第四話
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「ねぇめいちゃん、私、将来の夢決まったよ」
パン!
「え? やっぱりドリームショップの店員さん?」
パン!
「ははは! 違うよ~。私の夢は……アイドルになること!」
シャッ、パン!
「アイドル??」
シャッ……
私と夢乃ちゃんは毎日のように学校が終わってはどちらかの家で一緒にカードゲームをしたり、ぬいぐるみやお人形遊びをしていたの。今日は夢乃ちゃんの大好きなぬいぐるみも交えてページワンストップをしながら夢乃ちゃんの将来の夢について会話をしていたところだった。しかし夢乃ちゃんの夢にびっくりして目を大きく見開いていると夢乃ちゃんは苦笑いを浮かべうつむき加減にこう言ったわ。
「やっぱり、私なんかにアイドルになる才能なんてないかな?」
私は手を左右に振り夢乃ちゃんの言ったことを否定する。
「いや、夢乃ちゃん、すっごくかわいいし、なろうと思えば絶対なれると思う! 私が驚いたのは夢乃ちゃんがアイドルになりたいって思っていたなんて全然知らなくって……。夢乃ちゃん、頭いいでしょ? だからお姉さんと同じ科学者とか似合うイメージだったから……」
「そっか。やっぱりみんなのイメージはそんな感じなのかな。でもアイドルだってたくさんの人たちを幸せにできるんだよ!」
そう言った後、夢乃ちゃんは私に優しい笑みを投げかける。
「確かにアイドルもたくさんの人たちを幸せにできるよね。でもなんでアイドルになりたいと思ったの?」
「可愛くてきらびやかな衣装を身に着けて歌いながら踊るって素敵じゃない? あぁいうキラキラした世界に飛び込んでみたいの。あとそれに今の状況から抜け出したいっていうのもあるし……」
「今の状況から抜け出すため……?」
「うん。もうお姉ちゃんと比べられるのはいやなの。ならいっそ、お姉ちゃんの夢とは正反対の大きな大きな夢を持てば、親だって比べることができないでしょ?」
「確かに……。じゃぁ、夢乃ちゃんはドリームショップの店員さんはやらないんだね?」
夢乃ちゃんの言っていることは正しい気がしたけれど私はなんとなく悲しい気持ちになってしまった。
「ドリームショップはめいちゃんに任せるよ!」
「え?」
「めいちゃんはドリームショップの経営者になればいい!」
「経営者……」
「うん! そうすればめいちゃんは自分の夢を好きなだけかなえることができるし、お客さんも幸せにできるでしょ」
「そうか。経営者になれば……」
私の夢もすぐにかなえることができる……。それは小説家になること……。
私は心の中で夢乃ちゃんが言ったことに対して納得し、そして夢乃ちゃんのためにも私がドリームショップの経営者にならなければと思った。
「そうだね! 私が経営者になれば夢乃ちゃんの夢もかなえてあげることができるし!」
私は身を乗り出してそんなことを言うと夢乃ちゃんは私から視線を少しそらし、こんなことをぼそりと小さな声で言ったの。
「ありがとう。でも私は自分の力で夢をかなえたい」
そう言いながら夢乃ちゃんは横に置いてあったクマのぬいぐるみを手に取り、ギュッと抱きしめていたわ。
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夢乃ちゃんが転校してきてから学校の木々が色とりどりに変わってゆき、そしていつの間にか紅葉が色めく季節になっていた。十月、学芸会の出し物を決める日がやってくる。
「みなさん、みなさんのおかげで運動会も無事に成功し、まだその余韻に浸っている人は多いと思いますが、十一月には学芸会があります。その学芸会でここのクラスは何をやるのか決めなければなりません。何をやりたいのか意見のある人は手を上げてください」
「はい!」
ここで夢乃ちゃんの左隣の雄大君が手を上げた。
「雄大君、どうぞ」
「俺は、遊戯がいいと思います!」
「遊戯ですね」
「俺、子供っぽいやつじゃなくて、かっこいいダンスがしたいんだ!」
「なるほど! ほかには?」
するとクラスのほとんどが「かっこいいダンスやりたい!」「いいんじゃない?」「俺、エックスザイルみたいなダンスしたい!」と雄大くんの出した案に同調する声が次々と聞こえてきた。するとこの教室のちょうど中心の席に座っているナナちゃんが手をあげ「遊戯でいいと思います!」と大きな声で賛成したの。すると誰に言われるわけでもなく自然とここ教室全体から拍手が湧き起こり、みんな同意の声を上げたわ。
「俺も!」「私もさんせーい!」「みんなでクールなダンスしようぜ!」
「では、四年三組は遊戯に決まりました!」
みんなの声に真理子先生はにこやかな顔で決議した。
「では次に何を踊りたいかということですが……」
先生がまだ言い終えないうちに窓側の一番前に座っている男子が声を上げたの。
「絶対エックスザイルがいい!」
すると再びクラスのみんなが一斉に声を上げたわ。
「俺もエックスザイルがいい!」「私も!」「ぜったいエックスザイルだよね!」
しかしそんな中で一人だけ指を絡めてそわそわしている人がいた。私の隣にいる女の子。
「夢乃ちゃん、どうしたの?」
私は小声で隣の席の夢乃ちゃんに話しかけたわ。
「い、いや、エックスザイルもいいんだけど……」
「いいんだけど?」
「でも……A……KBもいいかなって……」
「AKB……か」
私は手をあごにあて、天井を見上げて考えてみた。
女の子が踊るのなら可愛くていいかも。AKBの振付はあまり難しくなさそうだし、キラキラした可愛らしい衣装も着れる。女の子なら一度はあぁいう衣装を着てみたいって思う!
夢乃ちゃんの意見に賛同しようと横をちらりと見る。その時、ハッと思った。
そっか! 夢乃ちゃんの夢はアイドルになること。だからAKBがいいって言ったのね……。
「夢乃ちゃん」
「やっぱり、無理……かな?」
苦笑を浮かべ俯き加減にそう言う夢乃ちゃんに私はにこりと笑みを浮かべ、そして手を上げた。これが初めての挙手だったわ。
「はい」
一気に教室が静かになる。真理子先生はもちろん、みんな一斉に私に視線を注いだ。なんだ? なんだ? という具合にみんな物珍しそうな目で私をじっと見つめていた。初めての気分だった。パンダになるのは。
「あ、あの……えぇっと……」
手を上げてみたものの、あまりの視線の多さに口ごもってしまう。
「めいちゃん、どうしたのかな?」
なかなか発言をしない私に真理子先生が心配顔で尋ねてきた。
「あの……その……」
緊張して声が出ない。言いたいことがあるのに……。
「おい、なんだよ青木! 意見がないなら手ェ、あげるんじゃねーよ!」
夢乃ちゃんの左隣の雄大君が私にキツイ言葉を投げつけた。その言葉に委縮してしまう私。
「そうよ! 意見がないのに何のために手を上げたのよ? 時間の無駄よ! 早く次進めましょ!」
ナナちゃんはそう言うと真理子先生を見て、進行を促したの。
「めいちゃん、本当に何も意見はないの?」
またもや真理子先生は心配な面持ちで私を見つめる。
「あ……えぇっと……」
だめだ! どうしよう! 言いたいことがあるのに! 緊張して全然声が出ないよ!
私は俯いて思わず今の状況から逃げ出したいがために思い切り目をつむってしまった。
「せんせーい! 早く次進めてください!」
「そ、そうね……。じゃぁ……」
「めいちゃん、本当に何もないの?」
目を固くつむっていると横から心配そうな声色で夢乃ちゃんが私に尋ねてきた。
「い、いや、その……A……KBの案だ、出そうと思って張り切って手を上げたんだけれど」
「え? もしかして私のために?」
「え、いや、その……アイドルって女の子たちのあこがれでしょ? 誰だって一度はかわいい衣装着て踊ってみたいって思うからさ」
「めいちゃん……」
「で、でも緊張しちゃって言えなくて……」
私が俯き、軽く笑いながら自嘲気味にそういうと夢乃ちゃんは小さく「よし」と言った直後、スーハーと二回ほど呼吸をし、そして夢乃ちゃんは細い腕をスッとあげたの。
「ん? 夢乃ちゃん? 何か意見があるのかな?」
真理子先生は普段手を上げない夢乃ちゃんを見て再び私の時と同じように驚いた表情を浮かべ言葉を発した。するともう一度夢乃ちゃんは小さく呼吸をした後、意を決した表情でこう言ったわ。
「わ、私、A、A、AKBのダンスがしたいです!」
「ゆ、夢乃ちゃん?!」
私は驚いてしまい思わず夢乃ちゃんの顔を見たの。でも夢乃ちゃんは顔を真っ赤にしながらも自分の意見を言えた達成感からか口角が少し上がっていたわ。
「AKBのダンス……」
真理子先生が夢乃ちゃんの言葉を復唱する。
「AKB! いいかも!」
教室の中心から夢乃ちゃんの案を賛同する声が聞こえてきた。
「ナナちゃん……?」
夢乃ちゃんがナナちゃんの声に反応する。
「夢乃ちゃん、いいこと言うじゃん! 私、AKBの曲に合わせて踊りたい!」
しかし雄大君はナナちゃんの言葉に待ったをかけたの。
「ちょっと待てよ! 女はいいかもしんないけど、俺たちはどうなるんだよ? 男がAKB踊るなんて絶対嫌だかんな!」
ふてくされ気味に発せられた言葉を聞いてナナちゃんは平然と言葉を述べたわ。
「別に男子と女子が一緒に踊る必要ないじゃん。男子は男子でエックスザイル踊ればいいでしょ? 女子はAKBでさ! もちろんセンターは私ね!」
そう言った直後、ナナちゃんは後ろを振り向き、夢乃ちゃんを見てニッコリと笑ったの。それを見た夢乃ちゃんもナナちゃんに笑顔で返したわ。とっても微笑ましい光景だった。
あのぬいぐるみ事件の時はナナちゃんのことあまりよく思っていなかったけれど、結構いい人だったり……。
そんなことを考えていたら私も思わず笑みがこぼれてきちゃった。
「おう! それいいんじゃないか?」
ナナちゃんの意見に窓側の一番前に座っている男子が賛同する。
「そうね! AKBもエックスザイルも超人気だし、この二グループのダンスを踊れば、観客だって食いついて見入るわよ!」
「ってことは四の三は間違いなく目立つね!」
「俺、目立つのは大賛成!」
「じゃぁ、決まりでいいんじゃない? 男子はエックスザイル、女子はAKBってことで!」
そう言うとナナちゃんは先生を見て同意を促す。
「そうね~、先生もそれでいいと思います。この意見に異議のある人はいますか?」
「ないでーす!」「ないに決まってんだろ~」「絶対賛成!」
そうして私たちのクラスは満場一致で男子はエックスザイル、女子はAKBのダンスをすることに決まったわ。
「では曲目を決めていきましょう! まずはエックスザイルについて、何の曲の踊りがいいでしょうか?」
先生が質問するとすぐに雄大君が手を上げ、意見を出したの。
「はい! 俺、『チューチュートレイン』がいいです!」
するとほかの男子もその意見に次々と賛同する。
「俺もチューチュートレインがいい!」「あのダンス、かっこいいよな~」「俺もそれ踊りてぇ!」「やっば! 俺らマジかっこいいんじゃね??」「目立てばなんでもいい!」「俺、アツジやる!」「バカ! アツジは踊んないだろ!」「じゃぁ、タカヒコ!」「タカヒコもだ!」
ほぼ男子全員がその意見に乗ったところで真理子先生が手を叩いて興奮している男子生徒たちを落ち着かせた。
「はいはいはい! そこまで! では男子は『チューチュートレイン』で決まりですね!」
そう言って先生は黒板に大きく『男子:エックスザイル チューチュートレイン』と書いたわ。
「では次に女子のAKBの曲目を決めたいと思います!」
するとすぐに元気よくナナちゃんが手を上げる。
「絶対、『フォーチュンクッキー』がいいと思います!」
するとやはり女子も、次から次へとナナちゃんの意見に賛同したの。
「確かに、フォーチュンクッキーなら簡単に覚えられそうだし、衣装もかわいいもんね!」「そうそう! あの衣装、超可愛いよね!」「絶対フォーチュンクッキーだよ!」「目立つなら何でも良し!」「私、サシコやる!」「じゃぁ、私はまゆゆ!」「ちょっと私がまゆゆやるんだから!」
「じゃぁ、女子はAKBのフォー……」
真理子先生がフォーチュンクッキーと言おうとした瞬間、夢乃ちゃんがおどおどしながらも「はい」と声を出したと同時に手を上げたわ。
「夢乃ちゃん、どうしたの?」
「あ、あの……フォーチュンクッキーでもいいと思うんですけど、私は……あの……ふ、フライングゲットを踊りたくて……」
「フライングゲット?」
するとナナちゃんがいぶかしげな表情で夢乃ちゃんを見た。
「フォ、フォーチュンクッキーはみんなが踊れるように簡単な振付けされているの。でも私はもっと本格的なダンスをしたくて……。フライングゲットの踊りはすごくかっこいいのよ。本格的と言っても練習すれば絶対にうまく踊れると思うし、それに学芸会まで一か月ほどあるからちゃんと練習すればきっと成功できると思う……」
すると私の前の席に座っている女の子、みかちゃんが振り向き、夢乃ちゃんを見てこう言ったの。
「私、フライングゲット、大好きだよ! 確かにダンスかっこいいから、成功したら絵になるよね!」
みかちゃんの発言後、ほかの女子たちも口をそろえて「私もフライングゲット好き!」「あんなクールなダンス出来たらかっこいいよね!」「それにそれにフライングゲットの衣装もかわいいし! 私、踊ってみたい!」などフライングゲットを踊ることにみんな賛成したわ。
「まぁ、フライングゲットも悪くないかも……ね」
ナナちゃんは最後まで渋っていたものの、みんなのフライングゲット熱に押され、最後はこうぼそりと言い、フライングゲットを踊ることに賛成をしたの。
「では女子のみなさん、ダンスの曲目はAKBのフライングゲットで異議はありませんか?」
私もほかの女子たちも口をそろえてこう言ったわ。
「「「「「「「「「「「異議ないでーーーす!」」」」」」」」」」
私は笑みを浮かべながら横をちらりと見てみる。すると夢乃ちゃんは目じりから光るものを見せて、あふれんばかりの笑みをこぼしていた。そして彼女も小さな声でこう言ったわ。
「異議なし!」
続く
こんにちは、はしたかミルヒです!
第四話を読んでくださりどうもありがとうございます!
最近、某大人気レシピサイト(クック○ッド)のレシピ本にハマっていまして、この一週間のうちに二冊も買っちゃいました~ww いや~、レシピ本見るの好きなんですよね~。もちろん、有名料理研究家のレシピ本も持っていますが、クック○ッドのレシピのほうが、なんとなく私の口に合うものが多いんです。
レシピ本好きな方は是非♪
ではまた明日朝7時に!
ミルヒ




