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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース8:女の子になりたい(ヒカル編)
83/109

第三話 【重要】(追加文章あります!)2015.02.03追加

※2015.02.03 文章追加 

2月2日の時点では(なんかお父さん勘違いしてた……。でもこれで良かったのかな?)までだったのですが、

文章追加でその続きの『バタンッ 風呂から上がってきたヒカルは英寿に見つからないように早足で自分の部屋に戻ってきた~~』のところから追加いたしました。

申し訳ございません! 大変ご迷惑をおかけいたしました<(_ _)>


今日は連続投稿します! 第二回目

■■■


「えー、今日はカレイの煮つけかぁ……」


 そう言いながら不満げな表情を浮かべ食卓に着くヒカル。


「ヒカルは、カレイの煮つけが嫌いなのか? 今日はお父さんのリクエストなんだけどな~」


 父親の英寿が苦笑交じりに言って箸を持つ。


「ヒカルはカレイの煮つけどうこうの前に魚が苦手なのよね」


 そう言いながらも京香はヒカルのうつわに大きめなカレイの煮つけを盛る。


「ちょっと、お母さん! 大きなカレイ入れないでよー! 小さいのでいいんだから~」

「あら、偶然よ。うふふっ」

「も~う、私が魚嫌いなの知ってってわざとするんだから~…………」


 言葉を発したその直後、ヒカルは「しまった!」という表情に変わりパッと口を手で抑える。京香もヒカルの表情を見てヒカルが何をしでかしたかハッと気づく。


「お前……今、自分のこと『私』って言わなかったか? いつも『僕』って言ってるだろ?」


 当然英寿もヒカルの自身の呼び方に疑問を抱き、そのことを尋ねてきた。


「え、そ、そうだった? 僕は『僕』って言ったと思ったんだけど。はははっ」


 ヒカルは顔が引きつりながらも作り笑顔を湛え、頭をポリポリとかいた。


「いや、ぜったいお前、『私』って言ったぞ。なぁ?」


 英寿の顔は京香とあずみに向けられ、困ったその二人はお互いに顔を合わせる。


「そ、そうだったかしら? 私は気づかなかったけれど。ほらあなた、そんなことはどうでもいいから早く食べてちょうだい。味噌汁が冷めちゃうわよ」


「あぁ、そうだな。でもなんかオカマみたいに感じちゃってさぁ~! ハハハッ。ほら、ヒカル、しゃべり方もなんか弱弱しいだろ? 男ってのはな、もっと腹から声を出すんだよ! お父さんみたく……」


 すると英寿は席を立ちオペラ歌手のような姿勢になり思い切り息を吸い、そして低い声を張り上げた――――。


「アァ~~~~~~! はははっ、どうだちょっとやってみ!」

「…………あ、で、でも今は食事中だから、また今度……」

「そ、そうよ、あなた早く席に座ってちょうだい。さっきも言ったでしょ? 味噌汁が冷めるって」


 京香もヒカル同様に苦笑を浮かべ英寿に早く席に着くように促す。英寿はごめんごめんと笑いながら京香に軽く頭を下げ再び席に着いた。そして箸を舐め、汁椀を手に持つ。

 英寿に悪気はないのはヒカル本人も十分わかってはいるのだが、目の前であんなことをダイレクトに言われるとヒカルは当然落ち込んでしまう。


(オカマだなんて……。お父さんを責めるつもりはないけれど、でもやっぱり辛い……)

 

 ズズッ


 英寿の味噌汁をすする音だけがやけに今静かな食卓に響き渡る。


「おぉ、味噌汁も俺の好きなエビのすり身が入ってるなんて、今日は俺の誕生日だっけか? はははっ」


  □□□


『ヒカル、これは絶対にお父さんには言っちゃだめよ。あなたとお母さんとあずみだけの秘密ね。あずみもわかった?』


 あずみはツインテールを揺らしながらコクリと頷く。しかしヒカル本人は納得できないようで京香に反論する。


『でもなんでお父さんに言っちゃいけないの? 私、家族には隠し事なんてしたくない』


 すると京香はヒカルの両腕をしっかりと掴み、諭すようにヒカルに話し始めた。


『ヒカル、あなたはもう十四よ。わかっているはずでしょ、お父さんにこんなことを言ったらどうなるのかって。お母さんはあなたのことを思ってさっきのことを言ったのよ。お母さんやあずみに隠さずカミングアウトしてくれたのは嬉しいし、私たちは受け止めることはできるけれどお父さんだとそうはいかないでしょ? ほらお父さんっていい意味で豪快と言うか男らしいと言うか……まぁ、あんな性格だし……』


 すると俯きながらヒカルは一言だけ呟くように言葉を発した。


『わかった……』


 その言葉を聞くと京香は安堵の表情を浮かべ、虚空を見つめながらこんなことを口に出す。その声は二十畳のリビングにこだました。


『秘密にしていれば丸く収まることだってあるのよ。家族を大切にしたければ……』


□□□


(中学の時、カミングアウトしたらお母さんにあんなこと言われたんだったっけ……)


 そう思いながらヒカルはベッドに寝転がり天井を見つめた。


(でも隠すのって辛いよ……。お父さんにも、そしてジュンイチ君にも……。自分のことを一生隠し続けなければいけない人生なんて辛すぎる。でもお母さんの言う通り、私が本当のことを言うと悲しむ人がいるのも事実……。はぁ~、なんでこんな体で生まれてきたんだろう?)


 涙が目じりから流れてゆっくりと頬を伝って落ちていくのがわかった。辛くなるばかりなのでそんなことをもう考えるのはよそうと思いヒカルは目をギュっとつむる。しかし余計に涙がぽろぽろとこぼれしまった。しかしその時ふとドリームショップで買ったあの夢の液体のことを思いだした。あぁ、そうだ! と思い、ヒカルは涙を拭いベッドから起き上がると、夢の液体が置いてある勉強机の前に立つ。そしてその小瓶をそっと手に取る。


(何を悩んでいたのよ? 私にはこの夢の液体があるじゃない! あぁ、バカ! この液体があるのにもかかわらず余計なこと考えて涙流しちゃった……。さっさとお風呂に入って、早くこの液体を飲んで寝なくちゃ!)


 そう思いタンスから下着を取り出し、ヒカルは風呂場へと向かった。

  

■■■


 ドンッ!


「イッタ!」

「わっ!」


 足早で風呂場へと向かう途中、ヒカルは廊下の角で父親の英寿と思い切りぶつかった。がたいのいい父親に跳ね飛ばされる形となったヒカルはその衝撃で手に持っていた下着が床に散らばり、大いにしりもちをついた。


「おい、大丈夫か?」

「イタタタ……。ごめん、よそ見してた」


 そう言いながら立ち上がるヒカル。しかしヒカルはそこで気づく。


(あっ! 下着! 早く拾わないと!)


 そう思ったのも時はすでに遅し。英寿は、床に落ちている淡いピンク色のサクランボ柄がプリントされた女性用の下着を何気なしに手に取る。


「な、なんで女性用の下着がここに落ちてるんだ?」


 英寿は不可思議な表情を浮かべヒカルに尋ねた。


「え? あ、そ、それは……」


(ま、まずい! どうしよう……? 私のだなんて口が裂けても言えないし……)


 何かを悟ったようで、英寿は下着を見つめたあとヒカルの顔を見てぼそりと呟く。


「もしかしてこの下着……」

「はっ!」


(ヤバい! 私が女性用の下着をつけていたことバレちゃった! 殴られる!)


 そう思った瞬間ヒカルは拳をギュッと握りしめ、思い切り目をつぶり英寿に謝った。


「ごめんなさい!」

「ヒカル、ちょっとこっちに来い」


■■■


「ダメだろ! こんなことしていいと思ってるのか?」


 ヒカルは英寿と京香の寝室に連れて行かされ、シングルベッドが二つ並んでいるうちの一つ、京香のベッドにオドオドしながらも腰を下ろした。英寿は自分のベッドに腰を掛け、互いが向かい合う形となる。座ったと同時にこの言葉を英寿から浴びせられ、ヒカルは申し訳なさそうに身を縮めていた。


「ご、ごめんなさい……」

「年頃なのはわかるけれど、いくらなんでも妹の下着を盗むなんてやっちゃいけないことだろ?」

「え?」


 英寿から言われた言葉に口を開けヒカルは目を丸く見開く。


「これはあずみにもお母さんにも言わない。約束する。でももうこんなことするな! その下着、あずみがいない間にちゃんと戻しておけよ」

「あ……はい」


 すると英寿はベッドから腰を上げ、その下着をヒカルに返し寝室のドアを開けた。そして薄い微笑を浮かべこんなことをヒカルに伝える。


「お前がちゃんと男だって初めて実感できて、すごい不謹慎なんだがお父さん嬉しかった。あ、これも秘密な。じゃ!」


 バタンッ


 ドアが閉められたその空間には英寿のわずかな加齢臭と静けさだけが漂う。その空間にいるヒカルは閉められた音の余韻がまだ残っているドアをボーッと見つめていた。


(なんかお父さん勘違いしてた……。でもこれで良かったのかな?)


■■■


バタンッ


 風呂から上がってきたヒカルは英寿に見つからないように早足で自分の部屋に戻ってきた。もちろんブルーのパジャマの下にはあの淡いピンク色の下着をつけている。


(あぁ、お父さんに会わなくてよかった。もし下着を着けていることを知られたら、『妹の下着をつけて、お前は変態か!』って言われて今度こそ殴られそうだし)


 そう思いながら勉強机に置いてある夢の液体を手に取るヒカル。


(あぁ、お父さんにも早く女性として認めてもらうために早くこれを飲まなくちゃ!)


 そしてヒカルはその小瓶のふたを開け赤と白が混ざったいちごミルク色の液体を口にする。

 

 ゴクッ


「うっ、色が色だからミルクっぽい味を想像して飲んだのに全然味しない……。なんかバリウム飲んだみたい。って飲んだことないけれど。はははっ」


 その液体を飲んで一瞬、顔が歪むもなぜか最後には笑みがこぼれるヒカル。


「さてと、ベッドに入って寝るとしますか!」


 そう言うとヒカルは部屋の電気をパチリと消し、ベッドの中へと入った。周りのマンションの灯りのせいで消して真っ暗にはならないヒカルの部屋。しかし不気味な影がじゅうたんに映り込み、ヒカルの部屋はいつもより暗く感じた。当の本人は嬉しさのあまりそんなことには気づかず顔をほころばせながら頬を枕につける。


「私の夢はもうすぐそこ……」


 そしてヒカルは目を閉じ夢の世界へと入っていった。しかしそこに何者かが窓から入ってくる。ゆっくりと窓を閉め、その者はヒカルの目の前に立ち心の中でこう呟く。


(負のエネルギーを採取しに来ましたわ。悪く思わないでくださいね。加藤様)


 続く

ミルヒです!

第三話を読んでくださりどうもありがとうございます<(_ _)>

本日は二話連続投稿しました! どうでしたでしょうか? なんか父親の勘違い、可愛いらしいですよね(笑)

では明日もお楽しみに!

ミルヒ


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