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6.つまをめとらば(青山文平)

【つまをめとらば】

 6編収録の時代小説の短編集。時代小説って全くと言っていいほど興味がなくて、この「しりとり読書」がなかったら読まなかったであろう作品。江戸時代の土地や地位や仕事を表す意味の分からない単語が色々と出てきたのですが、その辺はフィーリングで読んでも大丈夫でした。いつもなら電子辞書で調べて進むのですが、この作品でそれをやったらキリがないのでやめておきました。

 

 視点は一人称や三人称一元視点。

 文章は結構淡々としている。単語の意味の分からなさが読み心地を少し損ねているけど、描写自体は簡単です。改行も台詞も多いし、隙間時間を見つけて読んでもそんなに時間はかかりませんでした。

 

 この作品は題名から想像していた「江戸時代の夫婦のほんわかラブストーリー集」……では、全くありません。実は興味のなかった時代小説でも、恋愛の話なら、なんとか現代との共通点を見いだせて気持ちを引っ張ってくれるかな、と若干期待していた部分があったんです。が、1話目の「ひともうらやむ」から、「あっそういう方向で書いてくるのね」とちょっと驚きました。思ってたより暗いし、重い。嫌いなテイストではないけれど、その暗さの割には人物造形と文章が浅い気がして、そこまで響いてこない。2話目の「つゆかせぎ」では春をひさぐ女性がまさに男の書く女だな、と苦笑。男女の濡れ場が少しでもあるとなんかどうでもいい気持ちになってしまうので、これも好んで読むタイプの話ではない。ただ、主人公の気持ちの変化が分かるだけに、不思議な味があるのも事実。そして、まぁこんな感じか、と続けて読んだ3話目の「乳付け」。これが面白かった。乳が出ない民恵の不安がまず分かりやすく引っ張られる。そして、その人がそうなる前には当たり前だけど色々な過程があるんだという真理が不思議なカタルシスを誘う。4話目の「ひと夏」では初めてアクションシーンって面白いんだな、ハラハラするんだな、というのを体感しました。その人が背負っているものが重いほど、アクションシーンは面白くなるのかもしれません。

 そして5話目の「逢対」も面白かったです。江戸時代の武家の就活(?)の話で、かなり考えさせられました。何をどう……というより、世の中ってこう回っているんだなぁ、という漠然とした思いが浮かんできました。

 

 最終話の「つまをめとらば」は表題作だけど、やっぱり単純に妻を(めと)る話ではなくて、女に振り回されてきた男たち側の話です。というか、この作品にはそういう男性が多い。もとい、そういう「ふつうでない」女性しかいない……。女そのものへの恐怖や大奥で働く大の男たちが次第に「誰それに話しかけてもらった」等の本当に些細なことを嬉々として語るようになる事への嫌悪……などなど、分かる分かると頷いてしまいます。そういった心の機微は当たり前ですが現代に通じますね。ただ江戸時代は制度が違う分、色々な事がとても劇的だと思いました。時代小説にしかない面白さ、というのはこの辺にある気がします。もちろん、江戸時代の人々の生活や職業の描写も大変興味深い。というかその辺がよく書かれているのが本作の読みどころでもあります。時代小説が好きな人の気持ちが少し分かったような気がします。沢山読んでいくにつれ、単語の意味もよく分かって面白さは増すのでしょうね。今のところそこまで読み込む予定はありませんが……。


 


 

 


 

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