彼の娘
さて、前書きということなのですが…。
現役高校3年生の私ですが、恋愛どころか青春とも無縁なままで卒業しそうです。
これが悪いわけでも良いわけでもないのですが、どこか寂しさを感じました。
また、非日常に出会いたかったのに…という自分への失望もあったのかもしれません。
誰しもが恋愛をし、青春をするわけではありません。選んでそれらの体験を拒む方もいらっしゃるでしょう。
しかし、心情がグルグルと入れ替わるような出来事に出会うことで非日常を迎えられるのではないかとよく考えます。(あまりにも非日常と出会いたいばかりに…(笑))
そうするとやはり恋愛も青春もするべきだったのかもしれません。
そんな自分自身への失望供養と、今後への期待を込めて…
"日常の中に非日常が潜む"
私はこの言葉が一番苦手であり、得意である。
なぜならば、ここで述べられている"非日常"は日常と変わりないものであり、変わるものなのだ。
というのも日常という基準があり、基準から逸れれば非日常となる。
では日常という基準は何なのだろうか?
決まった時間に起き、決まった時間に学校へ行く準備をし、決まった時間に家を出る…。
この行為を日常とするならば、遅くに家を出てみよう。非日常の始まりだ。
非日常は安易に存在し、日常をねじ曲げるものなのだ。
非日常に出会うことは日常的なのだ。
「落としましたよ?」
自分が通う高校の生徒であると思われるロングヘアーの少女にストラップを渡す。貝殻のついたお洒落なもので、キラキラと輝いて見えた。
「ありがとうございます。…あの、これよろしかったら」
ロングヘアーの彼女がスッと手を差し出した。彼女は声も綺麗なのか。思わず受け取ってしまった。
「ありがとう」
小さな会釈を返す。
「これは…」
不思議な色のカラーコンタクトだと思われる。水色のビー玉のような上品な綺麗さが魅せる。しかし、よく見ない色なだけに質問を返した。いや、正確に言うと呟いた。
そう。ストラップを拾ってあげた彼女はもういなかった。小首を傾げ私は不思議な色のカラーコンタクトをブレザーのポケットにしまった。
いつも通りの学校。私の席は教室のド真ん中
。椅子をひき、とりあえず腰をかける。かばんを机の隣にかけ、ブレザーのポケットからコンタクトを出してみた。
普段コンタクトなんてつけないけど、いい機会だしつけようかな…。
コンタクトを見つめていると、後ろからおはようと言いながら頭をくしゃくしゃにされた。
「ちょっ…と…構って欲しいのかな?」
拒みつつ、されるがままになりつつ…。そう"アイツ"だ。
「朝からそんなこと言える君はすごいね。世の清楚女子見習ってきたほうがいいよ。」
朝からそんな嫌味を言えるあなたもすごいですけどね。
「何?コンタクトつけるの??」
私の手を見つめ、不思議そうな声で聞いてきた。
「今日、落し物渡したらくれたんだ。滅多にこんなことないしつけようかなーなんて。」
本音をそのまま話す。
「まぁ、安全ならなんでもいいんじゃない?」
適当なやつ目…。
鏡を出して、机に立てた。コンタクトの封を開ける。人差し指に乗せ、よくコンタクトを眺めた。本当に不思議な色だ…。
「どう?」
隣のアイツに聞いてみる。
「あんま変わんねぇな。」
確かに。不思議な色だった割には普段の私の目と変わらない。
「だよね~…。」
やっぱり非日常は日常だった。