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私たちは夫婦

お見苦しい点等あるかもしれませんがよろしくお願いいたします。

また、土砂災害について記載がありますので、そういったことについて抵抗がある方、または不快に思われる方は避けることをおススメいたします。


話の内容を少し変えました。




夫婦は似たもの同士か、正反対な性格か、どちらかである。



そうふと考えながら今日の晩御飯のメインディッシュである鶏肉の照り焼きを器にきれいに盛り付けるのは、20歳という若さで結婚した瑞穂。現在23歳である。

最後にミニトマトを飾り、テーブルにのせる。


ちらりと外に視線を移せば、ものすごい勢いで雨が降っている。

もう1週間も雨が止まず降り続けている。

瑞穂がいつも手入れをしているご自慢の庭はもはや「これは池です。」と言い切ってしまってもいいくらに水浸しだ。

あぁ、雨が降る前に植えた種はもう芽が出ないだろうな…。キレイな花が見たかったんだけどな。とガーデニングのことを想えば未練がましくなってしまう。

気分転換をしたくて、外に出たくてもこんな状況だから家に引きこもり状態だ。

もともと、そんなに外に出歩きたがる方でもないから苦痛ではないけれど、それでもこんな状態が1週間も続けば嫌になってしまう。


ふぅ。とつきたくもない溜め息が、小ぶりのしかも口紅なんて必要ないくらいの血色の良い口から出てきてしまう。


最近よく考えてしまう「夫婦の悩み」にドツボに嵌り、気持ちが落ち込んでしまうのにさらに追い討ちをかけられたようだ。



「夫婦の悩み」



そんなテーマが頭の中を支配する時がこようなんて、お付き合いをしていた頃や結婚2年目までは思いもしなかった。


誰もがそう思うだろうけど。







瑞穂には5歳年上の章吾という男を人生のパートナーとして心に決め3年前に結婚したのだ。

章吾は切れ長の二重にすっと通った高めの鼻筋、唇は薄く大きすぎるでもなく小さすぎない整った形。思わず吸いつけられる唇をしているのだ。

小顔で形の良い頭はショートヘアがしっくりと馴染み似合っている。

しかし、雰囲気が…オーラがなんとなく怖いので、女性全般からのウケが良いという訳ではなかったようだ。あまり表情が豊でないというのもある。

それでもその雰囲気が好きな女性からは人気があり、けっこうモテたそうだ。


そんな章吾が自分のようなどこにでもいる幼い顔立ちの女のどこが良かったのか…バイト先の男性の先輩に紹介され、しばらくメールのやり取りなど他愛無い会話をやり取りしたり、先輩とその彼女と一緒に4人で遊んだりとお友達関係でいた。しかし、ある日何がきっかけかわからないが、章吾から急に告白された。それからは淡白か?と思われたダンナさんが積極的になり、こちらが引いてしまうほど愛された…。(過去形)

それからあれよあれよという間に結納し、結婚、ガーデニングが大好きな私の為に広い庭付きの一軒家を購入してくれ、現在そこで毎日章吾の帰りを待つ生活を送っている。


瑞穂は大人しい顔をして実はジッとしていられないという性格だ。

専業主婦でまだ子がいないものだから、時間には余裕がある。

家事をこなすスピードを早くし、要領よくこなせれるよう頭を使えば、けっこう時間を確保できる。


そうやって確保できた時間に瑞穂は手芸をしている。







今年に入ってから急にダンナさんの態度がそっけなくなったのだ。

あれほど周りからダンナさんは情熱的だとからかわれていたのが嘘のように。

熱い鉄が冷や水で急激に冷やされたように。

こちらが何かしでかしたか、気に触るようなんことをしたのか考えたが、心当たりがありすぎて困った。とにかく日ごろから何かとやらかしてしまうのが瑞穂なのだ。

とにかく心当たりがあること全てについて謝罪したが、どうやら違うらしい。


こうなればお手上げ状態で瑞穂は冒頭にあったあの言葉がずっと頭から離れないのだ。

ネットで同じように悩んでいる人が居ないのか検索してみると、お互いよく理解しあわないうちに結婚すると後で、本当にこの人のことを愛しているのかと疑問に思う。などさらに不安になるような言葉がずらーっと並んでいる。最終的には当社のカウンセリングを受けませんか?というチラシに行き当たるのだ。


もう本人から言われるのを待つしかないな。でもそんなの待っているとこっちの精神上よろしくない!こうなたら聞いてみようか…とぼんやり考えていると


「ピンポーン」


ダンナさんが帰ってきたようだ。

いつもより帰りが早かったのはこの大雨の為かもしれない。

無事で帰って来てくれてほっと安心する。


「おかえりなさい。」


「…ただいま。」


いつものようにあいさつを交わしながら、ダンナさんの鞄を受け取る。



「すごい雨で大変だったでしょ?お風呂沸かしてあるからは入れるよ。」


「ああ。」


ダンナさんはやはりびしょ濡れでスーツが体にぴたりと引っ付いて気持ち悪そうにしている。

髪からはポタポタと雫が落ちている。

なんだか妙に色っぽい雰囲気がでているが、瑞穂はそんな雰囲気は天然でスルーしていた。

塗れてしまったスーツをクリーングに出す前にどうするかについて頭を働かせいた。





ダンナさんがお風呂に入ってダイニングに来る前に鞄をふき取り、スーツの形を整えながら水気を

とる。

そろそろかなと思った頃丁度ダンナさんがお風呂から上がり、頭の上にタオルをのせたままダイニ

ングにやってきた。


「ごはん食べよっか。」


「ああ。」


「「いただきます。」」


二人で手を合わせて黙々と食べる。


外はまだ雨が降っているようで、激しく屋根をたたく音だけがやけに聞こえる。


「…おいしい?」


「…ん。」


「ん」ってどっち?


会話になっているようななっていないようなそんな返事に今まで仕事で疲れているだろうと思い特に反論もしてこなかった瑞穂が今日こそ言わなければ何かが収まらなかった。


「…ねぇ。…ん?って何?おいしいの?おいくないの?はっきり言ってよ。」


こんなこと言うと大抵男は引くし重く感じるはずだ。

女の瑞穂ですら仕事が終わって寛ぎたい家庭でうっとしことを聞かれるとそう感じてしまう。

ダンナさんは少し驚いたような顔を一瞬して(初対面の方なら彼が驚いた表情をいしていることに気

付かないくらい微妙に表情を動かしただけ。)すぐにいつもの何を考えているか分かりづらい無表情

になってこちらを見ている。


「おいしいけど?」


ソレが何?と言いたげだ。


「…最近…私達あまり会話ないの知ってる?」


怖い。ダンナさんも顔を直接みることが出来ず俯きご飯を見つめながら問う私は卑怯かもしれない。

相手を責めているのに目を見て話そうとしないのだから。

ダンナさんがふーッと溜め息を付く音が部屋に響く。

反射的にびくっとするのも小心者だもん仕方ないよね…。


しかし、ここでいつものように謝っていたらいかんのだ!


ぎゅっと箸を持つ手にも力が入る。思い切って顔をあげ、正面に座るダンナさんをキッと見据え


「あの!私達って熱しやすく冷めやすいとおもわない!?」


今度はきょとんとした顔しているダンナさんの顔があった。


だぁ―――――――――――――っ!!!!!


意味不明なことを発した瑞穂を内心汗だらだらだ。

肝心のダンナさんは


「は?」


と短く返事をして好物の鶏の照り焼きを食べている。


「えっと、結婚当初はすごくいっぱい他愛ないことでも話したり笑ったりしたよね。

 でも今年に入って半年たつけど、なんかあまり会話という会話もないような気がして…。」


だんだん語句が小さくなる代わりに外の雨が一層強くなり瑞穂の言葉を飲み込んでいった。


「…仕事で疲れてるんだ。」


うんざりしたように言うダンナさんは本当に疲れているようだ。

これ以上無駄な会話をするよりも、今日あった出来事を楽しく話す方がいいよね…眉間にシワを寄せてダンナさんを見るとそう考えた。


でも、今日あった出来事を話すといっても何を話せばいい?

2日間雨で外に出れず、バイトも無かったため家に引きこもり状態だった。

とりあえず家のそうじをして、ガーデニングの本を整理、本を読んでいたくらいだ。

そんな話をしてもおもしろいのだろうか?

いざ話そうとすれば話題が無いことに気付く始末だ。

あれこれ考えているとダンナさんはすでに食べ終わったのか、食器を片付けながら席を立っていた。


「ご馳走さま。」


シンクのほうに歩くダンナさんを見るとなぜか胸が締め付けられる。


「…あ…うん。」


ご飯もあまりのどが通らない。

なんだか申し訳なさすぎる。

このままでいいのだろうか?

最近はベットを一緒にしても以前と回数は減ったとはいえ、終わればすぐに寝る。抜けたらそれで用済みみたいな扱いだ。

こんなんじゃ嫌だ!


瑞穂の脳内と精神は高ぶり思わずドン!と思いっきり机を叩く。


「仕事で疲れているのは分かってるし、そんな時にこんなうっとおしい事を言うのは空気が読めない妻だ った言われても仕方ない!だけど、私は家政婦じゃない!一人の人間だよ!ましてや性欲処理でもない !!」


瑞穂の気持ちに比例してか、外からは雨というよりゴゴゴという地響きのような音がする。

一気にまくし立てた瑞穂はまだ収まらないのか、呆然とみるダンナさんに口を開こうとしたその瞬間。



バキバキィ―――――――――――――!!!!!

ドゴォォォォォォォォオォォオオオオォ!!!!!


聞いた事もないような轟き音が左から聞こえ、二人はまるでスローモーションのような感覚で音のするほうを見た。

私たちを襲いかかってきたのは今まで家だったもの。

扉が、壁が、全てがあらぬ方向に向かって開いたかと思うとそこから土砂、木、ベットあらゆるモノがこちらに押し寄せてくるのだ。それが現実とは思えない異様な光景。

俊敏に動けば逃げられそうだなとかどこかぼんやり冷静に考える自分がいるが体は家のフローリング

に縫い付けられたように動かない。


視界の端で今まで見たことないくらい焦っているダンナさんの顔が映る。

あぁ。こんな表情も出来るのかと感じていると腕がちぎれそうなくらいひっぱられ、



私の意識と視界は真っ白になった。

















最後までお付き合いありがとうございます。

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