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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース6:売れっ子漫画家になりたい(英治編)
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第一話

『まったくもって面白くない話。(作者の自己満足漫画なんて誰も見たくない)世間がどんな漫画を求めているのかもっとリサーチするべき。あと絵がへたくそ! なにもかももっと勉強するべき!』


「な、何だよコイツ! 自己満足漫画作って何が悪い? 作者が好きな話じゃないとうまく描けないだろ! 何が漫画家に向かって『もっと勉強するべき』だ? 本当に言いたいこと言いやがって……はは~ん、さてはお前はSだな……ったく、こんなこと書いた輩は誰なんだ?」


 ブツブツと文句を言いながらこの男は投稿者の名前を確認する。


『投稿者:まり~な』



 ケース6:売れっ子漫画家になりたい(英治編)



「今日、担当者から電話が来るはずだ! 絶対、俺の作品に感動してくれるはず! なんたって自信作だからな~。う~ん、待ちきれないってばよ!」


 ズルズルッ


 綿に弾力が無い薄い座布団の上で即席ラーメンを小さい片手鍋で直接食べながら、にんまり笑うこの男。彼の名は秋田英治あきたえいじ二十三歳。小太りでメガネをかけ、頭にはよっぽどお気に入りなのかかなり使い込んだタオルを巻き、『これぞオタク』といった雰囲気を醸し出している。彼は漫画家を夢見て、学生時代何度も漫画雑誌の新人賞に応募し、大学三年生のときについに念願の漫画デビューを果たした。しかしあれから二年が経過した今――――


「この読み切りでまた連載狙うぞ! 今度こそ、今度こそは……」


 そう、今は一切の連載は無し。デビューして半年後に連載を持ったもののさっぱり売れずあっさり第十話で打ち切り。またさらに半年後、連載をスタートさせるも読者投票で見事ブービー賞……三か月以上もったが結局打ち切られてしまった。それから読み切りで何作か出しているものの連載に持っていけるような作品は未だ描けてはいない。だからこそ、今回の読み切り作品に英治は全神経を集中させ渾身の作品に仕上げたのだ。英治曰く、今までで最高の作品だとのこと。その時、英治の携帯が音を奏でる。


『水しぶきキラキラ♪ 太陽もキラキラ♪ 素敵だね! 輝いてるね! まるで僕たちみたい♪ キラキラ! キラキラ!』


「あっ、この着信はりんさんからだ!」


 英治は急いでテーブルに鍋を置き、近くに敷いてあるなぜかこの家に似つかわしくないふかふかの羽毛布団の上にある携帯電話を手に取り、電話に出る。


「もしもし!」

『もしもし、はやしです。秋田先生、いま大丈夫でしょうか?』

「はい、もちろんですよ! どうでした? 今回は結構自信あるんですよね~! 連載いつから始めましょうか?」


 英治はウキウキとした気持ちを編集担当者のはやしに尋ねる。しかし――――


「あぁ、申し訳ないんですけど、今回の読み切り作品はボツってことで」

「え?」


 英治は林の言った言葉が脳内に行き届くまでにかなりの時間がかかった。しかし、不吉な予感からか顔を強張らせる。そんな英治に衝撃の一撃を与える林。


「いや、あれはないでしょ。自信作? 冗談キッツイ! はははっ」

「え?」


 まだ英治には林の言葉が脳まで到達していないらしい。


「だってあんな漫画、修正したら載せれる以前の問題でしょ」

「え?」

「ちょっと私この後すぐ用事があるんで、また読み切りの依頼来たら電話しますから。では」


 ツー ツー ツー ツー


「え? ボツ……冗談……キッツイ……あんな……漫画……」


 林に言われた言葉を一生懸命脳内で組み立てる英治。


「まとめると……俺の自信作は…………」



「ボツ」



 その瞬間英治の周りにだけ風が吹く。いや嵐、それとも台風だろうか? とにかく強風が英治の周りを凄まじい音を出しながら吹き付けた。

 ヒュー、ヒューーー、ビューーーーン、ビューーーーーーーーーーーーン。


「な、な、何だよ?! 俺の周りにはツンしかいないのかよ! ちょっ、それにツイッターで告知しちゃったし! 俺どうしたらいいんだよ~~!! ダメだ、落ち着け俺。とりあえず……うん、ゆかりんのDVD見よう……」


 その時、またもや携帯電話から今度はベートーヴェンの『運命』が流れた。


 ジャジャジャジャーーーーン ジャジャジャジャーーーーン


「うわ、亜弥からだ……。出たくないなぁ~。でもコイツしつこいし、出なきゃ出るまで何度も運命を聞く羽目になる……」


 英治はかったるそうにしながらも亜弥の電話に出ることにした。


「もっし~」

『何その覇気のない声は! 英治! ちょっと今から駅前のスタバに来なさい!』

「はー? 何で今からスタバに行かなきゃいけないんだよ!」

『あんたに超重要な話があんのよ!』

「めんどくせーよ、電話で済ませろよ~」


 そんな英治の言葉を聞き、怒り心頭の面持ちで亜弥は言葉を吐いた。


『はーーーーーーーー? あんたね、誰に向かってそう言う口聞いてんのよ! あんたはあたしからお金借りてんのよ? わかってる? もう誰の意見に従うか答えは分かってるわね! 今すぐ、スターバッグに来・な・さ・い! じゃぁ、切るわね! あっ、そうだ、その汚いタオル、巻いてこないでね。じゃぁね!』


 ツー ツー ツー ツー


「チッ。こいつ、一方的にしゃべって勝手に切りやがった……」


 英治はかったるそうな面持ちで頭に巻いていたタオルを取り、高校ジャージからジーンズに着替え、出かける準備を済ます。


「ハァ……めんどくせー。どうせまた向こうが恐竜みたく叫びまくるんだろ? いい加減、モンハンに出ろよ。たぶん最強だな。倒すのに三日ぐらいかかるかな?」


つづく

こんにちは、はしたかミルヒです!

第一話を読んでくださりありがとうございます!


31日に出しても誰も読んでくれないことを覚悟で投稿しました(笑) しかも第一話!(笑)

今回のケース6はギャグテイストがほかのケースに比べて強くなっちゃいました。気に入ってくれれば幸いです(#^.^#)

では次回は、スタバの中での亜弥との会話になります。亜弥もなかなか面白いキャラです(笑)

お楽しみに♪

ミルヒ

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