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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース6:売れっ子漫画家になりたい(英治編)
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第四話

※~おしらせ~ 本日は三話連続投稿いたします!

  ■■■


 午後八時、英治はバイトを終わらせ、行くときと同じ道を通って家路に向かう。


(あっ、ATMでカネ下ろそうと思ってたのに忘れちまったよ……。亜弥にさっさと返さないとまーた変なこと言われるよな~)


 そんなことを思いながら英治はATMがあるコンビニを探していた。その時古びた外観の店が再び英治の目に映る。そこで思わずぴたりと足を止めてしまう。


(あの店……バイト行くときに中村アナがあそこから出てきたんだよな。一体何の店なんだろ? 見た目かなり怪しいんだけど……中村アナ何を買ったんだ?)


 英治はその場で一分ほど考えた結果その店に入ることを決意する。


(気になるな……入ってみるくらいならいいよな? よし……)


 店の扉をゆっくりと開ける英治。

 

 カラ~ン


 店の中は真っ暗になっており誰もいる気配がないように思えた。


(うわ! 店の中真っ暗……閉店してるのか? ならドアに鍵掛けとけよな……)


 そう思い扉を締めようとした瞬間――――


「秋田様でいらっしゃいますね?」

「え?」


 英治は思わずその言葉に驚きの表情を浮かべる。


(暗闇なのに俺の顔が見えんのか? ってかなんで俺のこと知ってんだ?)


 そんなことを考えながら英治は声がした方向へと目を凝らす。すると――――



「…………わーーーーーーーーー!!」


 

 いきなり英治の目の前に現れた女性。


「いっらしゃいませ」

「び、びっくりした! マジ死ぬかと思った……」


 英治は胸に手を当て必死で鼓動を抑えようとする。


「秋田様でいらっしゃいますね? ワタクシドリームショップの店員をしております、夢子と申します」


 そう言うと夢子は微笑を浮かべながら英治にペコリと頭を下げる。


「つーか、いるんなら灯りくらいつけてくださいよ……。いきなり目の前に現れたらびっくりするじゃないっすか」

「申し訳ございません、秋田様。しかしすでにドリームショップは閉店しておりまして……」

「閉店してんなら出てこなくったっていいっすよ。ってかドアに鍵かけとかないと危ないっすよ」

「そうでございますわね。大変申し訳ございませんでした」


 夢子は英治に申し訳なさそうな表情を浮かべながら頭を下げ詫びる。


「じゃぁ、これで……」


 今度こそ英治は扉を閉めようとしたとき再び夢子は英治に声をかけた。


「あの、秋田様! せっかくご来店されたので店の中に入ってみてはいかがですか?」

「え? いいっすか? ってかずっと疑問に思ってたんですけどなんで俺の名前知ってるんですか?」


 英治が思っていた疑問をぶつけると夢子はニコリと笑いこう答える。


「秋田様、ワタクシは秋田様のことは何でも存しております。ウフッ♪」


(うわっ……全然答えになってねー! この店員不思議ちゃんか?)


「わ、わかりました……。と、とりあえず電気でもつけましょうか?」


 英治の言葉に夢子は慌てて店内の電気をつけた。


 パチッ


「秋田様、何度も申し訳ございません。大変失礼いたしました」


 夢子は申し訳なさそうに再び頭を下げた。しかし英治はそんな夢子の詫びが耳に入らなかった。なぜなら――――



「な、なんだこの店??」



 頭がくらくらするくらいの派手な内装に目がくらんで思わず腰が抜けてしまった英治。全体の内壁の色はショッキングピンク。その上に黒と白のうずまき模様が描かれていて、異世界に来たような感覚に陥る。


「秋田様? 大丈夫でいらっしゃいますか?」


 そう言いながら夢子は地べたに座り込んでしまった英治に手を差し伸べる。


「あっ、すんません…………ってなんだーーー? そのカッコ?!」


 またもや驚く英治。夢子の今日のファッションはカラフルなドットが目を引くミニのワンピースにお決まりのピンクのツインテールを目玉が付いたヘアゴムでまとめている。足元はこれまた派手なレインボー柄のニーハイソックスに茶色のロリータシューズを履いていた。そして背中にはいつも通りの蝶の羽。

 英治は思わず声を出す。


「お前はキャリーパニュパニュか!」

「きゃりーぱにゅぱにゅ? ですか?」


(こいつキャリーパニュパニュのこと知らないんだ……。てっきりファンだと思ってたけど。知らないでこんなファッションするって、いったいどんな神経してるんだ?)


 英治は苦笑いを浮かべながら夢子の手を借り、重い体を上にあげる。


「あっ、すんませんね。でもマジでびっくりしちゃって。初めて見ましたよ。こんな派手な店」


 英治は言葉を発しながら店内をもう一度よく見まわした。


「皆様ここに来ますと必ず驚かれますわね。まぁ私もこの内装は少々派手過ぎだと思いますが、店長の趣味なので。ウフッ♪」


(店長の趣味すげーな……。店長って女か? それとも男? って男だったらヤッベー趣味してんな……ってかこの店員の服も店長の好みだったりして……)


 その瞬間ハッと何かをひらめいた英治。


「もしかしてここの店長、下田歌劇しもだかげきじゃないっすか? ってか絶対そうでしょ! おれもうここの店長はあの人って決めつけちゃいましたからね!」


 なぜか誇らしげに話す英治だったがそれを聞いた夢子はきょとんとした顔になる。


「あのぉ……下田歌劇さまというのは……?」

「……下田歌劇も知らんとかい? あんたホントになんも知らんとね」


(ってか何で俺九州弁? つーかこの九州弁合ってる?)


「では、秋田様、秋田様の夢をおっしゃってくださいますか?」

「は? な、何で急にそんな質問?」


 突然の夢子の意味不明な質問に当然英治は頭に疑問符を浮かべる。


「あっ、申し訳ございません。ここが何のお店なのか言い忘れておりました」

「確かに俺もここが何の店か聞くの忘れてた」


(だって店内が凄すぎてそんな考えすらも吹っ飛んじゃったんだよね~。だよね~♪ 言うっきゃないかもね そんな時ならね~♪ こんな歌昔流行ったよね?)


「この店、ドリームショップは店名通り夢を売っているお店です。ですからお客様の夢はどんな願いでもかなえて差し上げることができます。さぁ、秋田様の夢をワタクシにおっしゃっていただけますか?」


 夢子は店の説明を言い終えるとニコリと英治に向かって微笑んだ。


「…………は?」


 固まる英治。ようやっと出てきた言葉が「は?」だった。


(コイツってかこの店かなりヤバくねーか? 頭にうじ虫わいてんのか知らんけどあんな意味不明なこと普通の人間は淡々と言わねーぞ……)


「理解してもらうには少々お時間がかかってしまうかもしれませんわね。ウフッ♪ しかし今、私が申し上げたことはすべて本当のことでございます」

「そんな真剣な顔で本当のことだって言われても、俺は普通の人間だからなかなか信じることは出来ねーんすよね」

「とりあえず秋田様の夢をおっしゃっていただきますか? もちろん秋田様は夢はお持ちでございますわよね?」


 夢子にそう言われ腕を組み「ウーン」とうなりながら表情を曇らせる英治。


「夢はもちろん持っていますよ。でもね……」

「おっしゃってみてくださいませ。おっしゃるだけならタダでございますわよ♪」


 夢子の真剣なまなざしに英治の頭の中の何かがほぐれる感じがした。


(まぁ、確かに言うだけならタダだよな……)


 そう思い英治は頬を赤く染めながらぼそぼそと小さな声で自身の夢を夢子に伝える。


「う、売れっ子漫画家になりたい……」


(うわーーー! 言っちゃった、言っちゃったよ俺。なーに自分の夢、こんな頭パッパラパーな不思議ちゃんに伝えてんだよ? バカか俺は……)


 そう思い自分の言ったことを後悔する英治であったが夢子はニコリと笑い英治の夢を絶賛する。


「秋田様の夢はなんと素晴らしい! 素敵な夢でございますわね! 今すぐにでも売れっ子漫画家になって子供たちに夢を届けてほしいですわ♪」


 夢子にそんなことを言われ英治は再び頬を染める。


「ま、真正面でそんなこと言われると照れるからやめてくださいよ……」

「いいえ、照れることではございませんわ。ではただいま秋田様の夢の液体を持ってまいりますので少々お待ちくださいませ~♪」


 そう言うと夢子はふわりと軽い足取りで店の奥へと入って行った。


(夢の液体? なんじゃそりゃ? それ飲めば夢がかなうってか? さっすがにそこまで行くとおとぎ話だよな~)


 そんなことを思いながら英治はもう一度店内をじっくりと見回した。


(ん? レジのところにクマのぬいぐるみ……売り物か? でもその割にはボロボロだよな? 俺の頭に巻くタオル以上に布がほころびてんぞ……ん? ってかあのクマに白い紙きれが刺さってる)


 英治はなぜか無性にその紙切れが気になりレジに近づく。そしてそのクマのぬいぐるみに刺さっていた白い紙きれを手に取る。


(あっ、なんか書いてある。 えぇっと……『め……)


「秋田様、お待たせいたしました!」

「うわっ!」


 いきなり声をかけられびっくりしてしまった英治。思わずその紙切れを落としてしまった。


「秋田様、大変申し訳ございません。また驚かせてしまって……」


 夢子は英治に今日で四度目の頭を下げる。


「い、いやこっちこそすんません。勝手にお店のメモ見てしまって……」


 そう言いながら英治はその紙切れを拾おうとしたのだがそれよりも先に夢子がサッと拾い上げ、それを素早くポケットの中へとしまった。


「いいえ、気にしないでくださいませ。それよりも夢の液体が出来上がりましたよ!」


 英治の夢の液体はきれいな朱色に染まっており、まるでパワーストーンのように何かを秘めている匂いがその液体から漂ってきた。

 英治はその液体をまじまじと眺める。


(綺麗なんだけど……普通の考えで行くと……)


「これって飲むんですよね?」


 英治が額に汗をかきながら夢子に尋ねる。夢子は満面の笑みを浮かべ、元気よく「はい!」と答えた。


(やっぱし……なんか飲んだら死にそうだな……)


 そんな英治の心の声を聞き取り夢子はこう答える。


「秋田様、ご安心くださいませ。この液体を飲んで百パーセント死ぬことはございません。ワタクシの命をかけてでも保証いたします」


 夢子の真剣なまなざしに英治は信じようと頭では思いたいのだがその液体を飲むことを考えると疑心暗鬼になってしまう。


(毒々しいよな……ってか飲んで大丈夫だったとしても本当にこれで自分の夢が叶うのか?)


 やはりそこは英治じゃなくとも誰もが疑問に思うところ。つばをごくりと飲み込み、あごに手を当てながらその液体をじっと眺めていると夢子は英治に夢の液体の使用方法について話し始めた。


「先に使用方法について説明させていただきますね。就寝前にその液体をすべてお飲みください。そしてそのままお休みください。そうすると実際に秋田様の将来の出来事が夢の中で体験できるのでございます。もし万が一、体験後にお気に召さなければ、次の日にその空になった瓶をわたくしにお戻しください。その瓶と引き替えに秋田様にはお支払いいただく金額全てお返しいたします。しかしその時点で秋田様との契約は無効となりますのでご了承ください。いかがでしょうか?」

「夢が気に入らないのなら金は全額返してくれるのか……」

「はい、もちろんでございます。ウフッ♪」


(う~ん、なら試してみるのも悪くないかな……というか夢の液体っていくらなんだ? あとこの店員の「ウフッ」のあとの「♪」が気になってしゃーないんですけど……スイーツ(笑)かと思っちゃうだろ)


 すると再び英治の心を読み取った夢子はその疑問に答えた。


「夢の液体の値段はお客様の夢によって、お客様の強い願望によって変わるのでございます。ですので秋田様の夢の液体の値段はいくらにしましょうか……」

「ふ~ん、客の夢によって、強い願望によって変わるんだ~。ってこの場で値段決めるのか?!」


 英治は驚きの表情で夢子を見るも、英治の言葉は耳に入っていない様子で夢子は顎に手を当てながら夢の液体の値段をいくらにするのか真剣な顔で考えていた。そして数秒後――――


「秋田様の夢の液体の値段、決まりました!」

「んでいくらなんすか? 夢の液体とやらは」

「秋田様の夢の液体のお値段は……」


 ゴクリと音を出し、つばを飲み込む英治。夢子はそんな英治に笑みを浮かべながら見つめ、そして値段を発表した。


「はい、五万円でございます! ウフッ♪」

「ご、五万か……高けーな。俺の今の財産じゃとてもじゃないけど手に入れることができん……」

「さようでございますか……」


 英治も夢子も肩を落としがっかりとした表情を見せる。


「すんません、でも今の俺には簡単に五万を出せるような経済力はないんすよ」

「どういたしましょう……」


 夢子は必死で考える。


(ってかこの店員、どうしても俺に買わせたいんだ……)


「あのー、じゃぁ俺これで帰ります……。どうもすんません」


 そう言い英治が店から出ようとしたとき、夢子は何かをひらめいたようで手のひらをポンッと叩いた。


「秋田様、夢の液体、欲しくはありませんか?」

「いや、そりゃー欲しいけど。でもさっきも言ったけど俺、カネないんすよ」

「ではこうしましょう。秋田様にこの液体を千円で売って差し上げます」

「え?! せ、千円?! ってなんでいきなり五万から千円になるんだよ? どう考えたっておかしいだろ??」


 英治は信じられないといった表情を見せるが夢子はお構いなしに話を続ける。


「千円でこの液体を売って差し上げますが、ただし夢がお気に召さなかった場合には――――」


 夢子は英治の顔をから目を離さない。そんな夢子のまなざしを見てドキリとする英治。



「キャンセル料として五十万円を請求させていただきます」



「ん? キャンセル料としてごじゅう……」


 夢子の言葉を復唱しつつ英治はハッと驚く。


「キャンセル料、五十万円?!」


「はい、さようでございます。しかし夢をそのまま実現にしたければキャンセル料は支払う必要はございません。実質、たった千円で夢の液体が手に入るのでございます! 大変お買い得でございましょう?」


(まぁ、冷静に考えればこの店員の言う通り、お買い得かもな……。だって自分の望みの夢が気に入らないわけないもんな……。それに夢の液体がインチキだったとしてもキャンセルしなければいいことだし。騙されたとしても千円で済むわけだ。オレオレ詐欺に比べれば安いもんだ! って俺、オレオレ詐欺なんかに引っかかったことはないよ? いやマジで。まぁでも、キャッチセールスに引っかかったことはあるけど……。羽毛布団買わされたんだよな。あぁ嫌な思い出……まぁ、ふかふかもふもふだったからいいかぁ~)


「いかがいたしましょうか?」


 笑顔で英治に尋ねる夢子。その夢子に英治も笑顔で答える。


「よし、買うよ!」

「秋田様! ありがとうございます!」


 英治は小銭入れからクシャクシャになっていた千円を取り出し夢子にそれを渡す。


「ありがとうございます。確かに千円受け取りました。ではこの夢の液体を秋田様にお渡しいたします」


 夢子は小瓶に入っている夢の液体を英治に差し出す。英治はそれを手に取り、ジーンズのポケットに入れ背中越しに手を振りながら店を後にした。


「じゃぁ、どうも!」

「ご利用ありがとうございました。ウフッ♪」


続く

こんにちは、はしたかミルヒです!

第四話を読んでくださりありがとうございます!

では引き続き第五話もお楽しみください!

ミルヒ


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