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ショタ魔王は、魔力が溜まって仕方がない!  作者: 飢餓 模倣
第1章  魔王は、人間の街へ 「始まりの日」
2/4

1話  「僕の1日」+「異変」

南の地 「静寂の森」 とある屋敷




朝の日差しと、小鳥の声で目が覚める。


今日はとてもポカポカしていて、気持ちが良い。

体を起こし、窓の外を眺めると、庭で小鳥たちが楽しそうに遊んでいる。

...清々しい朝だ。


しばらくすると、ウルフの子供たちもやってきて、走り回ったり、あくびをしている。


「かわいいなぁ...」


この辺りにいるウルフは、とても大人しく、

子供のうちは可愛らしい見た目をしている。

あ、小鳥が近づいて.......

「グワオオオオオ!ギャォガウガウガウ!」


僕は、小鳥が食い散らかされる光景から目を背ける。

「さぁーて、朝ご飯!」なんて気分にもなれず

再びベッドに寝転がり、二度寝することにした......



僕がベッドでうとうとしていると、ガチャリ、と部屋の扉が開いた。


「コロナ様、起きていますか?」


この声は...「エイリ」だ。

いつものように僕を起こしに来たらしい。


「朝ですよ~...うへへ...」


彼女は、気味の悪い笑みを浮かべながら僕のベッドまで高速で接近。

しかも、ほぼ無音だ。さらに毛布に手をかけ、一気に捲り上げる!


「朝のチェックタイムですよっ!おりゃあああああああ!!!」

「どういう事っ!?」


緊急回避!

僕は、毛布が捲り上げられるよりも早く飛び起き、物陰に隠れた。


「コロナ様!おはようございます!」

「普通に起こしてって言ってるでしょ!」


寝起きの姿は恥ずかしいから見られたくないのに!


「ていうか朝のチェックタイムって何!?」

「それは『コロナ様のコロナ様』が起きているかチェックしようと...うへへ」

「意味が分からないよ...!」


彼女は、エイリ。

ずっと前から僕の身の回りの世話をしてくれている。

でも最近やけにベタベタしてくるので、苦手だ。


「さあコロナ様!着替えましょう!私がお手伝いします!...脱ぐのとかっ!」

「や、やめてよ!自分で出来るから...!」


言ってる間にもボタンが外されていく。何この早業!?

だ、誰か助けてっ...!と心の中で叫んでいると


突然エイリが部屋の端まで吹き飛んでいった。


「あれ...?」


ふと顔を上げると、カゲツ姉さんが立っていた。


「...コロナ、大丈夫か」

「カゲツ姉さん!助けて!」

「...俺の部屋に来い」


カゲツ姉さんは、僕を抱えて走り出した。


「カゲツ!コロナ様は私のですよっ...!」


後ろでエイリが何か言っているが、無視。

今日も慌ただしく1日が始まる...


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕の名前はコロナ。


小さい頃に両親から離れ、この屋敷にやってきた。

そのため、親の顔も名前も覚えていない。

ただ一つ分かっている事。

それは、僕の父親は「魔王」だったという事。


父は3年前、「勇者」に倒された。

人間と魔族の戦いが始まってから、数百年。

ついに人間が魔族の王を倒したのだ。

だが、戦いはまだ終わっていない。

魔王は、世界中に魔獸を放ったため、今も人間の街を襲い続けている。


人間たちは、どんどん力を増していて、いつ攻め込んでくるか分からない。

そのため、魔王の息子である僕が新しい魔王となり

魔獸を生み出さなければならない。


僕はもうすぐ13歳になる。

魔族では、13歳になれば立派な大人と認められる。

僕は正式に魔王を継ぐことになるのだ...


正式に発表されるまでは、僕の存在は極秘らしい。

なので、誰も寄りつかない「静寂の森」にある、この屋敷で暮らしてきた。

父さんもここで育ったらしい。


僕がこの屋敷に来てからずっと、教育係として、

「カゲツ」と「エイリ」が僕の身の回りの世話をしてくれている。

年はあまり離れていないので、僕にとっては、お姉さんのような存在だ。




「...コロナ、じっとしていろ」


カゲツ姉さんの部屋。

姉さんはいつも僕の髪の毛をセットしてくれる。

長くて自分では上手くできないからだ。


「...コロナの髪は綺麗」


銀色の髪の毛、父さんと同じらしい。

最近かなり伸びてきたので、エイリに切ってもらおうとしたのだが...

「切るなんてとんでもない!その方が可愛...

 いえ、切ってしまうと魔力が暴走してしまうのですよ...!」

ということで、長いままだ。

女の子みたいで僕は嫌なんだけど...魔力が暴走するなら仕方がない。


「...できた」

「姉さんありがとう!」

「...ん」


カゲツ姉さんに髪を後ろで纏めてもらった。

やっぱり姉さんと居ると落ち着くなぁ...


背が高くて格好良いし。

物知りで、色々と教えてくれるし。

どこかの誰かと違って物静かだし...


「コロナ様!朝ご飯ですよ!...

 カゲツ!いつまでベタベタしてるんですか!?離れなさい!」


エイリが部屋に突入してきた。


「...うるさい。コロナが怯えている」

「あああ!何抱きしめてやがるんですか!」


どうしてこの二人は仲良くできないのだろうか...


とりあえず二人をなだめてから、朝食の席に着いた。

美味しそうな食事が並んでいる。


エイリは家事全般を完璧にこなすことが出来る。

特に料理の腕前は確かだ。

どの料理も美味しくて、僕は好きなのだが...


「あぁコロナ様、今日もかわいいですね!」

「ちょっ、撫でないでよっ!やめてって!」


エイリはスキンシップが多すぎると思う。

僕のことを子供扱いしてくるし

たまに意味の分からない事を言うし...


「...エイリ、セットが崩れるだろうが...!」

「カゲツより私の方が上手くセット出来ますっ!」

「...何だと?」


あと、この二人は昔から仲が悪い。

すぐに言い合いになってしまうのだ。

これさえなければ、エイリは良いお姉さんなんだけど...

美人だし、胸も大きいし...


「あぁっ!コロナ様が私の体を舐め回すように見ていらっしゃる!」

「み、見てないよっ!」


僕はとりあえず、目の前の二人を無視して、朝食を楽しむ事にした...




朝食の後は、「勉強」の時間だ。


勉強はいつもエイリが担当している。

この数年間...世界についてや、魔王の仕事について

あとは魔力の使い方なんかを習ってきた。


この世界は北と南に分かれている事。

人間は北に住んでおり、自分達の敵だという事。

僕は魔王の力を受け継いでいる事。

エイリは様々なことを僕に教えてくれた...

そして、父さんの最期についても...


父さんは、勇者と戦う前に、色々なことを話していたらしい。



「勇者たちよ...よくここまで辿り着いたな...ワシは....

 ちょっ待て!剣抜くなよ~まだ早いよ~...やめろよ?

 ワシは魔王、魔族を統べる...あぶなっ!?誰だ矢ァ飛ばした奴!

 話してる途中でしょうが、もう!...ほらそこ!詠唱しないの!

 大魔法の準備してんじゃないよ!だーかーらー!世界の半分を...

 痛ッ!刺さったわ~...何なん本当...ちょっ怖い怖い!

 ......お前ら何か喋れよ!?」



「これが魔王様の最期です...」


エイリから魔王の話を聞いたとき、僕は思った。


魔王、格好悪い......


それ以来、僕は魔王ではなく、勇者に憧れるようになった。

そんな情けない魔王になるよりも、強くて格好良い勇者になりたい...


「さぁ、立派な魔王になるため、頑張りましょう!」


エイリは今日もやる気に満ちた様子だ。

今日は魔王の仕事の実践をするために庭で行うらしい。

僕はそんな事より剣術の特訓がしたいんだけど...

「魔王に剣術など必要ありませんっ」

だそうで、なかなかさせてくれない。


仕方なく、エイリの授業を受ける。


エイリの話によると僕は、魔王の力を受け継いでいるため、

普通の魔法を使えないらしい。また、魔力を取り込む力が強いのだそうだ。

そのため、何もしなくても大気中の魔力を吸収していってしまうらしい。


「ここは静寂の森です。この場所は魔力の流れが穏やかなので、溜まりすぎることはありません。しかし、魔王城に行ってからは違います。濃い魔力が充満しているので、すぐパンパンになるでしょう。そりゃもうパンパンに!」


僕は、普通の魔族より遥かに多く魔力を溜めることが出来るが、吸収量も段違いなため、定期的に消費する必要があるらしい。そして、その方法は...



魔獸を生み出す事。



「あら、こんな所に小鳥の死骸が...」


あ、今朝ウルフに食われてた奴だ...

エイリは、死骸を指差し、こう言った。




「コロナ様、まずはアレを取り込むのです!」


...へ?どういう事?


「そうですねぇ...食べる、というイメージらしいですよ。

 先代の魔王様によると...捕食の腕を使って...」


食べる!?...アレを?

意味が分からない。分かりたくもない。

父さんもこんな事を...?

食べる...取り込む...

何だろう、指先が痛む。


「そ、そんな事言われても...」

「ですが、魔王の務めを果たすために必要なことなんですよ...」


そもそも魔王になんてなりたくない。

それに、こんな事をするなんて聞いていない。


「さぁ、コロナ様...?魔獸を生み出すには、器が必要なのです。

アレを取り込むのですよ...」


いつもより目が怖い。明らかに様子が違う。

僕の頭の中は、不安と恐怖でいっぱいになった。


「コロナ様...それは...」


エイリの視線の先。僕の左手。


...左手?


自分の目で確認する。

ズキズキと痛む左手は...

もう僕の知っている形ではなかった。


その「左手」は、勝手に動き出し、鳥の死骸へと向かっていく。

そして、バキバキと「食べ」始めた。

自分の意志とは関係無く、グチャグチャと咀嚼を続ける左手。

今朝も見た、小鳥が食い散らかされる光景。


これが、僕...?


「うわあああああああああああああ!?」

「コロナ様!?落ち着いてくださいっ!」


そんな事を言われても無理だ。

エイリの静止を無視して、走り出す。

その場から、その「左手」から逃げるように。




「ふぅ...まだ早かったみたいですね~...」




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