黒い塊の渦が出来上がった。その光景を見たシンディは、落胆の表情を浮かべている。

「これ……さっきよりも多いんちゃうの? しゃあないか……今度はうちがやるわ」

仕方なく構えた槍を、前方に突き出して自分の体を軸に上下左右に回転させた。その回転速度は次第に早くなり、シンディの体を槍の残像が包みこんで一つの煌く球体が出来上がった。

「めっちゃだるいけど……ほな、いくわ」

そう言い残し、迫り来るハエの大群目掛けて飛び込んで行った。シンディの突撃により、黒い渦は形を崩して行き、ハエから上がる悲鳴にも似た声が絶え間なく聞こえてくる。ものの一分ほどで、黒い渦は姿を消してしまった。

「あ――しんど……ゴラァ、花王のバブかベルゼブブか知らんけど、覗き見しとらんと姿現わさんかい!」

 辺りはしんと静まり返っている。またも同じように地上から小さな羽音が聞こえてきた。その羽音は大きくなり、地上に黒い塊の渦が出来上がった。しかし、良く見ると渦ではあるのだが、今度は丸い球体のように渦を巻いている。その渦が上空に舞い上がったのを見て、シンディはため息と共に肩を落とした。

「いつまで、同じ事やらすねん……」

「シンディ、どうやらハエの王がお見えになったようです」

クリスがそう言うと、黒い渦が少しずつ下がって行き、白髪を後ろに流し漆黒の長衣(ローブ)を身に纏い口髭を生やした初老の男性が現れた。その足元にはハエの大群で出来上がった漆黒の絨毯が敷き詰められている。それを見たシンディは、驚きの表情と共に言った。

「に、人間かいな?」

「我が、愚かな人間だと?」

漆黒の長衣を纏った男は、胸に手を当て視線をシンディに向けそう聞いた。その問い掛けに嘲笑を浮かべたシンディに、一瞬だけ光が走ったような気がした。

「仮にやで、街頭アンケートで千人に聞いたとしてや、あんたの写真見て誰もハエやとは思わへんや……グ……ウォ……ガハ……」

シンディが、右腕を抑えて呻き声を上げた直後、クリスが十字架を天にかざした。

「主よ、シンディに、浄化の矢をお与えください!」

異様な静寂の中、響き渡る絶叫。

クリスの放った矢は、シンディの右腕を肩口から切断していた。ふわふわと浮いていたシンディの右腕が急に膨張を始め、破裂と同時に大量の小バエが飛び出してきた。舞夜を除き、賢治を含めた四人がその異常な光景に息を飲んだ。

光の矢により切断されたシンディの肩口は、発光体のような物が被さっていて、一滴の血も流れ落ちていない。

「フゥ、フゥ……クリス、助かったわ……このクソボケがぁ!」

「宿命を背負いし異次元の住人よ、イエスの名のもとに、その罪と罰をあたえん。グリーフ・オブ・クロス!」 

天空から現れた十字架の棺は、すぐにベルゼブブの体を閉じ込めた。しかし、その表情には危機感どころか余裕の笑みすら浮かべている。

「よっしゃ、この腐れハエ爺が、死にさらせぇええええええええ!」

シンディが、左手の槍を投げかけたその瞬間、ベルゼブブが漆黒の吐息を吐いた。

鮮烈な破裂音と共に十字架の棺は粉々に砕け散り、投げかけた槍を止めたシンディはその光景に唖然として息を飲んだ。

「な、なんでなん……クリスの棺がこんな簡単に……」

その圧倒的な力に言葉を発する者はいなかったが、舞夜がその沈黙を破り言葉を発した。

「愛霧、ベルゼブブのゼロパーツは何処にあるの……」

「む、無理だよ、マヤ!」

「やらなきゃ、どうせやられるんだからさ……一撃くらいはお見舞いしたいじゃん」

その決意が表情に現れている。その声を聞いたシンディは青ざめた顔で声を張り上げた。

「アホかボケェ! 手出しすんなって、さっき言うたやろ! この糞バエ爺はうちの獲物なんじゃ――――――――――――!」

「シンディ、ベルゼブブのゼロパーツは人間と同じ心臓の位置です。主よ、わたくし達二人をお守り下さい……」

「クリス、あいつの動きをなんとか封じてくれへんか」

シンディのその言葉に、こくりと頷いたクリスは十字架を強く握り締めた。

「宿命を背負いし異次元の住人よ、イエスの名のもとに、その罪と罰をあたえん。ギガ・マイクロ・バースト!」

天にかざされた十字架が光り、ベルゼブブの頭上に暗灰色の積乱雲が現れた。

「黙って聞いておったが、我に対する非礼の数々、その代償は死により償うしかなかろう……テラ・ストーム!」

突如、晴れ渡っていた空が漆黒の雲で埋め尽くされた。クリスが呼んだ積乱雲さえも飲み込んでいる。直後、津波のような水壁が空から降り下ろされた。瞬時に舞夜が叫ぶ。

「サスケ、防御壁でみんなを守って!」

間一髪とはこの事だったのか、と言うタイミングで、その防御壁により水圧に潰されずに済んだ。しかし地上の建物、いや渋谷の街全体がその水圧で押し潰され無残な廃墟と化していた。

「誰が助けてくれって言うたんや、余計な事しくさってからに……」

シンディは、聞こえるか聞こえないかの小声でそう呟いた。

「あんたを守ったんじゃないわよ。クリスを守ったの! あんたはついでよ」

舞夜の発言に、「なに、ちょうしのっとんねん!」と、振り返ったシンディは、隣で目を閉じ十字架を握り締め震えているクリスに気付いた。そっと、シンディが肩に手を触れただけで、クリスはびくりと体を揺らす。

「ク、クリス……」

「主は……主は、私達をお見捨てになられたのですか……」

消え入るようなクリスの声。その光景を見ていたベルゼブブは、長く伸びた口髭をゆっくりと撫で付け高らかに笑い声を上げた。

「愚かなる人間どもよ、我との圧倒的な力の差にようやく気付きおったか」

「なにぬかしとん――」

「シンディ、あんたは黙ってなさい。ベルゼブブ、望みはなんなの?」

あれほど、圧倒的な力の差を見せ付けられたと言うのに、舞夜は震える事もなく冷静に話しを始めた。

「小娘如きが、我に望みを問うか。ならば、その度胸に免じて享受しても良かろう。元よりこの地球は我らが漆黒の世界だった。それを、惑星からきた者が制圧し次元と言う名の隔たりを作りおった。しかし、時の経過と共にその強度にも変化が現れたのだ」

「で、地球を自分達の世界に戻すって事?」

「それは、当たり前の事だ。我らの真の目的は、銀河系の制圧である」

カッと目を見開いて、残酷な微笑みを浮かべている。その目は、白目と黒目が人間とは逆で、戦慄を覚えるほどの異様な光を放っていた。

「ねぇ、ベルゼブブ。あなたにお願いがあるの……」

全ての視線が舞夜に集中した。ベルゼブブは薄ら笑いを浮かべている。

「ほう、我に願いとはなんだね。小娘、最後の発言を許そう」

「実はね、私達はこれまでずっと地球の為に異次元の生物と戦ってきたの。でも、あなたの圧倒的な力の前には平伏すしかないじゃない。そうなると、なんだか今まで地球の為に戦ってきた事がバカらしく思えてきてね。最後に、この手で地球の一部をぶっ壊してやりたくなったの。それもあなたの圧倒的な力でね。それだけのスキルがあればどれ程の事が出来るのか、死ぬ前に試してみたいのよ……駄目かしら?」

無邪気な笑みを浮かべながら、舞夜はとんでもない事を言っている。

「ちょ、ちょっと……」

口を挟もうとした賢治を、手に持った十字刀でいきなり切り付けた。切られた箇所からは薄らと血が滲んでいる。

「あんたは引っ込んでなさいよ。地球ぶっ壊す前に、あんたから壊してあげようか?」

まるで人が変わってしまったかのような残酷な笑みを浮かべている、舞夜。その表情を見たベルゼブブは高らかに笑い声を上げた。

「おもしろい。悪魔の私に、命と引き換えに望みを申すか。このような余興は嫌いではない。その契約受けてしんぜよう」

そう言い放つと、漆黒の長衣で全身を包み込み、黒い靄に姿を変えたベルゼブブは舞夜の全身を覆っていった。細い手足や大きくて綺麗な瞳も、彼女が彼女である事実の全てが、漆黒の靄に浸食されていく。その異様な光景を、全員がなす術もなくただ見つめていた。

不気味な黒い光が全身から湧き上がり、舞夜の全身が小刻みに痙攣を起こし始め、髪は逆立ち激しく揺れ動き黒目と白目が徐々に入れ変わっていっている。

その瞳の内部が完全に入れ替わった時に、激しさを増していた痙攣がピタリと治まり、その口からはベルゼブブと舞夜の声が交互に発せられた。

『どうだね、我の力を手に入れた気分は?』

「……えぇ、最高の気分だわ」

『では、自らの命と引き換えにしたこの圧倒的な力をその手で使うが良い』

「残念だけど、そんな気はさらさらないのよね」

『……それは、どう言う意味だ!』

「何百年も生きてるから脳みそ腐ってきてんじゃないの? あんたを閉じ込める為の罠にきまってんじゃん?」

『グ、グガ、何故だ! この娘の体から出る事ができ出来ぬ!』

「あんたが体内に侵入した瞬間に、聖水の粉を全身に振りかけていたのよ」

『この小娘が我を愚弄する気か!』

「マヤ、あんた自分の体犠牲にしてベルゼブブを処断する気なんか!」

シンディが残っている左手で、舞夜の腕を掴んだ。

「こうするしかないじゃん。これからも大変だと思うけど、あんた達に地球の未来を託すわ。ケンジ、あんたがここを十字刀で貫いて。これが私からあんたへの、最初で最後のお願いだから……」

舞夜は、ベルゼブブのゼロパーツがある心臓の部分を拳で軽く叩いた。

「そ、そ、そんな、そんな事が、出来るわけないじゃないですか!」

賢治は泣いていた。涙の量が多すぎて、舞夜がぼやけてしまう。波紋も愛霧も桃子もシンディもクリスも、全員が涙を流して泣いていた。

でも、誰一人声を出す事はなかった。

多分それは、二十年前に全員の母親が地球を守る為に命を落とし、その遺伝子から生まれた知的生命体の子孫であり、この戦いが終わりではなく始まりなのだと思っているからではないか、と賢治には思えた。

「ガ、ガハッ! ケ、ケンジ、私の体が限界に達する前に……グハッ、早く……早く、その刀でゼロパーツを貫きなさい!」

急に、右手で持っている十字刀が軽くなった気がした。視線を落とすと、柄の部分には六本の手が添えられ、賢治の周りに全員が集まり涙を流しながら頷いていた。

しかし、賢治は何度も何度も首を横に振った。

「で、出来ないよ……舞夜さんを刺すなんて、俺には出来ないよ……」

「ケンジ君、このままだとマヤの細胞は全て破壊されて、ベルゼブブが姿を現す事になるわ。マヤの命が無駄になってしまう……地球を守る事は私達の願いであり、マヤの願いなの。だからマヤのお願いを聞いてあげて……」愛霧の悲痛な声だった。

「ケンジ、マヤの願い叶えたり……」シンディの声が聞こえた。

「ケンジ様、マヤさんの願いを聞いてあげて下さい……」クリスの声が聞こえた。

「斎藤ちゃん、マヤは君に頼んだのよ……」波紋の声が聞こえた。

「ケンちゃん、マヤちゃんの気持ちを無駄にしないであげて下さい……」

最後に桃子の声が聞こえた。全員の声が涙で滲んで震えていた。

舞夜のように自分の命を差し出す事も出来ず、かと言ってこの状況で舞夜の気持ちを汲んでやる事もで出来ず、賢治は何も出来ない自分に苛立ち歯噛みした。

――でも、俺には出来ない……いくら地球の為だとは言え、仲間を殺す事なんか出来ない。この判断は間違っているのかも知れないが、どうしても俺には……。

「嫌だ! 絶対に嫌だ――――――――!」

その時に、頭の中で何かが光り弾け飛んだ。記憶の奥底から聞こえてきた見知らぬ声。

『どうやら苦戦しておるようじゃな。姿を見せる事は出来ぬが、わしの力を子孫である御主に授けようぞ』

その直後、視界が虹色で覆われた。全身も、刀にまでも七色の色彩が広まっていた。その姿に腰を抜かしているクリスが震える声で言った。

「こ、これは……旧約聖書に現れる、全身を虹色のオーラで纏う最強の呪術師……虹色のシャーマン……」

全員の視線が賢治に突き刺さった。

『その刀に願うのじゃ、悪魔のみを引き裂き、愛する人を守りたまえとな』

今の賢治には、この夢か幻か何なのか分からない声を信じる事しか道は残されていない。

賢治は虹色に輝く十字刀に願いを込める。そして、この声が真実を語っている事を信じて、苦しんでいる舞夜の心臓に一気に十字刀を付き刺した。

「お、愚かなる人間どもよ……この罪を償う日がすぐにやってくるであろう……」

断末魔の叫び声が聞こえた直後、舞夜の口から漆黒の靄が吐き出され、やがてその靄は霧散した。それと同時に崩れ落ちるように倒れ込んだ舞夜を、賢治はしっかりと受け止め抱き抱えて、刀を刺した傷口に目を移した。

が、傷口らしき物は見当たらない。

あの声は賢治にしか聞こえていないので、みんなは舞夜は死んでしまったのだと思い込んでいるだろう。しかし、その声が幻聴などではないと言う確信は、舞夜の声を聞くまで得る事ができない。賢治は震える声で呼びかけた。

「舞夜さん……舞夜さん」

周りのみんなの泣き声が、それを掻き消している。

「舞夜さん! 舞夜さん!」

賢治は、全身の力を込めて声を張り上げた。視界の隅に映っていた舞夜の右手の人差し指がピクリと動いた。そして、閉じていた瞼がゆっくりと開かれていった。

「ケ、ケンジ、なんで……」

その声を聞いたみんなは、飛び出してしまうのではないかと心配してしまうほどに、目を見開き舞夜の周りに輪を作った。

「……みんな……なんで」

はっきりと意識が覚醒した舞夜は、賢治の腕から離れ立ち上がり涙を浮かべている仲間たち一人一人の顔を確認するように見つめた。

「し、しぶとい奴やなぁ、地獄の閻魔さんに嫌われたんちゃうか?」

シンディは、鼻を啜りながら憎まれ口を叩く。

「マヤ、良かった……良かった……生きてたんだね……」

駆け寄った愛霧は舞夜を抱き締めた。

クリスは、天に向かって祈りを捧げている。

「主よ、マヤさんを御救い下さった事を心から感謝致します……」

「うううぅぅ、うわあぁ――――ん!」

桃子は、両手を瞼にあてて大号泣。

「良かった……本当に良かった……もしかして、斎藤ちゃんがマヤを……」

波紋のその声により、全ての視線が一気に賢治に集まった。

「そや、クリスが言うてた、虹色のシャーベットと関係があるんかいな?」

「バカ、虹色のシャーマンでしょ!」

間髪入れず、愛霧が突っ込みを入れた直後、クリスが真剣な眼差しを賢治に向けた。

「ケンジ様、もしかして声が聞こえたのではないですか?」

「うん、実はあの時、頭の中で声が聞こえてきたんだ。俺に力を授けてくれるって。悪魔のみを引き裂き、愛する人を守りたまえと願えって言われたんだ。その時は、その言葉を信用するしか方法がなかったから……」

なんだか、注目を浴び過ぎて照れ臭くなった賢治は右手で頭の後ろを掻いた。

立ち上がった舞夜は賢治の前に立ち、「ケンジ、ありがとう……」と言って、胸に顔を

埋め背中に回した手にギュッと力を込めた。

 突然のその行為に、賢治の神経回路はショートしてしまい完全に意識は遮断。

「なにいちゃついとんねん、熱いキッスは帰ってからにしてや!」

シンディのその言葉で、ハッとした表情を浮かべた舞夜は賢治の体から離れた。その時の照れた表情が、たまらなく可憐で、ものすごくいじらしくて、圧倒的な破壊力で賢治の心を粉々に破壊した。

「こいつ意識飛んでるで……おい、ケンジ!」

シンディに、ピチピチと平手打ちされている事に気付き、賢治の意識は天国から舞い降りてきたのであった。

「イタッ、なにするんだよシンディ……て言うか、右腕が……」

左腕しかないシンディを誰も気に止めていない事に気付いた。

「あぁ、これか? うちらはな、生命活動さえ停止しいひんかったら……いわゆる心臓さえ動いとったら、一日で細胞が再生して元通りになんねん!」

あっけっらかんと言い放ったシンディに、賢治は口を開けたまま突っ立っていた。

「そんな事よりも、これからが戦いの始まりよ。みんなで力を合わせて戦いに挑まなくちゃならないわ。シンディにクリス、私達のチームに所属してもらうわよ。文句はないわね」

舞夜の強い眼差しに、シンディは合わせていた視線をすっと逸らした。

「……ま、しゃあないな。うちらの力貸したろうやん、なぁクリス」

「主も、それをお望みのようです……」

「じゃあ、渋谷の復興作業は政府に任せて、私達は各自の家に戻って休息を取りましょう。明日は朝から今後に向けて会議を開くわよ。シンディにクリス、出社は九時だからね、遅刻すんじゃないわよ」

言い終わると舞夜は右手を突き出し、スッと親指を立てた。

「任務完了! お疲れ様でした!」

全員の声が青く輝く美しい空に響き渡った。


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