2話 玉座の間
玉座の間へ向かう途中…
「あの…」
「ん?何だ?」
「…り、龍司君って呼んでも良いですか?」
「いいよ。」
「ほ、ホントですか!そ、それと、私の事は藍璃って呼んでもらえますか?」
「まぁ良いけど…」
「其処の2人…さっさと入りなさい!」
「す、すみません…」
「…」
玉座の間に入ると其処は中世のヨーロッパの玉座の間に良く似た構造をしていた。
左右にはこの国の貴族であろう人物達がズラッと並んでおり、その全ての視線が此方に集まっていた。その不躾な視線の中を2人は進んでいった。
正面に椅子が5脚並んでいた。中央には何故か影の薄い王がおり、その左隣には圧倒的なカリスマオーラを放つ王妃が座っており、右隣は空席になっていた、向かって左端には王子らしき人?(見た目は豚そのもののため…)が座っており、向かって右端には先程2人を連れてきた王女が座った。
まず、口を開いたのは王妃だった。
「今回は2人呼ばれたのね…まぁ良いわ。ヴォルブス、この2人にライブカードを」
「は…此処に血を一滴垂らせ。」
甲冑を着た男…ヴォルブスがカードと針を持ってきた。
藍璃は恐々と針を取ると指に少し刺し血を一滴垂らして、カードを受け取った。
すると、何も書かれていなかったカードに文字が浮かび始めた。
だが、龍司はジッと王の顔を見ていた。また、王も龍司の顔をジッと見ていた。
それに気づかずに、ヴォルブスは
「さっさと刺して血を垂らせ!」
と、怒鳴った。
龍司はチラッとカードに目を向けると…
「血は必要ない…」
と、カードを取り上げた。すると、何も書かれていなかったカードに文字が即座に浮かび始めた。
「それで?あなた達のどちらに勇者の称号が書いてあるの?」
「…あ、私です。」
おぉ…!
と、どよめきが起こった。
「貴女、名前は?」
「白神藍璃と言います。」
「では、アイリ。」
「はい。」
「このイプロスという世界は魔王が居ます。魔王は強く我々では倒す事が出来ません。ですので、貴女が魔王を倒して来て下さい。勿論、今のままでは戦えないでしょうから、1ヶ月この王国で訓練してから行きなさい。」
「そ、そんな!私には無理です!」
「いいから言う通りにしなさい!!……こほん…失礼。…もし、魔王を倒せたら元の世界へ帰してあげます。どうですか?」
「っ!…分かりました。ですが、彼はどうするんですか?」
「…まだ居ましたの。禁兵!さっさとその男を連れ出しなさい!」
「な!そ、そんな!」
「ふっ…」
龍司は笑みを浮かべると禁兵が来る前に、踵を返してこの場を出て行こうとした。
其処へ…
「まぁ、待ちなさい。」
王が初めて喋りかけたのだった…
途端にざわめきが大きくなる…何故なら、この王は公の場では殆ど喋ったことが無かったから当然であった。
「おぬし、名は何という?」
「…こういう場合、自分から名乗るものじゃないのか?」
その発言に、ざわめきがおこるが…
「ふふふ、その通りだな。…では、名乗らせてもらおう!我が名は、ガルフォート・レイ・アルバロスこのアルバロス王国の沈黙王である。」
「アルバロス王国の沈黙王…ってのは、オッサンの称号なのか?」
龍司のオッサン発言に周りが再びざわめくが、今度はガルフォート王が手を挙げて黙らせる。
「その通りだ。」
「ナルホド…ふぅ……我が名は神宮龍司。称号は、自由人と異世界の旅行者。」
その発言の直後、謁見の間は騒ぎにつつまれた。
「り、旅行者だと!」
「そんな称号があるのか!?」
「しかも自由人だと!此方をナメてるのか!」
一気にざわめく謁見の間を今度は
「静かにしなさい!」
王妃の一言が黙らせた。
「カミミヤ・リュウジと言ったかしら?」
「そうだが?」
「…貴方はこの世界に何をしに来たの?」
「言ったろ?旅行だ。」
「それは1人で?」
「まぁな。」
龍司の横に居る藍璃が驚いた顔をした後、悲しみの表情に変わっていた。
「では、目的という目的はないと?」
「ああ」
「そう…」
王妃は何かを考えているようだった…
「あぁ、旅の邪魔だけはするなよ?」
「ふむ、因みに何処へ向かう予定なのか聞かせてもらえるか?」
「ん~…先ずはこの連合国の南西方向にある帝国かな?次に魔王領、最後に共和国…って順番で行くつもりだが…場合によっては予定変更はするぞ?」
「この世界に来たばかりなはずなのに、何故この世界のことを知っているのかが疑問だが…」
「大枠だけだ。生活に必要なことはさっぱりだがな。」
「ふむ。旅といったが、今戦争をしている国もあるぞ?」
「そうだなぁ~、まぁ基本は関わらないよ。但し、俺が居る村や都市が攻撃されるなら…ね?」
「成る程。では、理由があればわが国と事を構える可能性があると云うことか?」
王の一言がざわめきを巻き起こす…
「その通りだな。」
龍司の一言で禁兵全員が一気に剣を抜き、魔術師と思われる人達は即座に魔法陣を展開し何時でも撃てるようにした。
さらに、貴族と思われる人の数人も臨戦態勢をとった。
戦闘に入るのか…?
感想お待ちしています。