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ショタ魔王は、魔力が溜まって仕方がない!  作者: 飢餓 模倣
第1章  魔王は、人間の街へ 「始まりの日」
3/4

2話  「過去」+「父親」


コロナ様は、私の大事なお方です。

それは、今も昔も変わっていません。


優しいし、可愛らしいし

抱きしめると顔を赤くしてジタバタする様子なんかもう...たまりません!

この前なんて、庭で小鳥に餌をあげてたんです。

その無邪気な笑顔を見ているだけで、消滅してしまいそうになります...

何故か私の前では全然笑ってくれないんですけどね。

...何故か!



あの方が屋敷に来たのは、私とカゲツが10歳の頃でした。

私達は、コロナ様の教育係として、それはもうたくさんの事を

叩き込まれていたので...まぁちょっとグレてましたね。

「うへへ...魔王の息子だか何だか知らねぇですけど...

 毎日ビシバシやったるですよ...」

とか思ってましたね。

カゲツなんて、自分の事、「俺」とか言っちゃってました。

右腕が疼き出す年頃ですからねー。よくある事です。


そしてコロナ様(6歳)がやってきたのですが...

あああ今思い出してもヤバいくらい可愛いかったんですよ!

女の子かと思いましたもん!ハァ...ハァ...!

いつもクールで痛い子だったカゲツも「...姉さんと呼べ」

とか言っちゃってたんですよー!...

コロナ様...何で私の事は呼び捨てなんでしょうね...



...それはさておき...魔王様によると、コロナ様は「真っ白な状態」

らしいのです。その性質故に、どんなものにでも影響され、吸収してしまいます。

つまり、そこに良質な魔力を大量にぶち込めば、魔王様の完成って事ですね。


私達の仕事は、コロナ様が13歳となり、魔王になるための器が完成するまで

この「静寂の森」で余計な魔力に触れさせない事です。

ここは、限りなく人間の領域に近い環境だそうです。

野菜も美味しく育つし、いい場所なんですよー!

先代の魔王様に献上する野菜も、ここで作っていたんです!



さて...先代の魔王様、についてですが...

今から3年前、勇者達によって倒されました。

勇者は4人しか居なかったようなのですが

護衛部隊含め、城に居た同胞は残らず殺されたのです。

そう、残らず...


その知らせが届いた時


コロナ様は、生まれて間もなく両親から離されていたので、

父が殺されたと言われても特に動じていませんでしたね。

カゲツも...平然としてましたねー...

まあ、アイツも所詮........



とにかくっ!

私の願いは、コロナ様に立派な魔王になっていただき、

人間を滅ぼして欲しいって事です!

これ以上奴らの好きにはさせられませんし...

民もそれを望んでいるのです!


なので...可哀想ですが

そろそろ仕上げですよ、コロナ様。





「...エイリ」


私が庭で佇んでいると、カゲツが声をかけてきた。


「何ですか?カゲツ」


どうやら彼女は怒っているようだ。

普段は感情を表に出さないのだが、

コロナ様の事になると表情に出るので、とても分かりやすい。

どうせ、先程の事についてだろう。


「...そのやり方は、良くない」

「何の事ですー?んー...まぁ確かに少しばかり厳しかったですかねー」

「...無理矢理、引きずり出しただろう」

「...お手伝いしただけですよー」


流石に鋭い。

確かに、私の魔力で無理矢理発現させる形ではあったが...

あれはまさしく魔王の力。もう魔獸を生み出す事も出来るだろう。

それに、力の使い方についての教育は私に一任されているのだ。

口を出さないで欲しい。


「もうすぐ13歳になることですし、多少早くても問題ないと思いますが?」

「...かなり取り乱していた。心の準備がまだ出来ていないと思う」


そんな事は分かっている...


「...先代も、ゆっくりで良いと言っていた」


言われなくても...分かっている。


「...あまり復讐心に囚われ過ぎるな」



...お前に何が分かる。




「はいはい、焦りすぎてました。気をつけますよー」

「...コロナは書庫に居る...謝ってこい」


そう言って、カゲツは去っていった。


やれやれ...また書庫ですか...

コロナ様はいつも、勉強が嫌になるとそこに篭もっちゃうんですよねー。


あの書庫には、人間の書いた書物も沢山ある。

有害なので焼き払っちまいたいのですが...

向こうの事を知るのも良い勉強だ...

とか言ってカゲツが許さないんですよねー...本当に気に入らない。


コロナ様が「剣術を習いたい!」とか言うのも、

本に毒されたからですかねぇ。

剣など持つ必要は無いのです。

私達より劣っている種族の技術など...



...とりあえず、謝りに行きましょうか...



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



屋敷にある書庫

ここは僕のお気に入りの場所だ。

嫌なことがあった日は必ずここに来る。


魔術の書、動物の本、人間と魔族の戦いの歴史...

色々な本が大量に保管されている。

特に好きな本は、「勇者の記録」だ。

これは、実際に勇者が冒険している時に書いた本だ。

カゲツ姉さんが調達してくれたのだが、とても面白い。

勇者達が、どんな苦難に遭い、どう乗り越えたのか。

冒険の中で戦った魔物や、植物の事...そして、どこで死んだのか。


この本を読んでいるとワクワクしてくる。

本来、魔族より力が弱いはずなのに勇敢に立ち向かっていく人間。

僕の憧れだ。彼らのようになりたいと思った。



だが...僕は人間ではない

魔王だ。

僕は、この本に書いてある通り、人間の敵なのだ。

魔獸を生み出し、街を襲う。

人間を殺すための存在...


今日まで、自分が何なのか真面目に考えたことも無かったが、

はっきりと分かった。


この「左手」

今はもう普段通りの僕の手だが...

確かに、鳥の死骸を「食べた」

腕は黒い影のようになり、指は牙のようだった。


自分は化け物だったのだ。


これから先、僕は人間達と戦わないといけないのだろう。

毎日、魔獸を生み出し続けて...

そして父親と同じ様に殺されるのだろうか...


そんな事を考えていると、恐ろしくなってきた。


「なんで仲良く出来ないんだろう...」



そう呟いた時。

腕に違和感を感じた。

まるで何かが暴れているかのような...


「いっ!?な、なにこれ...!?」


僕は、今日で二回目の体の異変に戸惑う。

自分が自分ではなくなるような恐ろしさ。

左腕が勝手に動き出す。

抑え込もうとしても、自分の意志とは関係なく、

得体の知れない力がどんどん膨らむ...



「うわああっ!?」



何かが噴き出すような音と共に、黒い影が飛び出した。



「...え?」



...これは、鳥?

その真っ黒な生き物はこちらをじっと見つめている。


「もしかして...魔獸?」


なんか...思ってたのと違う。

もっと凶暴そうな奴かと思った。

鳥の姿をしているのは、僕が死骸を取り込んだからだろう。


「モ...ゥ...」


その黒い鳥は、鳴き声だか呻き声だか分からない声を出している。

僕は警戒して少し距離をとった。

魔獸なんて本の中や、話でしか聞いたことがない。

いきなり襲いかかってくるかもしれないし...


しばらく様子を見ていると、その生き物は口を開け...



「もうちょっとマシな器はなかったんかい!?」



喋った......


...シャベッタァァァァァァァァァァァァァ!?

魔獸って喋るの!?



「驚き過ぎじゃろ!?オイ!」

「...怖い!近づかないでよ!」

「ちょっ、何故本を投げつける!?当たったら死んじゃうじゃろうが!」


その黒い鳥は、ギャーギャー言いながら動き回っている。不気味だ...!


「お、落ち着け!お前、ワシの息子じゃろ?」


鳥が変なことを言った。

僕が親なのでは...?

いや、そういう問題じゃないけど!


「ワシは魔王じゃ!お前の父親じゃい!」


「......へ?」

「...正しくは、残留思念というか...まぁオバケみたいなもんじゃ。

 ワシ、もう死んでるし」


頭がごちゃごちゃになった。

突然現れた鳥に「父親じゃい!」とか言われても

納得できるはずがない...


「というか...ワシには息子しか居らんかったと思うんじゃが...

 いつ女になったんじゃ?」

「男だよっ!失礼な!結構気にしてるんだからね!?」


外見については触れないで欲しい。

あと数年すれば僕だって男らしく...!


「すまんすまん...じゃが、立派になったのう...

 もう魔獸を作れるようになったのか」

「...本当に僕の父親なの?」

「あぁ...残りカスじゃがの...今はお前の作った器を借りて喋っておる。

 ていうか鳥って!どんなチョイスじゃ全く!もっと威厳がありそうなのがよかったわい!」


僕がチョイスした訳じゃないんだけど...


「まぁいい...ワシがお前の前に現れたのは、重要な話があるからじゃ...聞いてくれるな?」


...かなり疑わしかったが、話を聞くことにした。

その黒い鳥...(自称僕の父親)は、様々なことを僕に話した。



3年前に自分が殺された話。

4人の勇者と戦い、敗れた事。

城に居た者は全て殺された事。

そして、勇者達は自分の死体を街に持ち帰ったという事。



次に、なぜ自分が人間と戦ってきたかについて。

それは初代魔王が成し遂げられなかった事をするためだ...

と、僕の父さん(仮)は、そう言った。


「...遥か昔人間に捕らえられた同胞が未だ解放されず、死ぬ事すら許されていない。話によると、魔術の実験体として生かされ続けているらしいのじゃ...ワシはその者達を救うために戦ってきたのじゃが...」


父さん(?)はしばらく黙り込み...


そして、僕に問いかけた。


「お前は、魔王になる覚悟はあるか...?」


僕は...




「............ないっ!!!」




僕は思い切り首を横に振ると、自称父さんは口を大きく開けたまま

しばらく動かなくなった。




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