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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース7:耳が聞こえるようになりたい(満里奈編)
78/109

第八話

 ■■■


「えぇっと、まずひき肉をこねて、みじん切りにしたキャベツと玉ねぎとニラを入れる……」


 日曜日の今日は特別な日。


「へぇ~、隠し味に醤油を入れるんだ~。お父さん気づくかな? フフフッ」


 それはお父さんの誕生日。今私はクックパッドを見ながらお父さんの大好きな餃子に初挑戦していた。


「あ、ニンニク入れるの忘れた!」



 悪戦苦闘しながらも午後六時、ついに食卓に手作り餃子を並べることができた。


「う~ん! いい匂い! 我ながら結構いい感じ!」


 ピッピー ピッピー ピッピー


「ごはんも炊けたみたいね! タイミングバッチリじゃん! あとは冷蔵庫からお父さんの大好きなチーズケーキを取り出して……」


 そう言いながら私は食卓テーブルの上に今日の朝買ってきたチーズケーキをホールごと餃子の横に置いた。


「あとは今日の主役を待つだけね」


 そんなことを呟きながら幸せな面持ちでお父さんの帰りを今か今かと私は待っていた。



 しかしお父さんは六時半を過ぎても帰ってこない。


「おっかしいなぁ~。六時に帰ってくるって言ってたのに、どこふらついてんのよ?」


 頬杖をつきながら私はぶつくさと文句を言っていた。そんな私の文句も空しく時刻は刻一刻と進む。そして時刻は八時を回った。


「も~う! おっそ~い! いい加減にしてよね! もしかして誕生日パーティーのこと忘れてパチンコでもやってる?!」


 私は怒り心頭でお父さんに電話をかけた。


 プルルルル プルルルル プルルルル プルルルル


 コール音が耳に鳴り響く。そして十五回目のコール音で留守番電話サービスに切り替わった。私はメッセージを入れずに通話終了ボタンをタッチする。


「もーう、信じらんない……」



 そして午後九時が過ぎた。あれから三回ほど電話を掛けるもいまだに繋がらないでいた。


「本当に一体何してんのよ?」


 一瞬変な予感が頭をよぎる。


「ダメよ、そんな不吉なこと思っちゃダメダメ!」


 そして私はもう一度お父さんに電話をかけた。しかし――――


「どうして出てくれないのよ!!」


 なぜかわからないが電話が全く繋がらない。怒りと不安な気持ちが入り混じり何ともやるせない気持ちになっていた。


「なんで? なんでよ……?」


 せっかく頑張って作った餃子も今ではすっかり冷たくなっている。


 グゥーー


「もーう! 先に食べてやる!」


 茶碗にご飯を少量盛り、小皿に餃子のたれを入れる。初めてこの家で一人だけの食事をする。


「いただきます……」


 小さな声で呟くように言ったのになぜかこの部屋によく響いた気がした。そして私は生まれて初めて作った餃子を一口口に運ぶ。


 パクッ


「……おいしい……。こんなに美味しくできたのに……美味しいのに……お父さんに食べてほしかったのに……」


 そんなことをぼそりと言いながらいつの間にか私は涙を流していた。その涙が餃子のたれにぽたりと落ちる。箸で持ってるもう一口分の餃子をそのたれにつけ私は泣きながらそれを口にした。


「グスッ……さっきよりもおいしいじゃん……」


■■■


 午後十時、私は一人ぼっちの食事を済ませ、一人分の食器を洗い、そしてお風呂に入った。鼻の下まで浴槽につかりこんなことを考える。

 

 ブクブクブクッ


 もしかしたら今お風呂に入っている間にお父さんが帰ってきてるかも!

 浴槽の中で私は淡い期待を寄せながら再びブクブクと唇を震わせながら息を出した。


 お風呂から上がり、パジャマに着替えた後私は浴室から出て耳を澄ましてみる。

 何も聞こえない……。

 不安が私の頭をよぎる。ゆっくりとした足取りでリビングへと向かう。リビングの扉のドアノブを握りゆっくりとそれをひねった。そしてゆっくりとそれを開ける。


 ガッチャ


 少しだけ開け、その隙間に顔を入れる。


「……なんで……」


 やはりリビングにはまだお父さんの姿はなかった……。冷めた餃子とチーズケーキ

だけがひっそりと食卓傘の中にあるだけだった。

 ずっと置いたままにするのも乾燥しちゃうし、冷蔵庫に入れようか……。

 そんな憂鬱な気持ちで私はスタミナたっぷり餃子とチーズケーキを冷蔵庫の中に入れた。


「はぁー……」


 そんなため息もつかの間、冷蔵庫のドアを閉めたと同時に家の電話がこの部屋に鳴り響く。


 ジリリリリッ ジリリリリッ


 もしかしてお父さん?!


 そう思いながらろくに電話のディスプレイも見ず私は素早く受話器を手に取った。


「もしもし! お父さん?!」

『もしもし、山田さんの娘さんでいらっしゃいますか?』


 しかしそんな言葉も空しく電話の相手の第一声ですぐにお父さんじゃないとわかり肩をガクリと落とした。暗い面持ちのまま私は「はい」と一言だけ発する。


『あ、あのわたくし、○○警察署の田宮たみやと申します』


 警察……?

 その言葉を聞いた途端、私の背筋に寒気が走る。

 まさか……ね……。

 私は顔を強張らせながら無言で田宮と言う名の警察官の話を聞いた。


『あの、お父様のことで話があるんですが今よろしいでしょうか?』


 もう嫌な予感しかしなかった……。「ゴクリ」と唾を返事代わりに飲み込み田宮さんの言葉の続きを絶望感をあらわにした表情を浮かべながら聞く。


 そして彼は私の一番望んでいなかった言葉を告げた。


『午後五時半ごろ、お父様は何者かに銃で撃たれ、大変残念なことに……お亡くなりになりました。即死だったようです。犯人は逃走中ですが目撃者が何人かいたので――――』


 もう、何もかも……おしまいだ…………。


続く

こんにちは、はしたかミルヒです!

第八話を読んでいただきどうもありがとうございます!

満里奈のお父さん、亡くなってしまいましたね……。満里奈はこの先一体どうするのでしょうか?

ではまた明日♪

ミルヒ


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