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ドリームショップ ~あなたはどんな夢を買いたいですか?~  作者: はしたかミルヒ
ケース2:アイドルになりたい(ゆかり編)
14/109

第二話

■■■


 日曜日、ゆかりは姉のエリカとショッピングに出かけた。もちろんゆかりはエリカの買い物に付き合うだけなのだが……


「ねぇ、これ見て!! 超カッコいいジャケットじゃない?? 私こういうのも好きなのよねぇ~!」

「まぁ、確かに素敵なジャケットだけど、値段見てよ、お姉ちゃん……」


 ゆかりが値札をエリカに見せる。


「十万円?! えーーーー!! 信じらんない!!」

「でしょ? やっぱ高すぎ……」

「安いじゃん!! 即買いだわ!!」

「え??」


 エリカの発言に唖然とするゆかり。


「すいませ~ん! このジャケットください!」

「かしこまりました。ありがとうございます!」

「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!!」

「何よ?」

「今日はティンファニーのネックレスだけ買うんじゃなかったの?」

「もちろんティンファニーのネックレスも買うわよ」

「ネックレスも?! さすがのパパだって怒るわよ~! だって十万だよ? 十万!!」

「あ、このスカートもください!」

「お姉ちゃん!!」

■■■

「「「ありがとうございました! お気をつけて~」」」


 深々と頭を下げる店員たち。


「お姉ちゃん! ジャケットなんか買っちゃって、その上スカートまで!」

「スカートなんてたったの三万よ? それくらいいいじゃな~い♪」


 エリカは鼻歌を歌いながら上機嫌で歩く。


「さぁ、次はコウチに行くわよ~!」

「えーー?? また違うお店に行くの?? ティンファニーはどうなったのよ??」

「かわいいバッグを見つけたのよ~」


 そして――――


「あ~! 今日もいっぱい買っちゃった♪」


 エリカの買い物は結局日が暮れるまで続いた。


「お姉ちゃん、ぜったいパパに怒られるんだから……知らないよ!」


 エリカの両手にはたくさんの買い物袋。ゆかりはそんなエリカを見て腕組をしながら頬を膨らましていた。


「な~にそんなに怒ってんのよ? あんただって欲しいもの買えばいいじゃない?」

「私はお姉ちゃんみたくワガママじゃないもん……」

「ちょっと! ワガママって何よ? 私は誰にも迷惑なんか掛けてないじゃない??」

「お金の面でパパとママに迷惑かけてるじゃん……」


 ゆかりはボソりとつぶやく。


「迷惑だと思ったらくれないわよ? 迷惑じゃないからいつもお小遣いくれるんでしょ? それにママはともかくパパの懐はと~~っても大きいんだから!」

「もう……ああ言えばこう言う……」

「え? 何か言った?」

「別に……」

「もうそろそろ暗くなりそうだから帰るわよ!」

「それはお姉ちゃんのせいでしょ~」


■■■


「あれ?」


 家路に向かう途中ゆかりは急に足を止めた。


「ゆかり、どうかした?」

「いや、こんな店あったかなぁって……」


 ゆかりは不思議そうにその店を眺める。


「最近できたんじゃないの? ねぇ、早く帰ろっ」

「何のお店だろう……入ってもいいのかな……ねぇ、お姉ちゃん、一緒に入ってみない?」


 ゆかりはエリカの方を振り向き誘ってみるのだが……


「え? 嫌よ! なんかこの店、なんか不気味じゃない?」


 気味悪がって入ろうとはしないエリカ。


「そうかなぁ。でもなぜだろう? この店に惹かれる感じがするのよ……」


 そうゆかりは言い、店をじっと見つめている。


「んっもう! じゃぁ、アンタ、一人で入ってよね。私、先帰るから! じゃぁね!」

「あっ、お姉ちゃん!!」


 しびれを切らしたエリカはゆかりを置いていき家に帰って行ってしまった。


「お姉ちゃん、行っちゃった……でもやっぱり気になる……」


 そしてまた再びその店を見つめる。


「よし、入ってみよっ!」


 そして意を決したゆかりはゆっくりとその店の扉を開ける。


 カラ~ン!


「いらっしゃいませ! ドリームショップへようこそ!」

「ここは……」


 ゆかりは外観とは裏腹にその派手な内装に呆然と立ち尽くす。


「お客様? 大丈夫でございますか?」


 ドリームショップの店員、夢子はゆかりの顔を心配そうに覗く。


「ん? わ、わぁ!!」


 夢子の派手な見た目に驚くゆかり。今日の夢子のファッションはショッキングピンクのミニワンピにピンクと黒のニーハイソックス。背中にはアゲハ蝶のような羽がついている。


「こ、このお店って……コスプレショップ??」


 夢子はゆかりの発言に笑って答えた。


「うふふふっ。おもしろいですわ! しかしお客様、このお店はコスプレショップではなくドリームショップでございます」

「ドリームショップ?」

「はい、店名の通り夢を売るお店でございます」

「え??」


 きょとんとするゆかりに対して微笑みかける夢子。


「西園寺様の叶えたい夢は何でございますか?」

「え??」


 まだゆかりは事態をよく呑み込めていない。


「うふふふっ。西園寺様、このお店は西園寺様の叶えたい夢を叶えて差し上げることが出来るのでございます。ですので西園寺様の夢をおっしゃっていただけますか?」


 夢子はまた笑顔でゆかりを見つめた。


「ゆ、夢を叶えてくれる店……?」


 まだ信じられないといった様子のゆかり。


「はい、さようでございます」

「じゃ、じゃぁ……」


(まだ頭ではよく理解できてないんだけど、言ってみる価値はあるよね……)


「えぇっと……」

「はい」


 ゆかりはもじもじしながら答えた。


「あ、あ、アイドルになりたい……」

「かしこまりました。アイドルになりたい夢でございますね! 少々お待ちくださいませ~!」


 そう言うと夢子は店の奥に入って行った。

 その様子を呆然と眺めるゆかり。


(変なお店に入っちゃったかな……? やっぱりお姉ちゃんの言う通り、入るべきじゃなかったかな?)


 ゆかりはこの店に入ったことを後悔し始めた。そうこうしているうちに夢子が店の奥から木箱に入れてある液体の入った小さな瓶をいくつか持ってきた。


「えぇっと、アイドルになりたい夢の液体は……」


 そう言うと夢子は、液体が入った瓶をひとつずつ指で順に触れながら吟味し、そして綺麗なオレンジ色の液体を選び出した。


「西園寺様、この液体が西園寺様の夢を叶える液体でございます!」


 夢子は笑顔でその液体をゆかりに見せる。


「はぁ……」


 ゆかりは呆然とその液体を眺めた。


「こ、この液体を飲めば、ゆ、ゆ、夢が叶うんですか……?」


 恐る恐る夢子に尋ねるゆかり。


「はい、さようでございます。しかも実際にその夢を西園寺様の夢の中で体験できるのでございます。」

「夢の中で体験できる??」


 ゆかりは不思議そうな顔つきで夢子を見つめる。


「はい、就寝前にその液体をすべてお飲みください。そしてそのままお休みください。そうすると実際に西園寺様の将来の出来事が夢の中で体験できるのでございます。もし万が一、体験後にお気に召さなければ、次の日にその空になった瓶をわたくしにお戻しください。その瓶と引き替えに西園寺様にはお支払いいただいた金額全てお返しいたします。しかしその時点で西園寺様との契約は無効となりますのでご了承ください」

「ん? この液体はただではもらえないんですか?」

「はい、ここはドリームショップ。夢を売るお店でございますから~」


 ゆかりはがくりと肩を落とした。


(そうだよね。簡単に夢を叶えられるわけないもんね……)


「あ、あのぉ、ま、まだ買うとは決めてないんですけど、ち、ちなみに……い、いくらですか?」

「そうですねぇ……」


 夢子は人差し指を顎に当て考え込み始めた。


(値段ってその場で考えて決めるのね……)


 ゆかりは不安げな表情を浮かべながら夢子を見つめる。


「はい! 西園寺様の夢の値段決まりました!!」

「い、いくらですか??」


 唾をゴクリ飲み夢子の答えを待つゆかり。


「西園寺様の夢の値段は……」


 夢子はゆかりの顔を見てニヤリと微笑む。



「……十万円でございまーす!!」



「えっ? じゅ、じゅ、十万円??」


 その値段に驚き目を丸く見開くゆかり。


「フフフッ。少々お高いでしょうか?」

「ゴクン……て、店員さん!!」

「はい、何でございましょう」

「や……」

「や?」



「や……安過ぎます!!」



「……はい?」


 夢子はゆかりの口から思ってもない答えが出てきたので一瞬脳が停止してしまった。


「買います!! 私、その夢の液体買います!! たった十万円で夢のアイドルになれるなんて安いなんてもんじゃないですよ! ホント驚きの値段ですね! 今日はセールなんですか??」


 そう興奮気味に言いながらゆかりは夢子の手を握りしめた。


「あ……あぁ……そ、そう、や、安いでございますよね。ははははっ……」


 なんとか平静を保ちつつも苦笑いを浮かべる夢子。


「店員さん、今私、財布に少ししかお金が入ってないのでちょっと親に相談してきます。後日また来るのでその時に売ってくださいね! ではまた!」

「か、かしこまりました……ま、またのご来店をお待ちしております……」


 しかし帰り際にゆかりがハッと気づき夢子に注意を促す。


「あ、店員さん! あとで買う時に勝手に値段を上げないでくださいね! 絶対十万円で売ってくださいね! では、さようなら~!」


 バタン


「このわたくしが押され気味になるとは……こういうこともたまにはあるのかしら……」


 ゆかりが出て行った後の残像を感じながら夢子は呆然と立ち尽くしまたもや苦笑いを浮かべていた。


 つづく

虫に刺されて左手中指がパンパンに腫れている はしたかミルヒです! かゆいです!腹が立つくらいかゆい!昨日は寝ながら指をかきまくり、今日の朝見たらかき過ぎたせいで真っ赤になっていました(苦笑)でも虫に刺されたところって一度かいちゃったら止まらなくなりますよね^_^; あ~、痒い痒い...

ってなことで第二話を読んでくださりありがとうございます! 次回は、ゆかりが夢の液体のために自分の力で稼ごうと考えます。果たしてどんなことをして稼ごうと考えるのか...お楽しみに♪

ミルヒ


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