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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース3:両想いになりたい(エリカ編)
29/109

第五話

  ■■■


 パーティーも無事に終わりエリカは自分の部屋に戻ろうとしていた。


(青木さんって、ほんと変な人。あんなぬいぐるみ持ち歩いて……しかもキッタナいぬいぐるみ……みんなミステリアスって言ってるけど、あれじゃぁミステリアスじゃなく単なる変人だよね……)


 そんなことを思っているとゆかりが幽霊のようにふらぁっとエリカを無視して横切っていた。


「ん? ちょ、ちょっとゆかり!」

「……あ、お姉ちゃん……」


 呼び止められて立ち止まりゆっくりとエリカの方を向くゆかり。


「ちょっと、自分の姉を無視して横切らないでよ!」

「ごめん……」

「え……ど、どうしたの?」


 ゆかりは目に溜めていた涙を急にぽろぽろとこぼし始めた。


「青木くんが……青木くんが……」

「えー? ゆ、ゆかり? 青木くんがどうしたの?」


 ゆかりの様子を見てエリカは動揺しオロオロしてしまう。


「く、く、くるみちゃん……」

「くるみちゃん?」


 ゆかりはヒックヒックと音を立てながらか細い声で答える。


「あ、青木くんとくる……ヒック……みちゃんが付き合ってるって……ヒック」

「え? 青木くんとくるみちゃんが付き合ってる?」


 泣きながらもコクンとうなずくゆかり。


「ちょっとよくわからないんだけど、くるみちゃんってあのアイドルのくるみちゃんでいいんだよね?」


 コクン


「じゃぁ、青木くんって人もアイドルなの?」

「まだ、ヒック……アイドルじゃないけど、ヒック……これからアイドルになる人……ヒック」


(ん? アイドルの卵ってことか?)


 エリカの頭はこんがらがりながらも言葉を続ける。


「そっか……じゃぁ、そのことは置いといてなんでゆかりは彼らが付き合ってるってこと知ってるの?」

「さっきのパーティーのときに青木くんを見つけたんだけど、ヒック……彼の横にくるみちゃんがいて、ヒック……くるみちゃんが『私という彼女がいながら……』って青木くんに言ってた。ヒック……」

「え? ちょっと待って! うちのパーティーにくるみちゃんが来てたってこと?」

「うん……ヒック」

「このパーティーってパパの会社の従業員さんとそのご家族だけしか参加してないはずだけど……ってことは、横山くるみのお父さんってパパの会社の従業員ってこと?」

「うーん……確かに何でくるみちゃんがあの場にいたんだろう……」


 青木直人と横山くるみがどんな関係なのかよりもなぜ横山くるみがここのパーティーに参加していたのか? のほうが気になってしまい二人は上を見上げ頭をかしげていた。

 しばらく考えて出た答えが、「パパに聞いてみるのが一番早い」だった。


「ってなことで新しい恋、見つけなよ! ほら、男なんて世界中にいるんだし!」


「うぅ……そんなんじゃないってことお姉ちゃんだってわかってるくせに……」


 冗談めかしたことを言いながらエリカはゆかりのある変化に気づく。


「はははっ! いつの間にかヒックヒック止まったね!」


  ■■■


 次の日、エリカは横山くるみのことを聞きに総一郎の部屋を訪ねる。しかし部屋を訪ねる一番の目的は、総一郎から百万円を借りることだった。


 コンコンコン


 ノックを三回したのだが返事がない。


(あれ? いないのかな?)


「パパー?」


 もう一度ノックをする。


 コンコンコン


 しかしやっぱり返事がない。


(どうしよう……百万円のこと相談したかったのに……)


 仕方がないので自分の部屋に戻ろうとしたときエリカはふとあることを思い出した。ここの部屋に総一郎個人用の金庫が置いてあることを……しかし金庫は暗証番号を入力しないともちろん開かない。しかしエリカはこの金庫の暗証番号を知っていた。


(前にパパが酔っ払っていたとき、金庫の暗証番号はエリカの生まれた時の体重だ。って言ってたわよね……それが本当なら……)


 そしてエリカは踵を返しもう一度総一郎の部屋の前に体を向けた。そしてゆっくりと少しだけドアを開ける。

 エリカはその隙間から誰も部屋の中にいないことを確認し、ゆっくりと足音を立てずに入った。


(なんか私、泥棒みたいじゃない? でもここは私のパパの部屋だし、ただ百万借りるだけなんだから堂々としたっていいのよね……)


 そんなことを思いながらも後ろめたさがあるのかやはり忍び足になってしまうエリカ。そしてエリカは目当ての金庫を見つける。


(これだわ。この金庫よ。この金庫の中を開ければ、私の夢が叶う……)


 そう思うのと同時に暗証番号を入力するボタンがエリカの目に入ってくる。


(私の生まれた時の体重はたしか……)


 頭で考えながら震える指で番号のボタンをゆっくりと押す。


(3……)


 ピッ


(わっ! ボタンの音、ちょっとうるさ過ぎない? ドキッとしちゃうじゃない!)


 ボタンを押すと電子音が静まり返った部屋に鳴り響く。その音でつい体をビクリとさせてしまうエリカ。


(えぇっと、次は……1……)


 ピッ


(5……)


 ピッ


(そして最後は……0!)


 緊張の面持ちで最後のボタンを押す。


 ピッ


 最後のボタンを押した二秒後にウィーンとなる音とともに金庫の扉のロックは解除された。


(開いた……本当に開いちゃった……)


 その状況に目を丸く見開くエリカ。そしてその扉をゆっくりと開ける。その次の瞬間、エリカの目に入ってきたものは札束の山だった。


(お金……こんなにいっぱい……)


 エリカは震えが止まらない。しかしそれと同時に口角も上がっていた。


(こんなにいっぱいあるなら、一束くらい取ったってわからないわよね……)


 エリカは震えながらその札束に手を伸ばす。ゆっくりと……そしてその手は一つの札束をつかんだ。その札束を自分の手元へと持ってくる。エリカの右手にはしっかりとその札束が握られていた。そして自分の手元へ持ってきた札束を眺め――――


(札束一つで百万よね……)


 エリカはそのお金を自分の服の下に隠す。


(これで百万円は手に入った! でもまだ緊張を緩めたらダメよね)


 そう思い、再びゆっくりと金庫を閉め、来た時と同じ速度、そして忍び足で部屋のドアをゆっくりと開け、廊下に誰もいないのを確認し、部屋を出て音が鳴らないように再びゆっくりとドアを閉めた。


 パタン


 ほっと一息ついたその時だった。


「エリカ」


 ビクッ!


 エリカはその声の主の顔を恐る恐る見る。


「ぱ、パパ……」

「どうしたんだ? こんなところで」

「え? あっ、いや……えぇっと……」


 エリカは突然のことでパニックに陥ってしまい、言葉が出てこなくなってしまった。体中から汗が噴き出す。


(どうしよう、どうしよう? なんて言えば……)


「用事がないなら早く自分の部屋に戻りなさい。明日は学校だろう?」

「あっ、う、うん……」


 そう言われ、エリカは父親の顔色を見ながらおずおずと自分の部屋に戻ろうとした。しかし――――


「エリカ!」


 ビクッ!


 また再び呼び止めらたエリカは体が硬直してしまう。


(まさか……バレて……ないよね?)


 少しだけ振り向き、唾をごくりと飲むエリカ。


「ちゃんと背筋を伸ばして歩きなさい。背中を丸めてちゃ、みっともないぞ」

「……はい……」


 そう言い残し、総一郎は自分の部屋へと入っていった。


■■■


「はぁー、マジ、心臓止まるかと思ったぁ……」


 自分の部屋に入ったエリカは、部屋にあるソファに腰を掛け上を見上げた。


「でもこれで、私の夢がかなうんだよね……」


 エリカは総一郎の金庫から借りた百万円を眺め嬉しそうに微笑む。


「引き出しの中に入れて鍵かけとかなくちゃ!」


■■■


「おはよっ! 星野君」

「おはよう。おぉ!日直でもないのに西園寺がこんなに早く来るなんて珍しいね」

「私だって早起きぐらいしますよっ!」


 今日、エリカにしては珍しく早起きして八時前に登校してきた。それくらいエリカはウキウキと心を弾ませていた。


「星野君、今日日直でしょ? 何か手伝うことない? 何でも言って! 私手伝うから!」

「嬉しいこと言ってくれるね! ありがとう。じゃぁ、この書類なんだけどさぁ……」


 そういうと星野がエリカのそばに近づき、指示を出す。


(キャー! 顔近いんですけど! なになに? 私ってばこのままキスされちゃう?! そしてそのあとは……)


 エリカがよからぬ妄想を抱こうとしていたちょうどそのとき、教室の戸がガラリと開けられた。


「おはよう!」


 かわいい声の挨拶でハッと現実に引き戻されるエリカ。その声の方向を見てみると――――


「おはよう由奈!」


(あっ、寺田由奈……)


 由奈もエリカに気づき頬を赤らめながら笑みをエリカに投げかける。


「あっ、西園寺さん……お、おはよう! 今日は早いのね!」

「はよう……」


 一方エリカはやる気のない低い声のトーンで相手の顔も見ずに由奈に挨拶を返した。


(こいつが来ると一気にやる気が萎えるわ……早く来すぎだっちゅーの! あぁ、そうだ、こいつが委員長だってことすっかり忘れてた)


 そんなことをエリカが思っている間に、星野と由奈は昨日のテレビ番組の話に花を咲かせていた。


「昨日の木村動物園、すっごく感動したよねー! 私思わず泣いちゃって……」

「最後のコーナーだろ? わかる! 不覚にも俺も泣いちゃったよ」


(何なのよコイツ……登校してきてすぐ星野君に話しかけるなんて! さっきまで私と星野君すごくいい雰囲気だったのに!)


 エリカは由奈の顔を睨み付けるように見る。それに気づいた由奈は緊張した面持ちでエリカにも話しかけた。


「さ、西園寺さんは、木村動物園見た?」

「私忙しいからテレビなんて見る暇ないの!」


 そう言いながら、由奈の顔は一切見ずに先ほど星野から頼まれた書類に目を通すエリカ。


「あ……そうだよね。忙しかったら見れないもんね……あ、その書類、今日みんなに配るやつよね? 私やるよ?」


 由奈は寂しげな表情を浮かべながらもエリカに気を使いエリカが目を通している書類を手に取ろうとした。その時――――


「ちょっと触らないで!!」


 すごい剣幕で睨みつけるエリカ。


 ビクッ!


 由奈がエリカの発した言葉とその表情に体をビクリとさせ顔を強張らせる。近くにいた星野も驚いた顔をしている。


「ちょっと、西園寺一体どうしたっていうんだよ?」


 星野が由奈をいたわりながらエリカに尋ねる。その様子を見たエリカは再びショックを受けた。


「なんで……なんでいつもコイツにばかり優しくするの? なんで……私のほうが星野君のことを……」


 ガタンッ


「西園寺?!」


 エリカは勢いよく席を立ち教室を出た。その目には涙があふれていた。


(どうしてこうもうまくいかないわけ?? なんで……私、悪くないのに……)


 つづく


こんにちは、はしたかミルヒです!

ピザを食べてやけどをしてしまいました(笑)ピザですよ、入国査証じゃないですよ!イタリアにある斜めになってる塔のことでもないですよ!ピザです。(笑)舌が痛いです……

ってなことで第五話を読んでくださりありがとうございます!エリカやっちゃいましたね。お金借りたというか盗んだというか……まぁ次回をお楽しみに。次回、エリカは再びドリームショップに行きますよ~!果たしてちゃんと夢の液体を手に入れることができるのでしょうか?


ミルヒ


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