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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース2:アイドルになりたい(ゆかり編)
15/109

第三話

■■■


「とは言ったものの……これじゃぁお姉ちゃんとおんなじ考えだよね……」


 ゆかりは自分の部屋でドリームショップで夢子に言ったことについて悩んでいた。


 コンコン


「入るわよ」


 部屋のドアをノックした後エリカが入ってくる。


「あ、お姉ちゃん」

「帰ってくるの遅かったじゃない? もしかしてあの店にずっといたの?」

「うん、あの店すごく不思議なお店でね、夢を売っているのよ。私をアイドルにしてくれる夢の液体があるんだけど、それを買うのにちょっと両親に相談しようかどうか迷っててね……」

「は? 何それ?」


 エリカは怪訝な面持ちでゆかりに聞いた。


「なにそのインチキ商売?? あんた、それ騙されてない? ちなみにいくらで売ってるのよ?」

「それが聞いてよ! なんと十万円! たったの十万だよ!!」

「えっ? じゅ、十万?!」

「安いでしょ! 自分の夢がたったの十万ぽっきりで叶うのよ!」

「ハァ……ちょっとゆかり!」


 エリカは手を額に乗せ、ため息をついた後ゆかりに言い聞かせる。


「あんた騙されてるの分かってる?? そのインチキ占い師だか商売人だか知らないけれどゆかりを騙して金を稼ごうとしてるのよ!」

「そうかなぁ……そんな人を騙すような感じの人じゃぁなかったけど……」


 ゆかりは腑に落ちない様子で上を向く。


「たいてい騙されてる人って自分は騙されてないって都合よく思うもんよ!」

「それよりもさぁ、その十万円どうやって手に入れたらいいと思う? この話をパパやママにしても信じてくれないだろうし……」

「もう! ま~だそんなこと言ってるの? 騙されても知らないんだから! それこそバイトでもして稼いだら!」

「あっ、そうか! バイトか。その手があったね!」

「な~に納得してるんだか……」


 ゆかりの嬉しそうな顔を半ば呆れ顔で見るエリカ。


「もう私は何も言わないけど、その十万でもっと有意義なことしたら? じゃぁ、自分の部屋に戻るね」


 エリカがドアを閉めると同時にゆかりがエリカにお礼を言う。


「あ、お姉ちゃん、アドバイスありがとう! おやすみ!」


(ハァ……あの子ってあんなにバカだったかしら……)


■■■


 次の日ゆかりは学校が終わったあと一目散に家に帰った。アルバイトのことで家政婦の今日子に頼み事があるらしい。


「ただいまー!」

「「「「「おかえりさないませ、ゆかりお嬢様」」」」」


 家政婦たちが一斉にゆかりに頭を下げる。


「お帰りなさいませ、お嬢様。今日のご帰宅はお早いでございますわね」


 今日子さんも微笑みながらゆかりに挨拶をする。


「今日子さん! ちょっと頼みごとがあるんだけど……聞いてもらえる?」


 ゆかりは子犬のように目をウルウルさせながら上目づかいで今日子に尋ねた。


「もちろんでございます。では私の部屋で紅茶でも飲みながらお話ししましょうか?」


■■■


「今日子さんの部屋、久々に入ったけど素敵な家具がたくさんある!」

「そうおっしゃっていただいて光栄ですわ。家具を集めるのは私のささやかな趣味でございまして」


 そう言いながら今日子はアンティーク調のテーブルにアールグレイの紅茶と手作りクッキーを置きゆかりに差し出した。


「わぁ~! 今日子さんのクッキー、私大好き! いっただきまーす!」

「ありがとうございます。どうぞ召し上がってください」


 ゆかりは今日子さんの微笑みを前にそのクッキーを一枚食べる。


 サクッ!


「おいし~~! サックサク! このクッキーの味を知っちゃったら他のクッキーなんて食べられないよね~」

「まぁ、お嬢様にそんなに褒めていただけるなんて……」


 今日子は頬に手を当て薄っすらと赤らめた。


「あ、そうそう、それで頼みごとがあるんだけどね……」


 紅茶でまだ口の中に残っているクッキーを飲み込んだ後、ティーカップをテーブルに置くゆかり。


「あっ、そうでしたわね。その件でここに来たことをすっかり忘れていましたわ。うふふふっ。それでどのようなご相談でございますか?」

「あ、あのね……私……」


 ゆかりは下を向き今日子はそのゆかりをじっと見つめる。


「あ、あ、アイドルに……アイドルになりたいの!」

「なんと! それはそれは大変素晴らしいことでございます!」


 今日子は嬉しさのあまりゆかりの手を取る。


「そ、それでね、その夢のために……ここで……あ、あ、」


 ゆかりの手を取ったままゆかりを見つめる今日子。


「あ、アルバイト……きょ、今日子さんのもとでアルバイトさせてください!!」


 その発言に驚く今日子。しかしすぐに笑顔になり、その頼みごとを承諾した。


「わかりました。ゆかりお嬢様の夢のために私も一肌脱がせていただきます!」

「と言うことは……」

「もちろんここで私のお手伝いをしてください!」

「今日子さん……大好き!!」

「その代り、お嬢様だからと言って妥協はしませんわよ! バシバシ厳しくいきますからね!」


 今日子さんにしては珍しく、いたずらっ子のような表情を見せた。


■■■


 ジリリリリリリリリッ、ジリリリリリリリリッ


 眠い目をこすりながらゆかりはそばに置いてある目覚まし時計を止める。


 バシッ


(はぁ~~、もう五時……? もうちょっとだけなら……)


 そう眠りにつこうとした瞬間、ふと昨日の今日子の言葉を思い出す。


『バシバシ厳しくいきますからね!』


「って、寝てなんていられないわ!」


 バサッと掛け布団をめくりあげ慌てて支度をする。


■■■


「すいません! 遅くなりました!!」


 自分の部屋を出て階段を降り、下の広間に行くとすでにお手伝い全員が仕事の準備に取り掛かっていた。


「「「「おはようございます、ゆかりお嬢様」」」」

「あ、おはよう……じゃない。おはようございます!」


 ゆかりはお手伝い全員に頭を下げて挨拶をする。するとそこへ今日子がやってきた。


「ゆかりさん、おはようございます。初日から六分三十秒遅刻ですわね」


 今日子の律儀な性格がこの言葉からも読み取れる。


「今日子さん! 初日から遅刻してしまってすいません」


 ゆかりも今日子の自分に対する呼び名が変わったことを指摘することもなく素直に謝った。


「皆さん、朝からお忙しいところすみません!」


 そう言ってみんなを中央に集める今日子。


「もうお聞きになっているとは思いますが今日から一緒に働くことになった西園寺ゆかりさんです」

「さ、西園寺ゆかりです。色々とご迷惑をおかけするとは思いますがよろしくお願いします」


 ゆかりの自己紹介が終わると朝の仕事が始まった。


「よーし、気合入れて頑張るぞ!」

「あ、ゆかりさん、ちょっといいですか?」


 今日子がゆかりを呼び止める。


「ゆかりさんは学校があるので一日中働いてもらうことはできませんが、朝は、五時から七時まで、夕方は十七時から十九時まで、一日合計四時間働いてもらいますがよろしいでしょうか?」

「はい。もちろんです!」

「では、ゆかりさんの指導係をきめたいと思いますが……あ、華子さん、ちょっと来ていただけますか?」

「はい、ただいま」


 今日子に声がかかった華子と言う女性はちょっと小太りの優しい顔立ちをした女性だ。


「今日からゆかりさんの指導係に任命します、横山華子さんです」

「ゆかりおじょぅ……じゃない、ゆかりさん、もう分かっているとは思いますが一応名前を。ゴホン……私、横山華子と申します。今日から一緒に頑張って行きましょうね!」


 そう言うとゆかりに笑みを浮かべエールを送る華子。


「華子さんが指導係だなんて嬉しー! はい、こちらこそよろしくお願いします!」


 こうしてゆかりは華子の指導の下、生まれて初めての仕事を体験することとなった。


■■■


「バスルームの掃除はもう終わらせたんですか?」

「はい、もうそこは掃除を終わらせました! 今から廊下を掃除します」

「では、この髪の毛は?」


 華子はバスルームの床に落ちていた髪の毛を一本拾ってゆかりに見せた。


「あ……すいません!」


 ゆかりは慌てて床を拭き直す。


「ふぅ……やっと拭き終った。次は廊下の掃除っと」


 廊下で――――


「危ない!!」

「え? あっわわわわっ~!」

「その花瓶! 丁寧に扱わないと割れちゃうわよ!」

「す、すいません!!」

「本当に気を付けてよね!」

「はい……」

「まだここにほこりがある!」

「すいません! いますぐ掃除し直します!」

「ここも拭き残し!」

「す、すいませーん! 今やります!」


(な、なんだろ……華子さんってこんな性格だったっけ……)


 自分がここで働く前に接してくれた華子と今の華子の態度があまりにも違いすぎてショックを受けるゆかり。


「はぁ……もう大丈夫だよね? 拭き残しないよね……?」


 ゆかりは華子に注意されないように何度も拭き残しがあるかどうかチェックした。そこに華子がやってくる。


「ゆかりさん、お疲れ様です。もう七時ですので午前の仕事はここで終わりにします」

「え? もう七時? 早いなぁ~」

「お疲れ様でした。早く食事を済ませないと学校に遅れますよ」


 先ほどとは一変、華子の顔には笑みが浮かんでいた。


「あっ、そうだ、学校のことすっかり忘れてた~! お疲れ様でした!」


■■■


「ゆかり、おそ~い!」

「ごめんお姉ちゃん! あ、みんなおはよう!」

「「おはよう」」


 西園寺家の朝食の時間が始まる。西園寺家では必ず家族が皆揃ってから食事をいただくことになっている。


「じゃぁ、食べようか!」


 父親の総一郎が食事の開始を促す。


「「「「いただきます」」」」


 みんなで挨拶をした後、食事が始まった。


「おいしぃ~! なんでだろ? 働いた後のご飯は最高に美味しいよ!」


 ゆかりが口いっぱいに頬張り、嬉しそうな顔をしながらご飯を食べる。


「あら、ゆかり。そんなにたくさん口に入れては行儀が悪いですよ」


 母親の洋子が笑いながらゆかりに注意する。


「え? もしかしてゆかり、昨日の私の言ったこと本気にとって……」


 エリカが驚きながらゆかりの方を向く。そしてゆかりは笑顔でエリカに答えた。


「うん! 私、今日からここのお手伝いさんとして働くことになったのよ!」

「ば、ばっかじゃないの?? ねぇ、パパ、ママ、いいの? ゆかりがこんなことして!」

「ゆかり、何か欲しいものでもあるのかい? 言ってくれれば良いものの……」


 総一郎が寂しげな顔をしてゆかりに聞いてきた。


「ありがとう、パパ。でもいいの。自分でお金を稼ぎたいの。それで夢を買うんだから!」

「ゆかりの言う通り。欲しいものは自分で稼いで手に入れなくちゃね。エリカもパパにばっかり頼らないで、ゆかりと一緒に仕事したらどう?」


 洋子が笑みを浮かべながらエリカに言ってきた。


「な、何よ? 仕事をしたら偉いって言うの? ゆかりはママに褒めてもらいたくて仕事してるんでしょ? もうなんなの?? 食欲がなくなったわ。私、学校に行く。ご馳走様!」


 バンッ


 エリカは顔を赤くしてテーブルを両手で力いっぱい叩いてから席を立ち、足早にこの場から去った。


「お姉ちゃん……」


(もう何なのよ? みんなして……パパはともかくママは絶対私のことが嫌いなんだわ!)


 「あら? エリカお嬢様!」


 廊下を早足で去っていくエリカを見て今日子は心配そうな面持ちでエリカの後姿を見続けた。


「なにかあったのかしら……」 


 つづく

こんにちは はしたかミルヒです!

先週の土曜日にちょっと暇つぶしにスマホのゲームアプリ探してたら、面白いゲームがありました。その名も「セーラーダッシュ」!あの超有名なセーラー○ーン風(笑)のアクションゲームです。無料なので即インストールしてやってみました。無料だからどうせしょぼいゲームなんでしょ?と思っていたものの、やってみたらめちゃめちゃハマりまして今は暇さえあればやっています(笑)

ってなことで第三話を読んでくださりありがとうございました!次回は、ついにゆかりが初めての給料を手にします。そのお金であのお店に行って夢の液体を買うのでしょうか?

お楽しみに♪

ミルヒ

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