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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース9:過去に戻りたい(由奈編)
95/109

第七話

■■■


「か、過去を変えた……。変えた?! う、うそ……」

「つ、月子さん! こ、これは一大事ですわ!」

「な、なんで……どうして……? 彼女はただの栄養ドリンクしか飲んでいないはずなのに!」


 その時夢子の通信機から怒涛の声が聞こえてくる。地を這うようなとても低い声の主。


『これは一体どういうことだ! 過去を変えてしまうとは何もかもが変わってしまうぞ!!』

「ボス! すいません! わ、わかってはいるんですが、ワタクシも今の現状が信じられなくて……」

『今の世界が無くなる! 現在が無くなるぞ! 今の世界が無くなっては……ダメなんだ!!』

「ね、ねぇ、夢子さん……。彼女の表情を見て!」

「え?」


 月子の震える言葉を聞き、夢子は眠っている由奈の顔に視線を移す。


「わ、笑ってる……?」


◆◆◆


「はー? ど、どういうことよ……?」


 西園寺さんは目を見開き、口をポカンと開けながらを私を見つめた。


「わ、私、ずっと……初めて見た時から西園寺さん、いえ、エリカちゃんのことが好きでした!」

「で、でもあなたは、ほ、星野君のことが……好きなん……でしょ?」


 私は言葉を発する前に軽く呼吸をし、そしてゆっくりと言葉を紡いだ。


「もちろん好きよ。でもそれは幼馴染として。親友として……」


 そこで再び、今度は深呼吸をする。そして私は西園寺さんのもとに近づき、彼女のネックレスについているクローバー型のチャームを手に取る。


「ちょ、ちょっと! なにすんのよ!」


 そう言って彼女は慌てて私の手を払いのけた。しかし私は気にすることなく微笑を浮かべながらこんなことを言う。


「私がプレゼントしたそのネックレス、とっても似合ってるよ」

「え? どういう……ま、まさか?!」


 列車は私たちを照らしながら速度を下げて近づいてくる。


「エリカちゃん、私が本当に心から愛しているのは……」


  ■■■


『早くコイツを夢の世界から戻すんだ!!』


 その時夢子は考えた。


(月子さんの言う通りなら……。この現実が無くなったところで……)


 夢子は手に持っていた懐中時計をギュッと握りしめる。しかし月子が夢子の肩をポンと叩き、微笑を浮かべた。


「月子さん?」


 すると彼女は、一瞬力を緩めた夢子の手から懐中時計を取り上げた。


「何をするのですか?!」


 夢子は思わず声を張り上げる。


「それはこっちのセリフよ、夢子さん。今この現在を失ってはいけないのよ。私にはやることがある……」


 そして月子は懐中時計の針を何度も何度も指で今度は右に回した。夢子は硬直したまま動けずにいた。そんな中、由奈の口元が夢子の目に入った。その口元に目を凝らしてみると――――


「エ……リ……」


 その時、懐中時計が『カチャ』という音を鳴らす。


「これで終了ですわ……」


 月子の言葉が一体どちらの終了なのか夢子には次の瞬間まで理解できなかった。由奈の夢が終わったのか。はたまたこの世が失われたのか……。


「うぅ……、頭が痛い……」


 そうつぶやきながら由奈は目をこする。


「さぁ夢子さん、お店へ戻りましょう」

「月子さん……」


■■■


「あれ……? 夢……か」


 由奈は朝日が昇るとともに目を覚ました。窓辺でここが現在だと知らせるかのようにすずめがチュンチュンと鳴いている。「はぁー」と深いため息をつく由奈。


(過去を変えることはできなかった……。やっぱり無理だったのかな? 私のこの気持ちでさえも過去を変えることはやっぱり不可能……)


 由奈は目を真っ赤にして瞳をうるわせていた。そして彼女の頬に涙が伝う。


(でも……あの事故をどうしても自分の力で止めたい……)




「あら? おはよう、由奈」

「おはよう、お母さん」


 二階から降りてきた由奈は廊下でパジャマ姿の母親とばったり会う。


「今日は随分と早いのね? もしかして久々の学校だから張り切ってる?」

「え? 久々?」


 由奈は母親の言葉に頭に疑問符を浮かべる。しかし母親は心配そうに由奈を見ながら話を続ける。


「あまり無理しないでよ。また病気で寝込むのはいやでしょ? あ、もうちょっと待ってって、朝ごはん急いで作るから」


(お母さん、何言ってるんだろ? 昨日の今日なのに私がいつ病気で寝込んだっていうのかしら?)


 由奈は不可解な面持ちで思考を巡らせていたが、自分が急いでいたことに気づきそのことはあとで考えることにした。


(そんなことは、後でお母さんに聞けばわかること。それより今はやるべきことをやらなきゃ)


「由奈? どうしたの?」


 神妙な面持ちの由奈に母親は不思議な顔で由奈を見つめる。


「ううん、なんでもない。あ、ごめん、朝ご飯はいらない。じゃぁ、行くね」

「いらないって? ってちょっと由奈?」


 母親の言葉を背中越しに聞く由奈。制服姿の由奈はいつも通りピンクのスリッパからローファーに履き替え、家を出た。ただ一つ違うのはいつものスクールバッグではなくお出かけ用のあのキーホルダーが付いたハンドバッグを持って出て行ったこと、それだけが違っていた。


 続く

こんにちは、はしたかミルヒです!

第七話を読んでいただきどうもありがとうございます!

由奈編も次回で最終話です。由奈は再びドリームショップに行って過去に戻ることを懇願するのでしょうか??

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