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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース4:両想いになりたい(直人&くるみ編)
40/109

第三話

  ■■■

「ご利用ありがとうございました♪」


 バタン


 夢子の挨拶を背中越しに聞き店を後にする二人。


「じゃぁ、帰ろうか?」

「そうね、こんなところで時間食っちゃったのが物凄く悔いなんだけど……」


 そう言いながら夢の液体を見つめるくるみ。そして二人は家路へと向かい歩き出す。


「でも二人して夢の液体を手にすることができただろ? 俺はゆかりんと両想いになるための液体。そしてくるみは……お、俺と……」


 直人はくるみのかなえたい夢を言おうとしたのだがそこで口がつぐんでしまった。しかし直人の代わりにくるみが自分の夢をにこにこと笑みを浮かべ、直人の顔を覗きこみながらこう言う。


「これは直人と両想いになることができる夢の液体。でしょ?」

「あ、あぁ……」


 くるみから向けられる熱いまなざしに目をそらし、気まずそうに返事をする直人。


「絶対、あのアイドルの端くれにもならないコスプレバカなんかに直人を渡すもんですか!」

「お、おい! ゆかりんをそんなふうに侮辱するなよ! ゆかりんは世界で一番かわいい三次元だぞ!」


 直人は顔を紅潮させてくるみを叱咤する。その言葉にくるみは眉をひそめ直人に詰め寄る。


「何その三次元って? ってかなんでそんなにゆかりんだかのことが好きなのよ?」

「俺は、ゆかりんと出会うまで二次元の女子にしか興味がなかったんだ」

「二次元ってのはつまり、アニメのキャラってことよね?」

「うん。ゲームのキャラとかもそうだね。でもオタク友達に誘われて初めてゆかりんのライブに行ったんだ。正直行く前はあんま興味なかった。でもゆかりんの姿を目の当たりにした途端、全身鳥肌が立ったんだ。ゆかりんの初見を思い出すと今でも鳥肌が立ってくるよ! もうその瞬間からゆかりんのファンになっちゃったってわけ」


 そう言うと直人の顔から笑みがこぼれた。しかしその話を聞いて面白くなさそうにするくるみ。しかし何かを思いついたようでとたんに不敵な笑みを見せる。


「でも直人知ってる? ゆかりんの本名」

「いや、非公開だから知ってる人っていないと思うけど……」

「私、知ってるよ~ん! 誰だか教えてあげようか?」


 そう言うとくるみはその場で立ち止まる。しかし直人はくるみの発言に少し戸惑ってしまった。


「え? でも知らなくてもいいような……」

「うそ! ほんとは知りたいくせに! じゃぁ教えてあげましょう!」


 直人の発言を無視してむりやりに話し始めるくるみ。


「え? えー? ちょっと待ってよ! 俺にも心の準備ってのが……」


 そんな直人の訴えも空しく、くるみはゆかりんの正体を直人に暴こうとする。


「彼女の本名は……」


 目をつむり、耳を抑える直人。しかし無情にもくるみの声が直人の耳に入ってくる。


「西園寺ゆかり!」



「あぁ~! 聞いちゃったよ……もう……って西園寺って……あの?」

「そう! 西園寺グループ総取締役のご令嬢さんよ! でも元だけどね!」


 口角を上げ直人の様子をうかがうくるみ。


「そうだったんだ……もっと早く知っていれば……」

「でしょ! もっと早く知っていれば、私たちの敵になんて恋しなかったでしょ?」

「いや、もっと早く知っていれば、パーティーの時でも声をかけること出来たのに……ってもしかしてあの黒髪の女の子? なんかくるみと話してた時にずっと視線を感じていたんだけど、もしかしてその子がゆかりんだったのかな?? だとしたらチャンス逃しちゃったじゃん! 俺のバカ!」

「え?」


 直人の言葉にくるみは目が点になる。


「だってゆかりんをそんな間近で見られるチャンスめったにないじゃん! しかも知り合いになれるチャンスだったんだよ! あ~もう! 悔しい!」


 そう言うと直人は思い切り頭を抱え込んだ。


「ちょ、ちょっと、待ってよ! どうしてそんな考えになるわけよ? あの子の父親のせいで会社は潰れたのよ! 私たちの親のことを考えれば西園寺家の人たちは私たちにとって敵でしょ?」


 くるみは手を広げ自分たちの境遇について訴える。


「敵? なんで?」


 直人は訝しげな顔をしながらくるみに尋ねる。


「だって彼女の父親は横領事件で捕まったのよ! そんな悪いことしなければ今でも会社は存続していたかもしれないし! そう考えれば、私たちの敵になるのも当然でしょ? 最終的にはそのお金で一番上の娘のために特注で義足作った上げた挙句、一年もしないうちにその娘、事故で死んじゃってさ。哀れなものよ」

「でもその話って別にゆかりんには関係ないだろ?」

「う゛ぅ……」


 そう直人に言われ口をへの字にしながら目を伏せるくるみ。


「で、でも……」

「でも?」

「も、もういい! 直人のバカ!!」


 そう言うとくるみは一人でさっさと歩いて帰って行ってしまった。そのくるみの目には涙が今にも溢れんばかりに溜まっていた。


「くるみー!」


(バカ! 直人のバカ……)


■■■


「お帰り、直人!」

「ただいま」

「今日は直人の好きなカツカレーよ!」


 そう言って手におたまを持ちながら直人を出迎えた母親。


「おぉ、そっか……」

「どうしたの? 元気ないみたいだけど?」

「いや、まぁ……何でもないよ。はははっ……」


 母親の質問に対して直人はから笑いをしながらごまかした。


「そう? それなら別にいいんだけど。じゃぁ、準備できたから座って。今お父さん呼んでくるから」

「うん。あれ? 姉貴は?」

「芽衣子は書店に行ったみたいよ。ドウジンシ? がどうたらって言ったけど、それって雑誌のことよね?」

「まぁ、雑誌だね……」


(姉貴の野郎、俺を誘わずにアキバへ行ったな……)


 ちょうどその時、芽衣子が帰ってきた。彼女の大切にしている両手に収まるほどのクマのぬいぐるみがショルダーバッグからひょっこり顔をのぞかせていた。


「ただいま」

「お帰り、芽衣子。夕食の支度ができたから早く席に着きなさい」


 その時、芽衣子のぬいぐるみが母親の目に映る。それを見て眉間にしわを寄せる母親。


「まーた、あなたったらそんな汚いぬいぐるみ持ち出して! もう二十七なのよ? いい年してそんなもの持ち歩いて買い物なんてみっともない!」


 戸惑いながらも芽衣子はこう口にする。


「で、でも……ルルは私の大切な友達だから……」


 そう言いながらギュッとルルを抱きしめる芽衣子。


「はぁ……母さん、こんな育て方した覚えないんだけどな~」


 目を伏せ、ため息交じりに母親は言葉を発した。


「でも母さん。人の趣味ってそれぞれだろ? だれがどんな趣味持とうがそれは母さんにとって関係ないと思うけど」


 そう反論するのは直人。


「でも芽衣子はもう二十七なのよ? その年でぬいぐるみを持ち歩いてるなんて恥ずかしいでしょ? 母さん心配なのよ。もう嫁に行ってもいい年頃だっていうのに、彼氏も作らないでずっとぬいぐるみに向かって話したり、こうやって四六時中ずっと持ち歩いて。普通の二十七歳はこういうことしないわよ」


 そう言って母親は芽衣子の顔をちらりと見る。芽衣子は母親と目が合って気まずそうにしていた。


「そうかなぁ?」


 直人は母親の言ったことに対して頭に疑問符を浮かべている。


「そうでしょ! あなただって、もう十九だというのに、マンガ読んだりアニメみたり、それにわけのわからないコスプレアイドルだかに夢中になっているでしょ? そんなことするのはオタクだけでしょ? そんな趣味危ないからやめなさい。あなたには気持ち悪いオタクになってほしくないのよ」

「母さんってそんなふうに俺たちのこと思っていたのか……」

「そんなふうって! 母さんはあなたたちのことを思っ……」

美智子みちこ、そんなに熱くなるな。廊下まで丸聞こえだぞ!」


 そう言って新聞を手に持ちリビングに入ってきたのは父親の雅和まさかず


「だってあなた!」

「さぁ、夕食を食べよう! この匂いはカレーだよな?」


 雅和はそう言うとニコニコと笑みを浮かべながら鍋のふたを開ける。


「あなた! 子供たちのことを思うならちゃんと聞いてよ!」

「あ? 趣味のことか?」

「そうよ。前から私が言ってたでしょ。この子たちってば……」

「いいんじゃないの?」

「はっ?」

「趣味ってなもんは人にああだこうだ言われて決まるもんじゃないぞ。お前だってついこの間まで、韓流スターにワーキャー言ってたじゃないか」


 そう言いながら皿にご飯を盛る雅和。


「そ、それとこれとは……」

「違うっていうのか?」

「ち、違うわよ……というかあなたがそんなのんき者だから西園寺が逮捕されるまで横領のこと何も知らずにいたんじゃない!」

「おいおい、それとこれとは話が違うだろ?」


 そこでようやく雅和はカレーを盛る手を止め、美智子の顔を見る。


「同じことよ! 子供たちのことを何も考えていないからこんなふうにちゃったじゃない! そうよ、あなたがもっと自分の周りに目を向ければこんなふうには……」

「おい、自分の子供たちにそんな言い方はないんじゃないのか?」

「あなたが悪いのよ! 横領のことだっていち早く知っていれば、早くあんな会社辞めて違う大企業に勤めることができたかもしれないのに……フッ、なーに今のありさまは?」


 小馬鹿にしたような態度をとり美智子は雅和に詰め寄る。


「近所の自動車整備工場で働いていることに不満があるのか?」

「そうよ! だって今までは西園寺グループの機械部門で部長をやっていたあなたがよ? あなたがなんで近所で車の整備なんかしてるのよ!」

「じゃぁお前は何をしてるんだよ?」


 その雅和の言葉を聞き美智子は怒りに顔を紅潮させる。


「な、何を! 私は家族のために頑張って主婦業……」

「もういいよ二人とも! 早くカツカレー食べよう……」


 二人の言い争いを制止した後、直人は深いため息をついた。芽衣子のほうは、ぬいぐるみのルルを未だギュッと握りしめていた。そしてぼそりとつぶやく。


「ルル……」

こんにちは、はしたかミルヒです。

12月まであと一週間を切りましたね! もうちょっとで2015年ですよ~。早い! 時は金なりって言いますが、時の短さを実感すると時間ってめっちゃ大事なんだなぁ~ってしみじみ思っちゃいます。「充実した時を過ごす」これが私の目標です(*^^)v

さて次回は直人が芽衣子に熱く語ります! 人間とは何か? 結構好きなシーンなので読んでくれたら嬉しいです(*^_^*)

ではお楽しみに♪

ミルヒ


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