第九話
■■■
「あー! マジ最悪だった!」
家に帰り、自分の部屋に戻った時の第一声。本当は「あー! 今日は最高に楽しかったー!」って言うはずだったのにこんな最悪な言葉を言うハメになってしまった。
「ってかそれもこれも全部、あの女のせい……あの女と遭遇したことで今日一日が台無しになったんだ……もし今日、あの女に遭遇しなかったら今日は絶対楽しいデートだったにちがいない」
そう思うと憎悪が込み上げてくる。
「イーーーーーー!! あのクソ女!!」
ボスッ!
ついソファに置いてあった大きなウサギのぬいぐるみにパンチを食らわせてしまった。
「これじゃぁ私、ネネちゃんのママじゃない……」
その時突然スマホの着信音が鳴った。東野カナの着うた。これは星野君からのメールだ!
急いでスマホをバッグから取り出し星野君からのメールをチェックする。
『エリカ、お疲れ! なんか途中から気を悪くさせちゃったみたいで……ごめんね。でも今日一日エリカと一緒に遊べてほんと楽しかったよ! ワッフルもおいしかったしね! また遊ぼう!』
「星野君……」
私はすぐにメールを返す。
『星野君もお疲れ! ううん、全然気なんか悪くしてないよ! 星野君と今日一日一緒に遊べて私も本当に楽しかった♪確かにワッフル超おいしかったよね! 私もまた星野君と遊びたい……(#^.^#)』
文章を一回読み直し、誤字脱字がないか確認する。そして送信ボタンをタッチした。
「あっ! しまった! 星野君がせっかくまた遊ぼうって言ってくれたんだから次のデートの約束を取り付ければよかった!」
私は再び星野君にメールを送ることにした。
『あの……もしよかったらまた今度の土曜日二人で遊ばない?』
「しつこいって思われないよね……?」
そんな不安に駆られながらもいつまでも受け身の姿勢でいるとあの女に星野君を取られると思い急いで送信ボタンをタッチする。
「あぁ、送信しちゃった……」
ドキドキしながら待つこと五分。再び東野カナの着うたが鳴る。すぐにスマホを手に取るが返事を見るのがちょっと怖くてなかなかメールを見ることができない。
「断られないよね? お前しつこいなぁって書かれてないよね? また来週も遊ぶの? 用事あるんだけど。とか書いてないよね?」
不安が私の胸を締め付ける。深呼吸をし、帰りに駅の自動販売機で買ったお茶を喉を鳴らしながら飲む。
ゴクッゴクッ
「よし!」
そしてメールの受信ボックス開く。受信ボックスの一番上にはまだ未開封のメールが一つある。 タイトルは『Re:』。
星野君からの返信メールだ。私は目をつむりそのメールをタッチする。そしてゆっくりと目を開けた。
『また誘ってくれてありがとう! 実は来週の土曜日は友達(ってか由奈だね!)と遊ぶ約束してるんだよね。というのもついさっき由奈からメール来て、約束しちゃったんだよ……あっ、でももしよかったらエリカも一緒に遊ばない? 由奈に聞いてみるよ? 由奈もきっと喜ぶと思う!』
「……な、なんで……」
それ以上言葉が出なかった。言葉の代わりに涙が私の瞳からこぼれ落ちていく。そして全身の力が抜けて手に持っていたスマホでさえ握れなくなっていた。
星野君は誰が好きなの? 彼氏彼女の休日ってこんなもんなの……?
■■■
「おはよー、エリカ!」
月曜日の朝、教室の戸を開けると同時に友達のマナが私に近づき挨拶をする。
「おはよ……」
「どーしたの? そんな暗い顔しちゃって」
「そ、そう?」
「うんうん、エリカっぽくない表情だよ! ってかさぁ」
そう言うとマナは私の耳元でささやく。
「土曜日、星野君とデートしたんだって?」
「っ……! な、なんで知ってるの?」
「ユーコが駅で一緒に歩いてる姿見かけたって言ってたからさ!」
「…………」
私はこの状況にどう対応していいものか迷ってしまい口をつぐんでしまう。
「ねぇねぇ、それで星野君とはどうだったのよ~? 教えろぉ、リア充! コノコノッ!」
マナがニヤニヤと笑みを浮かべながら私の背中を肘でつついてきた。
「べ、別に……」
「ははあん、教えないつもりだなぁ!」
「そんなんじゃないけど……」
マナのバカ! なんでこんなこと聞いてくるのよ……暗い顔してるっていうことはどういうことか察しろってーの……
そんなことを思っていると職員室から戻ってきたであろうあの女が書類を両手で抱えながら教室に入ってきた。
「あっ、おはよう西園寺さんに石橋さん!」
何事もなかったように元気よく私とマナに挨拶をしてくる。
「おはよー、ゆなっち!」
マナがふざけたあだ名でこの女に挨拶を返す。
「まぁ、石橋さんったら! その呼び方、初めて言われたわ!」
この女がクスクスとマナが付けたあだ名に対して笑っていた。
私はもちろん挨拶しないで自分の席に着く。椅子に座るか座らないかのうちに、横から挨拶が聞こえてきた。
「おはよう、エリカ!」
「お、おはよ……」
星野君は相変わらず笑顔で私に挨拶をしてくる。星野君は私に対して何の罪悪感も抱いていないのだろうか? 彼にとって恋人の定義って何なんだろう? 昨日私は星野君からあのメールを受け取ってからそれきり返信をしていない。それどころではなかったから……それに対しても何ら疑問を抱いてはいないのだろうか? 星野君に向かって言いたいことがあるのだけれど自分からそういうことを言うのは気が引ける。でも一昨日の晩から思っていること。それは――――
『本当に私たち恋人同士なんだよね?』
そんなことを考えていると、あの女が私に話しかけてきた。
「西園寺さん、も、もしよかったら土曜日、私と純とで、い、一緒に遊ばない?」
この女、何を思ってこんなことを言ってきたのだろう? マジで死んでほしい……っていうかこいつがこの世の中からいなくなればきっと私は星野君とラブラブなリア充生活を満喫できるに違いない。そうだ……こいつが死ねば、私は幸せ者になれる。いや、私だけじゃなく星野君も幸せになれるんだよね……そう、そうだ! 死ねばいい。こいつは死んだほうが世の中上手くいく。
ならば早く実行したほうがいい……
私は必死に笑いをこらえながら寺田由奈の質問に答えた。
「うん。一緒に遊ぼう!」
つづく
こんにちは、誰かに肩をもんでもらいたい はしたかミルヒです!
肩がヤバいです!凝ってるってもんじゃないくらいにコリコリです(笑)マッサージチェア欲しいんですけどね~、高いしね......(+o+) 運動すればいいじゃないか。って思うんですけど、なかなか毎日は難しいですよね.....って言い訳だね(苦笑)お金持ちになったら絶対パナソニックのマッサージチェア買ってやるんだ!って小さい夢を抱きながら過ごしている毎日です(笑)
ってなことで第九話を読んでくださりありがとうございます!
次回、ついにエリカは由奈にとんでもないことをしようとします!恐ろしい子です……
お楽しみに♪
ミルヒ




