第二話
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次の日
「見てみて! 私昨日パパにおねだりしたら~ティンファニーの指輪買ってもらっちゃったの~!」
「うわー! 超可愛い! ハート形の指輪って超ラブリーだよね♪ 私も今週プルガリのお店に行くんだけど、その時に指輪買ってもらうんだ~」
「いいね~! 私も今週パパにおねだりしてピトンのバッグ買ってもらう予定♪」
「私、昨日偶然ペラガモのお店の前通ったら新作の靴見つけちゃって~つい買っちゃった! でも七万ちょっとだよ?安くない?」
「「「えー! 超やっすーい!!」」」
「でしょー? 学校には履いていかないけど、旅行するときに良いかなぁって♪」
教室での朝、いつも通りエリカは仲の良い友達と窓際で自慢話ともいえるガールズトークを繰り広げていた。しかしその時、ある生徒がエリカがいる女子たちのもとへ近づいて来た。
「西園寺、ちょっといい? これ西園寺から借りてた横山くるみのDVD、全部見たから返すね。サンキュな!」
そう言うと星野は笑顔でそのDVDをエリカに手渡した。
「ほ、星野君……いえいえ、とんでもない……」
さっきの勢いはどこへやら、急に身を縮めて顔を真っ赤にしながら小声で星野と会話するエリカ。
「お前が横山くるみ、好きだなんて意外だよな?」
「あっ、そ、そう? わ、私くるみちゃんの大ファンだよ」
すると友達のマナが不可解な面持ちでこう言ってきた。
「あれ? エリカって女性アイドルあんま好きじゃないよね? この間もどいつもこいつもぶりっこしやがってムカつくとか言ってたじゃん」
(ちょ、マナの野郎……こんな絶好のチャンスの時に何を言う?!)
「え? そ、そんなこと言ったかしら? 私アイドル大好きですわよ。オホホホホッ」
「なんで貴族みたいなしゃべり方になってるのよ……?」
その時星野がクスクス笑い始めた。
「西園寺って面白いんだね!」
「え?!」
また再び顔が赤くなるエリカ。
「あ、そうそう、横山くるみの新曲買った?」
「新曲……? あ~! くるみちゃんの新曲ね! えぇっと……」
「あ、まだ買ってないね? 良かった。俺、一昨日買ったんだけど、もしよかったらCD持ってきたからさ。聞く?」
星野は手に持っていたCDをエリカに見せる。
「い、いいの……?」
「もちろん! もう俺ipodに入れちゃったからさ」
「嬉しい……あ、ありがとう!」
「じゃ、はいどうぞ」
エリカは目を輝かせながら星野からCDを受け取る。
「ほ、ほんとにありがとう……」
「あはは、そんなにお礼言わなくても……あ、返すのはいつでもいいから。じゃあな」
(あ~! 星野君星野君星野君星野君星野君ほしのく~~~ん!! 超カッコいい……)
ぽーっとしながら星野の後ろ姿を見つめるエリカ。
「リカ……ちょっと聞いてる? エリカってば!」
その言葉にはっとしエリカは我に返る。
「あ、あ~、聞いてたよ」
「ウソばっかり! ねぇ、前から怪しいと思ってたんだけど、星野君のこと好きだね?」
「え? いや、ま、まさか?! カッコいいとは思うけど……いやカッコいいだけじゃなく優しいし、爽やかだし……ってか何言ってんだろう私……ってまさかマナも星野君のこと……?」
そうエリカが言った途端、マナはニヤニヤと笑いエリカの顔を見る。
「だっだらどうするぅ?」
「ろす……」
「え? 何て言ったの?」
エリカが小さな声で何か言ったのだがよく聞こえなかったらしくマナは再び聞き返した。
「殺す」
「…………」
一瞬空気が氷のように張り詰める。
「ちょ、エリカ何言ってんの? じょ、冗談に決まってるでしょ!」
「あ、ごめん! わ、私も冗談のつもりで言ったんだよ!」
自分でも何を口走ったのかハッと気づきエリカは弁解する。
「も~う! 冗談でも怖いつーの! それに私が同年代の男子に興味がないことエリカも知ってるでしょ~」
そう言い苦笑いを浮かべながらエリカのご機嫌をとるマナ。
「まぁそうだけど……」
「でもエリカのライバルは結構多いかもよ? 星野君人気あるし~」
「ライバルって何よ? 私はまだ星野君のことす、す、好きだなんて……」
「はいもう結構で~す! ほんとエリカってわかりやすいなぁ! でも例えばさぁ、真ん中の列の一番前に座ってる寺田由奈。あの子星野君と幼馴染って言うじゃない? あとは廊下側の列で前から五番目座ってる、青木芽衣子さん。彼女実は二十五歳なんでしょ? 二十五歳のくせして高校生ってだけでも不思議なのにいつもあぁやって汚いぬいぐるみ持ち込んで一人で遊んでるじゃん。あぁいうミステリアスな女子にひかれる男子って結構多いんだよ。あ、そうそうあと、寺田由奈のすぐ後ろの席の子。加藤ヒカル。実はあの子、女の子の格好してるけど男子なんだって~! いわゆる男の娘ってやつよ! ああいう子も要注意よね~」
「ふ~ん……」
エリカはそれぞれ説明された人の顔を興味がなさそうに眺めていた。
(こいつらが私のライバル? マナったら、バカにするのもいい加減にしてよ。星野君とお似合いなのはこの私なのよ!)
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そしてその日のホームルーム。
「今日は昨日も言った通り席替えを行う。委員長は前に出て進行してくれ」
そう担任の教師が言うと真ん中の列の一番前に座っていた女子が「ハイ」と返事をしたのと同時にスッとたち綺麗な長い黒髪をなびかせ教壇に立った。
(寺田由奈って委員長だったんだ……まぁどうでもいいけど)
「では先生が言っていた通り席替えをしたいと思います。席替えを決める方法を決めたいと思いますが、どの方法で席替えを決めたいと思いますか?」
すると一人の女子……と言うか男子が手を上げる。
「はい、加藤さん、どうぞ」
「やはりここはオーソドックスにくじ引きが良いと思います」
「くじ引きですね。ほかに意見がある方は?」
シーン……
「他に意見がないようなので席替えはくじ引きで決めたいと思います。それでよろしいでしょうか」
「「「「「はーーい」」」」」
そしてそのくじは学級委員の人たちによって作られた。ダンボールで作られたお手製のボックスの中にくじがドサッと入れられる。そして副委員長が黒板にクラスの席の図を白いチョークで描き始めた。縦の列を右からアルファベットで横の列は数字で表記されている。
「皆さん、準備が出来ましたので、廊下側の列の人から順番にくじを引いてください」
エリカは窓側の席なので最後の方に引く羽目になった。
(まぁ別にくじだから引く順番なんてどうでもいいわ。星野君と席が近ければそれでいいのよ!)
「ゲッ! 俺、Dの1かよ~! 一番前じゃん……」
「やった~! 私窓側の一番後ろの席~♪」
それぞれの感情が交錯する。そして星野がくじを引く番になった。
(星野君はどの席になるのかな……)
星野はすばやくくじを引き、すぐにくじを開く。
「おっ、Fの4だ」
(Fの4って……あ! 今私の座ってる席じゃん! なんかこれって運命的なものを感じない??)
そして寺田由奈もくじを引く。
「私は、Aの3です」
(Aの3って星野君から超遠いじゃん! ウッシッシ! 寺田さんバイバ~イ!)
そしてくじ引きもいよいよ終わりに近づいてきた。
(え? ちょっと待って! 星野君の横の席まだ空いてんじゃん! これってやっぱり私に運が舞い降りてきてる!?)
エリカの番が来る。
「西園寺さん、どうぞ!」
そう言って寺田由奈が笑顔でエリカの前にボックスを差し出した。
残り僅かなくじが入っているボックスに手を入れ一生懸命に願掛けをするエリカ。
(神様お願い! Eの4! Eの4! Eの4! Eの4、神様ーー!!)
そして四つ折りされたくじを掴み、そぉっと上げる。そしてそれを自分の側までもっていきゆっくりと開く。
ドクンドクンドクンドクン
エリカの心臓の鼓動が教室中に響き渡りそうなほどに大きく打っていた。
(神様、お願いします!)
ペラッ
「はっ! うそっ……」
「西園寺さんの席は何番ですか?」
寺田由奈が笑みを浮かべ尋ねる。
「い、い、Eの4……」
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(なんて、なんて今日はハッピーデイなの!?)
全員くじ引きを引き終えたあとさっそく席替えが始まった。クラス全員が一斉に移動をする。友人の一人、マナが言っていたエリカのライバル候補の後二人の席は、寺田由奈の一つ前の席に男の娘の加藤ヒカル。ミステリアスな二十五歳の高校生、青木芽衣子は前とまったく同じ席になった。しかしエリカにとって星野の幼馴染、寺田由奈以外、はっきり言ってライバル視どころか気にも留めてなかった。
「お、西園寺が横か! ヨロシクな!」
「ほ、星野君……よ、よろしく……」
途端に顔を赤らめるエリカ。
(やっぱり神は私に微笑んだ! このままいけば、あんな変な液体に頼んなくたって星野君と……キャー!)
「西園寺、どうした?早く席につけ」
エリカは担任の言葉でハッと我に返る。それを真横で見て笑う女子。
「ハハハッ、やっぱり西園寺って面白いな」
つづく
こんにちは、はしたかミルヒです!
昨日車に乗って小学校に登校する夢を見ました。学校に着くとなんと担任の先生はムツゴロウさん!(笑)ムツゴロウさんは首に蛇を巻きヘヘヘッと笑いながら私の方に近づいてきて、私は恐怖で(蛇は大の苦手)教室から出て行っちゃいました(笑)そんな夢でした...^_^; ってかムツゴロウ王国って今はもうないのかな?
ってなことで第二話を読んでくださりありがとうございます!
次回はエリカが寺田由奈に嫉妬してしまう話になります。
お楽しみに♪




