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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース7:耳が聞こえるようになりたい(満里奈編)
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第一話

「満里奈、夕飯の時間だぞ。パソコン止めて早く食卓に着きなさい」

『わかった』


(ふふふっ、これでよしっと! この人、漫画描く才能はあるんだけど、自分がどのジャンルに合っているか全くわかってないからね。でもこれでわかってくれるはず)


 漫画の批評サイトを見て微笑を浮かべるこの女性。彼女は今まさに秋田イェーガーの作品にレビューを投稿しようとしていた。


(よし、クリック!)

 

 投稿者:まり~な

 まったくもって面白くない話。(作者の自己満足漫画なんて誰も見たくない)世間がどんな漫画を求めているのかもっとリサーチするべき。あと絵がへたくそ! なにもかももっと勉強するべき!



 ケース7:耳が聞こえるようになりたい(満里奈編)



『え? 今日はごはんだけ?』


 食卓テーブルについた満里奈が不満げな表情を見せ父親の山田龍二やまだりゅうじに手話で尋ねる。そんな龍二も手話で答えた。


『今日は和歌子がおかず持ってきてくれるからな』

(またあいつか……)


 そう思いながら心の中で舌打ちをする満里奈。その時ここのアパートのチャイムが鳴った。


 ピンポーン


 父親の龍二が玄関の扉を開けると彼女が笑みを浮かべながら入ってきた。


「お邪魔します」

「お、たくさんおかず持ってきたようだな」


 その声が聞こえたと同時に顔を突っ伏す満里奈。


(いつもあいつは私たちの邪魔をする……最悪)


 食卓テーブルのあるリビングの扉を開ける龍二。その後ろに彼女が大きめのバッグを抱えながら入ってくる。


「満里奈、挨拶しなさい」


 父親の龍二がテーブルに突っ伏している満里奈の肩を叩き挨拶を促す。その顔をゆっくりと上げる満里奈。彼女は満里奈の顔を見て微笑み、手話で挨拶をした。


『満里奈ちゃん、こんばんは』


 満里奈はその挨拶に手話で『こんばんは』とだけ投げやりに答える。


(チッ、挨拶くらいしか手話できないくせに……)


「今日は肉じゃがときゅうりの糠漬け、そしてデザートにコーヒーゼリーを持ってきたんだよ! あとは豆腐を持ってきたから今、味噌汁作ってあげるからね」


 そう言うと彼女はそのバッグから容器に入れてある彼女の手作りの料理と自身のエプロンを取り出し、そのエプロンを身に着ける。


「いつも悪いな、ありがとよ。あ、ところでもうナイター始まってんな」


 そう言いながらテレビのスイッチを入れる龍二。


 ピッ


『ピッチャー金子、投げました!』


「?!」


 テレビから聞こえてきた『金子』と言う言葉に反応し、台所に立つ彼女は一瞬手を止めテレビの方を振り向いた。


『ストライク! バッターアウト! 金子、見事に三者三振!』


「ほーう、ノボル君、今シーズンも順調だな!」


 龍二は腕を組み金子ノボルの活躍にニンマリと笑みを浮かべていた。同じくそのシーンを見てホッと胸をなで下ろす彼女。


「良かった……」


 小さな声で彼女はそう一言呟いた。


 金子和歌子――――。彼女は金子ノボルの母親であり、山田龍二の恋人である。


■■■


「さて、食べるか」

「えぇ、たくさん食べておくれ」


 その言葉に満里奈は軽く手を合わせ箸を手に持つ。温め直された肉じゃがとそして出来立ての味噌汁から湯気が立ち、その湯気が満里奈の鼻を刺激させる。


(悔しいけどいい匂い……)


 そう思いながら味噌汁を一口すする。


(お、おいしい……)


 そしてきゅうりの糠漬けを一口口に運ぶ。


(これもおいしい……)


「満里奈ちゃん、お味はどうだい?」


 糠漬けを食べた満里奈の顔を笑顔で覗く和歌子。満里奈は鼻の頭を右手の親指と人差し指で摘むようにして、2回程手首を返す。


「ん?」


 その手話を理解できなかったようで和歌子は龍二の顔を見て通訳してほしいことを目で合図した。龍二は苦笑いを浮かべながら満里奈を咎めた。


「満里奈、せっかくこんなおいしい料理を作ってもらったのに『まぁまぁ』はないだろ? ほんとにお前は素直じゃないな」


 そんな龍二の言葉に満里奈はそっぽを向く。


(なによ? お父さんが勝手にこの女と付き合ったくせに。あの約束はどうしたのよ? この女からお金を搾り取ったら捨てるって……そんなこと言っておきながら今でもずるずると付き合っちゃってるじゃない? 嘘つき……お父さんの嘘つき……)


「そうかい。ちょっと満里奈ちゃんにはお口に合わなかったみたいだね。あ、じゃぁ、この肉じゃがはどうだい? 私肉じゃがは得意だからね」


 そう言って和歌子は、満里奈専用の可愛いうつわに肉じゃがを盛りそれを満里奈の前に置いた。ムスッとした表情を浮かべながらもそれを一口口にする満里奈。


(……こ、これもおいしい……)


  ■■■


「じゃぁ、私はこれで失礼するわね」

「おう、気を付けてな」


 そう言うと和歌子は空の容器が入ったバッグを肩にかけリビングのドアノブを手に取る。


「満里奈ちゃん、またね」


 ドアノブを手に取りながら後ろを振り返り満里奈に手を振る和歌子。和歌子の視線に気づいた満里奈はその挨拶にただ軽く手を振ってすぐに漫画に視線を戻した。


(私のご機嫌を取ろうったって無駄よ。お父さんは私だけのものなんだから……あ~、耳が聞こえる様になれば、こいつに面と向かって言いたいことも言えるのに……)


続く

こんにちは、はしたかミルヒです!

ケース7:耳が聞こえるようになりたい(満里奈編)第一話を読んでくださりありがとうございます!

この話はちょっとばかし手こずりました(笑) でも頑張って書いてみたので喜んでいただけると嬉しいです。ちょっと胃が痛くなってきましたのでこの辺で(笑)


ミルヒ

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