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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース7:耳が聞こえるようになりたい(満里奈編)
74/109

第四話

■■■


 コンコン コンコン


 秋田イェーガーと初めて会ってから三日後の昼、私は彼の家を再び訪れた。しかも今度は一人だけで。そう、私は正式な秋田イェーガーのアシスタントとなったのだ。


 ガチャ


 扉を開けると彼は私の顔を見た瞬間、視線をそらし緊張した面持ちでこう告げる。


「あっ、どうぞ上がってください」


 彼の声は上ずっていた。それが可笑しく私はついクスリと笑ってしまったのだが、彼はそんな私の笑いにも気づかないくらいに緊張していたようだった。


「お邪魔します」


 私はそう言いながら軽くお辞儀をし彼の家に上がった。


「ちょっとはきれいになっただろ? 南ちゃんに言われてちょっとは片づけたんだよ」


 彼はいまだに緊張した面持ちで頭をポリポリかきながら部屋に入る私に自分の部屋をきれいにしたことを告げた。私は部屋一面を見回しほぉーと感嘆の声を上げる。

 きっと私が来るからきれいに片づけてくれたのね。いいとこあるじゃん……。


「確かにきれいになりましたね……」


 思わず薄い笑みが出る私。そして近くにあった座布団に座るとなぜか秋田イェーガーは嬉しそうにニコニコ笑みを浮かべ、自身の作業机から原稿を数枚取り出し私にそれを見せた。


「あ、あのさ、早速だけど山田さんの背景の上手さにあやかって、ここの原稿に公園の背景を入れてほしいんだ。いいかな?」


 私はもちろん二つ返事で答える。


「はい、了解しました」


 すると秋田イェーガー……いや、もう私は彼のアシスタントなんだからこういうべき……秋田先生は何かを思い出したように私に話し出した。


「あ、そうだ、俺の漫画って見たことある? 『俺の姉がそんなにヤクザなわけがない!』っていうエッセイ風ギャグ漫画描いてるんだけど」


 秋田先生はそう言いながら本棚に置いてある『俺姉』の一巻を取り出し、私に渡した。その本を手に取った私は「もちろん、知っています。タイトルだけ」と告げる。すると秋田先生は苦笑いを浮かべ頭をポリポリとかきながらこう話す。


「タ、タイトルだけって……。まぁ、いいや。じゃぁ、俺姉の大まかなあらすじを説明するね」

「はい」

「物語の内容はね、主人公 徳治とくじがヤクザな姉、真弥まやに色々と振り回されながらも姉弟のきずなを深めていくって話なんだけど……まぁ、ほとんど俺の実話ですわ。ははははっ」


 もしかして、私が昔にしたアドバイスを聞いてくれたの?

 そう思った私は、とっても嬉しくなりつい笑い声が漏れてしまった。


「ふふふふっ」

「ど、どうしたの? そ、そんなに俺の話可笑しかった?」


 私が急に笑い声をあげたせいで秋田先生は額に汗をにじませながらオロオロしていた。


「そ、それで話を戻すけど、この漫画の背景を山田さんに描いて欲しいんだ。あと時間が余ればベタも頼むかもしれないけどいいかな?」

「はい、私は秋田先生のアシスタントですから」 


 そう言った後私はA4サイズの紙が入るような大きなバッグから自分用の作業道具を取り出す。


「あっ、もし必要な道具があれば俺の机にあるから、そこから勝手に取って使っていいからね」


私は「ありがとうございます」と言ってすぐさま作業に取り掛かかった。するとまたもや秋田先生は私に気を使ってテーブルを指さしながらこう言ってくる。


「ちょっとテーブル小さすぎるよね。一応これより少し大きめのテーブルがあるから持ってこようか?」

「いえ、大丈夫です」

「そ、そう……」


 そんな気を使わなくたっていいのに……。まぁ、いい人なんだろうな、秋田先生って……。


■■■


「う、上手い……」


 秋田先生は息を漏らしながら感嘆の表情を浮かべていた。しかしなぜかそのあとにやるせない表情を浮かべ原稿を見つめる秋田先生。口を引きつらせながらも私の方を振り向くと秋田先生は私に次の指示を出す。


「あ、ありがとう。これでオーケーだよ。じゃぁここと、ここの背景もお願いしちゃおうかな?」

「はい」


 私は原稿をもらい、すぐに作業に取り掛かる。

 ほんと、背景を描くのって楽しいな! ……ってなんか秋田先生の視線を感じるんですけど……。

 そう思いちらりと秋田先生を見てみると彼は微笑ましげな眼差しを私の方に向けていた。

 な、なんかやりづらいんですけど……。そんなに私の作業が気になるのかな?


 

 そうこうしているうちに時刻は午後七時を回った。私は頼まれた仕事を全部終わらせ秋田先生に確認をしてもらう。そして――――


「ありがとう。完璧だよ! 今日はもうこれで終わりだから、また来週頼むね。ご苦労様でした」


 秋田先生は笑顔で私にねぎらいの言葉をかけるも私は先生のその言葉に疑問符を抱いた。


「え? 来週ですか? 明日は来なくてもいいんですか?」

「大丈夫。あとは俺一人で間に合うから。ほら背景、山田さんに全部描いてもらったし。もう仕事は仕上げくらいしかないから。ほんとに助かったよ。ありがとな」


 そう言うと再びニコリと笑う秋田先生。しかし私は秋田先生の表情とは裏腹に複雑な表情を浮かべていた。


「そう……ですか。で、ではまた来週、失礼しました」


 私はくるりと秋田先生に背を向け玄関へと向かい靴を履く。

 来週か……遠いな……。アシスタントって毎日手伝うものだと思っていたんだけど違うんだね……。

 しかしそう思っていたのもつかの間、私がため息をついたと同時に秋田先生は私に声をかけてきた。


「はぁ」「も、もしよかったら夕食、どっかで食べないか? 近くにラーメン屋とか安くてうまい定食屋とかもあるし! もちろん俺のおごり!」


 私はその声の方向を振り向く。その途端なぜか秋田先生はハッとしたような表情を浮かばせ顔を赤くし気まずそうにしかしながら床を見る。

 私はそんな秋田先生のしぐさを不意にも可愛らしいと思ってしまった。薄い笑みを浮かべ私は秋田先生にこう告げた。


「私、ステーキ食べたいです!」


■■■


「わりぃ、ステーキ食べれるところ、ここしか思い浮かばなくて……」


 私たちは今、先生の家から歩いて十分ほどのところにある全国展開している有名なファミリーレストランに来ている。

 先生はなぜか私をファミレスに連れてきたことに対して謝っていた。私はなぜ謝るんだろうと疑問に思いながらも「いえいえ」と言ってメニューを眺める。

 ファミレスのメニューを見る時ってほんと、テンション上がるな! もーう、どれもこれもおいしく見えちゃう! どうしよう……? 迷っちゃうなぁ……。

 考えること約三分、私は決めたことを先生に告げると先生は微笑ましげな顔をしながらテーブルの上に置いてある呼び出しボタンを押す。すると数秒もしないうちに店員がオーダーの端末機器を手に持ち私たちのテーブルにやってきた。


「お待たせしました、ご注文のほうをどうぞ」

「えぇっと、俺はから揚げ定食を……山田さんは?」

「私は、サーロインステーキ&カニクリームコロッケをBセットで」

「え?!」


 私は涼しげな顔で答えるも先生は驚きの声を出し私を見つめる。私は逆にそんな秋田先生を不可思議な表情で首を傾げながら見つめた。


「いやだってこれすごいボリュームだよ! 食べれる? それにBセットってライスとスープが付くんだよ?!」

「はい、食べれますよ」


 私がニコリと答えると、先生は信じられないというような面持ちで口をポカンと開けていた。


「あのぉ……以上でよろしかったでしょうか?」


 店員が苦笑いを浮かべながら私たちの顔を交互に見る。そんな店員を見て私はこう答えた。


「食後にホットアップルパイもお願いします!」


■■■


「本当に全部食いやがった……」


 秋田先生は私の食した後の皿を見てため息交じりに答えた。


「ごちそうさまでした! あとはホットアップルパイが来るのを待つだけね!」

「ちょ、ちょっと、ホットアップルパイってボリュームすげーぞ……」


 秋田先生がメニュー表のデザート欄を見ながら驚きの声を出す。そんな驚愕の表情の先生を見てニコリと笑い私はこんな言葉を発した。


「でも、バニラアイスまで添えてあってお得だと思いませんか?」



 あっという間に私はデザートを食べ終えジュースを飲み干すと満足げな表情を浮かべ、フゥーとため息をつく。

 そんな私を不思議そうに眺めながらなぜか自身のお腹をさする秋田先生。

 逆に質問なんだけど、先生は私より食べないのに私より太っているのはなぜなんだろう?


「じゃぁ、そろそろ行こうか」

「はい!」



 私たちは席を立ち、会計を済ませる。ファミレスに行く前におごると言っていた通り、秋田先生は私の分までちゃんとおごってくれた。私は深々と頭を下げ先生にお礼をする。


「先生、ごちそうさまでした」

「あぁ、いいって! 山田さん、今日頑張ってくれたんだし」


 そう言いながら手を左右に振る秋田先生。私はそんな先生を見てつい微笑んでしまう。そんな先生も私につられてかニコリと笑みを浮かべていた。



 店を出ると秋の夜、私はすぐさまジャケットを羽織り、両手をそのポケットに入れる。


「今日は本当にサンキュな。じゃぁ、これで」


 そう言って秋田先生は長ティー一枚しか来ていない上半身を手の摩擦であたためながら家へ帰ろうとしていた。

 これでもう終わりか……。

 そう思った瞬間ここで別れるのがすごく惜しいと思った。私に背を向け歩き出そうとする先生を見るや否や私は彼の背後に声をかける。


「先生! こ、これから一緒にアニメみませんか?」


続く

こんにちは、はしたかミルヒです!

最近ミルクティーにハマってしまいまして、一日に何回も飲んでいます。

ここで私流カンタン ホットミルクティーの作り方をお教えいたしましょう!

1、お湯を沸かす。

2、マグカップに1/3ほど、お湯を注ぐ。

3、そこにお気に入りの紅茶のティーバッグ(ホチキスがついていないもの)を入れよく色が出るまで待つ。(濃いかな?って思うくらい)

4、マグカップがいっぱいになるまで牛乳を入れる。

5、ティーバッグをマグカップに入れたままレンジでチン!(※ホチキスがついているティーバッグでやると非常に危険ですのでやめてください!)

6、ティーバッグを取り出し、お好みで砂糖を入れて出来上がり!

ミルクティーが好きな人はぜひ試してみてください♪

ってなことで第四話を読んでくださりどうもありがとうございます!

次回もお楽しみに♪

ミルヒ


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